外部の雨どいから、また内部の装飾に戻ります。
今回は一般の方はあまり意識していませんが、床および天井と壁との境界(コーナー部分)をきれいに納める『巾木(はばき)』と『廻縁(まわりぶち)』についてご紹介して行きます。
目次
巾木
床と壁が接する”壁の立上がり”に張るのが巾木です。機能的には掃除機などがぶつかったり擦れたりしても、汚れたり破損しないための「防護材」で、車のバンパーと同様な役割を担います。実際は、床フローリングなどが多少揃っていなくても、隠すことが出来る「見切り材」です。
木製巾木
名称が「巾木」とつくように、窓枠やドア枠と同様、木材を加工して壁のプラスターボード最下部に張るのが一般的でした。木目が見えるように保護膜をつくる場合と、塗装で塗りつぶして色づけするケースがありますが、防塵性や耐摩耗性や加工手間などもあり、次第に人工木材で固めた工場生産による「新建材」の巾木が増えてきました。
色分け
巾木はインテリアの要素としても空間を構成するため、太さや色なども部屋によって、床材や壁の色によって使い分けされます。概ね汚れが目立たないダーク系(こげ茶色など)か、清潔感のあるホワイト系(白)が選ばれるケースが多いようです。
床材の色が薄めの子供部屋などは白い巾木を使うことが多く、木目のナチュラルな床材の場合は、同様に木肌が感じられる木の色の巾木・廻縁が採用されます。ご夫婦の主寝室などで落ち着いたダークな色使いの床を採用した場合、やはり濃い色が使われますが、巾木は床材に近い色、廻縁は壁や天井に近い薄い色に分けるケースもあります。基本的に和室は巾木ではなく「畳寄せ」という見切り材です。
玄関の上がり框と巾木
日本の玄関は、一旦靴を脱いでホール・廊下に上がるため、段差の部分に『上がり框』とよばれる見切り材が入ります。玄関床はタイルや石、玉砂利等の左官仕上で上がり框の高低差も床と同じ材料が立ち上がるため、壁との見切り材として巾木が必要となります。玄関部分の巾木を見ていきましょう。
階段の巾木
玄関に引き続き、階段の壁側を防護する巾木もちょっと特殊です。
ささら巾木
一般の部屋と同様、床・踏み板と並行に”壁下の保護材”として張られるのは「ささら巾木」と呼ばれます。
画像の現場は、無垢の木材を加工した木製のささら巾木で、階段踏み板と同じ材料で階段材の一部のような納めです。同じような曲がり階段でも、巾木の形状の違いをご紹介しましょう。
ささら桁
ささら巾木の場合は、階段の踏み板を施工した後、装飾として張りますが、踏み板を取付ける”構造材として”階段勾配に合わせて壁付し、踏み板を取付ける『ささら桁』も巾木代わりとなります。
アルミ製床見切り
コンクリート打ちっ放しのような無機質でシンプルな空間を好まれる施主は、出来るだけ巾木などの見切り材を目立たないようにしたいというケースがあります。木造住宅の事例ですが、玄関に上がり框も設けず、床も樹脂系タイルを張ったケースをご紹介しましょう。
画像では見えにくいかも知れませんが、アルミの見切り材に壁下地のプラスターボードを挟み、仕上がったら見切り材が床から数ミリしか見えないディティールです。実際に完成した画像をみてみましょう。
輸入住宅・海外事例
インテリアや照明など、室内装飾を愉しむ海外の住宅は、見切りとなる巾木・建具枠(ケーシング材)もデコラティブです。刷毛塗で厚塗り塗装が基本です。
米国オレゴン州ポートランド郊外の建築中の住宅を視察した時の巾木や装飾柱の写真もご紹介します。
TIPS
米国西海岸では、毎年『ストリートオブ・ドリーム』と呼ばれる、最新トレンドの住宅のお披露目イベントが開催されます。地元の設計事務所とホームビルダーが、流行のデザインや最新技術を住宅購入を検討している一般市民向けに数棟のモデルホームを建てて見学してもらう”有料イベント”です。
その分、イベント経費もモデルハウス建設費も、その場所で回収され、広告宣伝費や販促費が過大にならず、また説明や販売は不動産エージェントが行うため、営業に掛かる経費も仲介手数料だけ(日本では3%+6万円)と明快なことです。画像は見学したモデルホームの階段周辺の巾木やケーシング(枠材)です。
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廻縁
巾木ほど存在感がなく、インテリアの要素としても目立たない廻縁は、最近取り付けないケースも増えてきました。天井と壁の仕上げに隙間が空かないようにするのが主な目的の装飾材です。
まずは、インテリアの重要な要素として使用している海外の事例写真で、廻縁の存在と役割をイメージしてもらいましょう。
画像は典型的なアメリカの住宅の夫婦主寝室です。個室ごとにバスルーム・洗面所(パウダールーム)があり、ドア枠や巾木、廻縁は立体的でインテリアの重要な要素となっていることが分かります。
隠し廻縁
一般的な木製の廻縁は、上の巾木で紹介した画像でも写っていて、わざわざご紹介するまでもないので、目立たなくしながらも、手間のかかる納め方をした事例をご紹介します。
樹脂製廻縁
事務所や店舗では、フクビといった専門メーカーが樹脂製の廻縁、内装材メーカーが塩化ビニールの巾木などを出していますが、床の見切り材と同様、天井側にも少ししか表面に見えない天井見切り材(廻縁同等品)があります。下地に取り付けた時点の画像と、完成画像を並べてご紹介します。
底目地仕上げ
廻縁なしの仕上げですが、天井と壁の仕上げ材が直接突合せになっていると、クロスが剥がれたり振動で隙間が空いたりするため、下地のプラスターボードの厚み程度の段差を設けて、目地を入れる仕上げです。こちらも下地の施工中の画像と仕上がった写真を並べてみます。
吹抜け
吹抜け空間では、壁が2層分の高さになりますが、中間でジョイント部分があり、構造材も多少動く可能性があるため、少し太めの見切り材を張る場合があります。特に2×4工法の場合の吹抜けは、通し柱等がない分、水平方向の見切り材を入れておいたほうが無難です。
▼次回は壁紙の下地と仕上げについて解説して行きます。