前回に引き続き、乾式工法の外壁工事の解説です。今回は『軽量気泡コンクリート』(通称:ALC)の工事を見ていきましょう。前回の窯業系サイディングよりも厚みのある外装材です。前回の講座は以下復習して下さい。
ALCは、オートクレーブ(高温高圧多湿養生)処理され、工場で生産管理された軽量気泡コンクリートパネルで、軽石のような素材です。主に中低層の鉄骨の建物外壁に使われ、代表的なハウスメーカーは旭化成の『ヘーベルハウス』です。
ALCパネル
乾式工法の外装材は、工場で生産されトラックで現場に運搬されてきます。ALCはコンクリートながら、気泡が入って軽石のような軽さで、1枚の厚みが木造用で37ミリと、窯業系サイディングに比べ2倍強の厚みのある材料です。ただし一般的な住宅で外壁は200m2程度あるので、運搬費は嵩みます。
材料寸法
工場生産の規格品で、標準品は幅606mm、長さが1,820mmと2,000mmの二種類、厚みは37mmが最もポピュラーです。基本的には「横張り」をしていきますので、パネル同士のジョイント部分の目地が、約60cmピッチで横方向に縞模様となります。
施工方法
透湿防水シートの上に胴縁を打ち付け、ALCパネルを専用ビスで留めていきます。比較的加工しやすい外装材なので、場合によっては角が欠けてしまうことがありますが、ビス穴の補修も含めて専用のタッチアップ材とコーキングで埋めた上で、塗装仕上げをするため、見た目も性能も問題ありません。(胴縁下地なしでALC直貼り施工もあり)
下地づくりは以下を参考にして下さい。
パネルの種類
ALCのパネルには、フラットな標準品のほか、縦横のラインが入ったもの、タイルやレンガ調に見えるような目地デザインのもの、コンクリート打ちっ放し風のパネルなど、いくつかバリエーションがあります。窯業系サイディングのように色や柄のバリエーションが豊富な”化粧仕上げ”されたものはなく、素地そのままの材料です。
パネルによって多少価格の差がありますが、材工共のm2単価は概ね5千~6千円。透湿防水シートや胴縁などの下地を含むと7千円/m2なので、一般的な二階建て住宅の外壁面積が200m2程度であれば、150万円前後が塗装仕上げ前の外壁の建築コストです。
コーキング(ジョイントパテ埋め)
ALCは厚みがあるため、パネル同士のジョイント部分は少し隙間を開けて、クッション性のあるバックアップ材を隙間に詰め、その上からシリコンでシール(コーキング)します。画像の白いラインがコーキングで、建物の角部分は専用のコーナー部材を取り付けます。ビス留めの穴もパテで埋めて塗装すると分からなくなります。
目地隠しフラット仕上げ
画像の事例は、道路に面した正面だけでも「目地を消したい」というご要望で、目地に寒冷紗パテしごきという、目地をフラットに埋める追加の手間を重ねた事例。隣家に面した側面は目地をそのまま残しているのが分かります。この現場では、超弾性吹付け材の『スタッコフレックス』で仕上げ、漆喰壁のような雰囲気になりました。
吹付け塗装準備
コーキングやビス跡のパテ埋めが終わったら、サッシなどが吹付け塗料で汚れないようにシート養生し、塗料を吹き付けます。ALCの場合は少し厚みがあり耐候性の高い『ジョリパット』(アイカ工業)や『ベルアート』(スズカファイン)を吹付けるケースが多く、目地を目立たなくするとともにコーキングの劣化も遅らせます。
トップコート(色づけ)
塗料の種類によりますが、下地塗りは白い保護膜をつくり、仕上げのトップコートで色を出す吹付け塗装であれば安価な仕上げが可能です。しかし色のついた表面仕上げの塗膜は薄く、紫外線により次第に色褪せてくるので、左官仕上のような表情もつくれる、基材自体に色がついている吹付け塗装がお勧めです。吹付けのm2単価は2,500~3,500円程度でしょう。最も安価な「リシン吹付け」であれば半額程度で可能です。
▼次回は、湿式の外壁仕上げをみていきましょう!