木造住宅の建築プロセスを学ぶこの講座も、いよいよ基礎工事に入ります。昔は、逆T字型の『布基礎(ぬのきそ)』が一般的でしたが、地元工務店が建てる最近の木造住宅はほぼ100%に近いくらい『ベタ基礎』と呼ばれる基礎になりました。今回は、そのベタ基礎の底盤、耐圧盤と呼ばれる部分を中心に配筋工事をみていきます。
前回は地盤の掘削と均し、砕石地業や防湿シートなど基礎工事の下地を学びました。復習は以下クリックして下さい。
基礎工事は大きく2つの工事工程に分けられます。細分化すれば5~7工程程度に分けられますが、前者が「耐圧盤の配筋とコンクリート打設」で、後者が「立上がり部分の型枠工事とコンクリート打設」という工程です。耐圧盤と立上げ部分のコンクリートを一体打ちするために、工程を分けずに行うケースもありますが、基本は二度に分けて工事を行います。
今回は前半工程の『耐圧盤の配筋工事』に関して解説していきます。
目次
基礎の配筋工事
コンクリート型枠配置
木製型枠では、型枠を外す時にベニアの一部がコンクリートに張り付いて残ったり、剥がしにくいため、型枠にたっぷり重油を塗る作業をしていました。また、コンクリートの仕上げ面が平滑にならず、型枠は使い捨てになっていたので、モジュールや基礎の高さも標準の場合は、組立も解体も楽にできる鋼製型枠が一般的です。
コンクリート打設時も、しっかりバイブレーターで振動させれば、ジャンカも出にくく、木製型枠よりもきれいな基礎が仕上がります。
フーチング配筋
鉄筋は主筋の太さ13mmの異形鉄筋を使い、立上がりの補強筋(縦筋)は10mm以上の異形鉄筋を使用して鉄筋を組んでいきます。
各コーナー部分は、鉄筋をL型に重ね合わせ「定着長さ」と呼ばれる重ね部分の長さを規定通り確保します。具体的には鉄筋の太さの40倍で40Dと呼ばれます。コーナー部分は土台の上に載る柱が二階まで繋がる『通し柱』が来るケースが多く、ホールダウン金物と呼ばれる”柱の引き抜き力に耐えるアンカーボルト”が埋め込まれるので、特に強度が必要です。
耐圧盤の配筋
地盤強度が強くても、やはり中央の間仕切り壁に柱を通して2階や屋根荷重が基礎に載るため、底盤全面に鉄筋を組む『耐圧盤』をつくると安心です。このような基礎をベタ基礎と呼びます。
いかに全体を鉄筋で組んでも、コンクリートの荷重もあるため、一定の間隔で区画をつくり、地中梁の鉄筋を組みます。ちょうど構造躯体の梁や桁と同じです。
特に大きな荷重が掛かる場所は、鉄筋のピッチを狭め、鉄筋の密度を高めます。長期優良住宅のような高耐久の住宅や、耐震等級を高めた高耐震の住宅も、鉄筋密度が高くなります。
重要POINT鉄筋を組んだ時、防湿シートを敷いた地面と鉄筋の隙間、立上げ部分の型枠と鉄筋の隙間を『かぶり厚さ』と呼びます。コンクリートを打った時に、地盤や外気に触れる面から鉄筋までの厚みが、コンクリートの寿命に影響を与えます。
上の画像は、役所の配筋検査が終わった後、私が現場に立ち寄り是正させた「かぶり厚さ不足」の工事です。地盤に面している場所では6cm以上、それ以外の外気に面した立上げ部分などは4cm以上のかぶり厚さ(空きスペース)が必要です。そのスペースを確保するための部材(ピンコロ石とかスペーサーとよぶ補助材)の使い方を間違えて、横使いしていたため地盤面で4cmしかありませんでした。
新幹線や高速道路高架のコンクリートがはがれて落下する事故は、このかぶり厚さが影響しています。アルカリ性のコンクリートが空気中の二酸化炭素に反応し、徐々に中性化して内部の鉄筋が錆びていきます。その錆によって鉄筋が爆裂しコンクリートがはがれると、コンクリート強度が一気に失われるため、このかぶり厚さが重要になるのです。
出来上がってしまったら見えなくなるところだからこそ、重要なチェックポイントです。
給排水の配管を通す『スリーブ』と呼ばれる穴を、強度に影響がない場所に取り付けて、配筋工事は終わりです。
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スラブへのコンクリート打設
コンクリートの品質
木造の住宅の基礎であれば、一般的には「呼び強度」が21N~24N/mm2です。21Nは、210kg/cm2と言い換えたほうが分かりやすいかも知れません。”呼び強度”は、コンクリート打設4週間後の強度で、柱をイメージすると10cm2で計算すると21トンの荷重で圧縮されても耐えられるという強度です。実際には、寒冷地や求める強度、施工時期によって27N/mm2とする場合もあります。
水セメント比は、セメントの比率が高いほど強度は高まりますが、現場での施工性やコンクリート打設後の乾燥収縮なども加味して50%台が一般的です。骨材は20mm~25mm程度で、柔らかさ(崩れ具合)を確かめるスランプ値は18cm程度で、この数値が大きいと柔らかいコンクリートです。
コンクリートの運搬と現場打ち
コンクリートミキサー車が生コン工場を出発し、90分以内には打ち終わるという作業工程を組み、人力だけでは時間が掛かるため、今ではポンプ車を使って短時間でコンクリートを流し込みます。
昔は「シューター」と呼ばれる、雨どいを大きくしたような半丸形の機材で、そうめん流しのようにコンクリートを流し込んでいました。しかし、ミキサー車の高さからの勾配があまり取れないため、固いコンクリートほど遠くに流し込むのに時間が掛かり、品質劣化の原因になっていたのです。
ジャンカ防止のバイブレーター実施
この時に使われる道具が「バイブレーター」と呼ばれて、電気で小さな振動を起こし、コンクリートに先端を突っ込んで撹拌します。昔の木製型枠で、施工が悪いとバイブレーターで型枠が動いてしまうこともありましたが、鋼製型枠になって安心してしっかりとバイブレーターが掛けられ、表面もきれいな基礎が出来るようになりました。
トンボと呼ばれるT字型の道具で、ざっくりと平らに均し、最終仕上げとして「木ごて」できれいに均して耐圧盤の完成です。
間仕切りの壁が出来る位置に、立上げ部分の鉄筋だけが出ている状態で、また型枠位置を墨出しし、次のステップで立上げ部分の型枠組を行っていきます。
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