仕事でも勉強でも「基礎が大切」と言われますが、元々建築用語から来ているのが「基礎」という言葉。今回の講座はその”基礎の下地づくり”をみていきましょう。役所や瑕疵検査の検査員も、このプロセスをチェックすることはありませんが、重要な建築ステップです。
今回の「地業工事」の中には、地盤が弱い場合に実施される『地盤改良工事』も含まれていますが、地耐力不足の場合のみ実施される工事なので、別の講座で詳しく解説しています。
法隆寺の五重塔など、1千年以上前から日本では巨大な木造建築物が建てられてきました。その頃から巨大地震も強風を伴う台風も日本各地を襲っていますが、木造建築物の消失の理由の多くは「落雷による火災」か「放火(戦さ)による火災」がほとんどです。
もちろん熊本地震での『熊本城』の崩壊は記憶に新しいところですが、高さのある”城郭の石垣崩落”が建物に大きなダメージを与えました。また建物の大きさと比較して屋根が重過ぎて重心も高かった『阿蘇神社』も倒壊しましたが、昔ながらのしっかり突き固められて築造された『基壇』の上に建てられた社寺仏閣は、100年以上経ても安定感や安心感がありますね。阿蘇神社倒壊の理由も含め、大震災を教訓にした助言は以下クリック下さい。
砕石地業工事
下の画像の通り、建物の外周に沿って基礎底盤の根切り(掘削)が行われ、そこに砕石や砂利を敷き詰めます。ランマーという振動させて締固めする機械を使ってコンクリート基礎底盤に掛かる重量を分散させる役割を担います。
転圧作業
建物外周部には、土台の上に柱が並び、二階や屋根の荷重も掛かります。そのため外周部は中央部分よりも深く”根伐り”をして、基礎底盤の幅や深さを確保します。目に見える木造部分で言えば、太くて梁成(はりせい)のある『梁・桁(=横架材)』を使うようなものです。
しっかりと砕石を転圧し、基礎立ち上げがある外周部を平らに仕上げて、次のステップは地盤面からの湿気の上昇を抑える『防湿シート(フィルム)』の敷設です。
大手ハウスメーカーで布基礎の場合は、この防湿シートを省き、防湿コンクリートという”無鉄筋”のモルタルを6cm程度均すケースが多いようです。昔でいう『土間コン』と呼ばれるものです。
防湿シート
砕石を平らに均した上に、サランラップのような透明な『防湿シート』を基礎底盤(耐圧盤)全体に敷き詰めます。ロール状のポリエチレン樹脂製シートなので、しっかりと重ね代を確保して、地面から湿気が漏れないように丁寧に施工します。
砕石の上にそのまま敷き詰めるため、石の角で破れやすいのが難点で、そのため砕石の間に砂利を詰めて転圧することで、出来るだけ突起が出ないようにします。もし破れていたら、補修テープで直します。
基礎フーチングと呼ばれる外周部は、コンクリートの型枠が水平に保てるように、ベースとして『捨コン』を打設します。
捨コン
地業の役割は、あくまで基礎工事の下地です。基礎立ち上がり部分の高さや水平が正確でなければ、土台から上の建物も傾きが生じます。基礎コンクリートの型枠を組む下地が砕石のままでは動く可能性があり、正確さが保てません。
そこで基礎の位置を正確に印す『墨出し』も含め、砕石の上に捨コンと呼ばれる骨材入りのコンクリートを打設します。この段階では”平らに均すことが目的”なので、鉄筋は入りません。
捨コンをコテで平らに均し、水平を確認したらいよいよ基礎工事に進みます。
基礎墨出し
捨コンが乾いたら、遣り方(丁張り)から基礎位置を追い戻して、基礎型枠の位置を墨で表示します。基礎の中心部と型枠を置く場所を墨出しし、まずは外側の型枠を配置していきます。下の画像は、捨コンに書いた墨に沿って型枠を配置し、鉄筋を組んでいるところです。
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