家づくりの過程を解説していくこの講座。前回は、土地を清め工事の安全を祈願する『地鎮祭』について解説していきました。今回は、いよいよ工事着工準備です。前回講座は以下で復習して下さい。
地鎮祭が終わり、実際の住宅建築のプロセスで最初に行うのは『遣り方(やりかた)』という作業です。前準備として、地鎮祭よりも前に『地縄張り(じなわはり)』という建物外周の位置にロープを張って、施主に実際の建物配置を確認してもらいます。
地縄張り
この地縄張りは、駐車スペースの広さや、お隣との敷地境界までの距離、塀の位置や窓・勝手口の位置などを確かめて、図面だけでは分からなかったスケール感やご近所の建物との関係を改めて確認します。前面道路と敷地の高低差、道路斜線や北側斜線などの法規制から、給排水の引き込み、水道メーターや桝の位置なども現地で最終確認して、いよいよ実際の工事が着工です。
通常地鎮祭よりも前に行われ、地鎮祭の日に詳細説明を受けて、併せて近隣あいさつにも回るというケースが多いようです。左上の画像は、地縄を張った状況で開催された地鎮祭当日の写真。玄関位置なども分かり、神主さんが塩やお米、お酒などを撒いて土地を清めます。
近隣あいさつ回り
ご近所に、建築工事の着工のあいさつをするタイミングは、地縄を張って建物の位置が近隣の人にも分かり、神主さんや建築関係者が集まっている地鎮祭が一番あいさつに回りやすい状況です。
地鎮祭の多くは土日の午前中に行われ、空き地に人が集まって、神主さんが祝詞をあげるなど人の声もして、ご近所の人たちも窓から様子を見やすい状況です。比較的自宅にいる人が多い曜日・時間帯で、インターフォンを鳴らしても失礼にあたらないシチュエーションなので、粗品などを用意して工事でご迷惑を掛けそうな近隣には、施主と建築会社が一緒に訪問することをお勧めします。
実際の建築工事中の騒音や工事車両の問題など、現場でのトラブル対応は、すべて施工者が対応し、原則”施主が直接対応”することはありません。しかし最初の挨拶は、施工者の紹介も含めてご近所へのあいさつは施主自身が”新しい住人になる”という顔見世も兼ねて伺うのが基本です。
出来れば事前に自治会長や町内会長、または班長など、地元の世話役を確認しておき、向こう3軒両隣くらいの範囲は直接顔合わせするか、訪問したことが分かるようにしておきましょう。特にご近所で「口うるさい方」がいらっしゃれば、数軒訪問すれば教えてくれるケースも多く、近隣あいさつは、新築後にスムーズに地域に溶け込む秘訣です。
水盛り・遣り方
地縄は建物の柱の中心を示して張られますが、基礎工事に入る段階では土を掘り起こすため、地縄は外され、そのままでは建物の位置が分からなくなります。そこで基礎よりも少し外側に外壁に沿って木杭を打ち込み、工事の邪魔にならないように建物の正確な位置出しをします。
上記の画像のように、建物基礎の位置より50~60cm離して、木の杭と薄い板で囲いをするような形となります。水平の板は『水貫(みずぬき)』といい、板の上部に釘を打って「水糸」と呼ばれる糸を張ります。その釘や糸が基礎の高さや水平の基準となるため”水”という名称がつくようです。
基礎工事は、土木を専門とする業者が担当するので、土木ではこの作業を『丁張り(ちょうはり)』とも呼び、水貫を「丁張り板」と呼ぶことが多いですが、高さや位置の基準になるため、動かしたりしないよう注意が必要です。
根切り
水盛り・遣り方が終わったら、基礎工事のための掘削を行います。
水貫(丁張り)板に張った水糸を基準にして、基礎の位置や深さを確認して、バックホーと呼ばれる小型のショベルで建物外周部の基礎立ち上がり部分と底盤(「フーチング」といいます)幅を深めに掘り起こします。