今回は内装の壁仕上げが左官工事の時の下地づくりです。
クロス貼りと塗装仕上げの下地は、以下前回までのページでご確認下さい。
ファイバーテープ(寒冷紗)
耐火性能を確保するために、現在の家づくりでは”一部の例外を除いて”、壁の下地には石膏ボード(タイガーボードなどのプラスターボード)が使われます。従って、下地づくりはクロスも塗装も、左官仕上も大差がありません。石膏ボード同士のジョイント部分の精度や平滑度と、ドア枠などのケーシングの養生など神経の配り具合が少し違うくらいでしょう。
壁下地のプラスターボードを張ったら、ジョイントの隙間や不陸などを埋めて均すため、まずは『寒冷紗(かんれいしゃ)』と呼ばれる繊維系のファイバーテープを縦・横に張っていきます。セロテープでコーティングされた細めの包帯のイメージで、プラスターボード同士がずれないように、ビス跡も含めて寒冷紗を張りました。
パテ埋め
石膏ボードのジョイント(継ぎ目)部分と、中間部の間柱に留めたビス留め跡を専用パテで埋めていきます。パテが乾いて白くなってきたら、サンドペーパーで平滑にしていきます。
養生(ようじょう/保護カバー)
クロス貼りの場合は、ドア枠などに糊がついても水を含ませたスポンジで拭き取ればきれいになるため、手間の掛かる養生をすることはありません。しかし塗装仕上げや左官工事は、色や汚れなどが付くため、すでに仕上がった部分(ドア枠や窓台など)は汚れ防止のために養生シートを張る作業が不可欠です。この作業も、クロス貼りよりも施工費が高くなる要因です。
材料支給と施主工事
左官工事は、壁面積当たりの工事費単価が高くなります。それは材料代だけでなく、養生代や熟練職人の手間賃が高くつくからで、その分”調湿効果”や”臭いの分解”など、機能の高さが魅力な材料が数多くあります。長く住むからこそ「室内の空気環境を良くしたい」というお客様で、予算が厳しい方は、施主自身が左官の練習をし、自らお休みを利用して塗ってみるという方も増えてきました。
閑話休題昔は室内で塗ることは少なかった『珪藻土』が人気です。海底に沈む植物性プランクトン(多孔性)を粉末にして、固形化するように「バインダー」と呼ばれる糊のような材料を混ぜて硬化させます。このバインダーが「天然のにがり」などであれば健康にいいのかも知れませんが、樹脂を混ぜたものもあり、期待したほどの効果が得られない商品も数多くあります。
珪藻土は、火鉢の「七輪」をつくる素材で、素地は肌色の粘土状の材料が固まっています。そのほかに「サンゴ」や「ホタテガイ」「火山灰」などを原料にした塗り壁が数多く販売されています。
無添加漆喰
クロス貼りは糊の成分、塗装は塗料の溶剤(水性・アクリル性・油性など)、左官はバインダー(粘度を出すつなぎ材)によって、においに敏感な人、アレルギーのある方などに健康被害を及ぼす可能性が発生します。今はフォースター(☆☆☆☆)のような表示で、揮発性物質の安全性を開示する指標がありますが、やはり間違って体内に入っても安全な材料が求められます。
画像の『無添加漆喰』は、植物学者が開発した”人工添加物が入っていない”天然素材で調合された漆喰です。『無添加住宅』という工法グループに加盟した工務店だけが使える左官材料ですが、実際に住まれた人には好評です。
湿式工法の左官仕上
外壁下地や断熱材の解説でも触れましたが、室内の壁の一部を『湿式工法』で施工した「遊びの事例」を最後にご紹介します。断熱に影響されない室内部分のみ、竹木舞を編んで土壁を左官職人に塗り重ねてもらった事例です。