家相と風水を考える|若本修治の住宅取得講座-21

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家づくりをスタートした時にはあまり意識することのない『家相』や『風水』。しかし親族に相談すると「家相だけはちゃんと見てもらったほうがいい」と、急に制約条件として浮上することが少なくありません。

実際には、家相はほぼ「間取り」にしか影響を及ぼしませんが、風水は「土地探し」にも大きな影響を及ぼします。なぜならば、風水は敷地の立地条件から、現在の住まいからどの方角に引っ越しするのかまで、地形や道路との関係、色なども細かな吉凶があるのです。今回の講座では、それまで順調に進んでいた家づくりに大きな影響を与えかねない「家相」と「風水」について学んでいきます。

家相のトラブル相談

Wakamoto
メルマガ発行サイト『まぐまぐ』殿堂入りしたメルマガを発行している私のところには、様々な問合せ・相談が舞い込みます。今回は、その中で家相のトラブルについての相談に関してご紹介します。大手住宅メーカーで家を建て、営業担当者から「家相は大丈夫です」と太鼓判を押された方からの相談です。

お引き渡し後の家相診断

基本的に、家相は契約前のプラン作成の段階で相談するものです。相談者は、すでにお引き渡しを受け入居した後に知人が「家相を見てあげよう」との申し出を受け入れました。診断結果は「良くない」ということから家を建てたハウスメーカーに問いただしたところ、対応が芳しくなかったため私に相談が届いたのです。

メールだけでは十分事情が分からないため、以下の確認メールを送りました。

おはようございます。家相に関する相談ということですが、状況がよく分かりませんので下記再確認させてください。

  1. 家相が良くないと言われた理由

    一般的には、「鬼門」や「裏鬼門」そして「欠け」や「張り」などが言われます。その他に仏壇の位置など、それこそたくさんの要素がありますが、人によって、宗派によって、あるいは建て主の生年月日によって変わってくると言われているので、それが「本当に根拠があるものか」を確認されていますか?

  2. 家相の相談をした相手の信頼性

    「あなたの家相を見てあげましょう」と来られた方は、本当に信頼おける方でしょうか?屋根工事や床下のシロアリ、耐震補強の業者さんたちは、親切ぶって「無料でみてあげます」と近づいてきて、「ここを見て下さい。このまま放置していると大変なことになります」と、危機を煽ります。

    決して「お宅はまったく安心ですから良かったですね!」と引き上げることはありません。足裏診断など、いかがわしい宗教団体などは、必ず「このままだとあなたは不幸になります」と、不安を煽ります。家相を見る人、風水師なども、商売でやっている限りは、親切心でお金にならない「何も心配はありません」という助言は行ないません。

    商売でやっていないシロウトのにわか風水師であれば、なおさら指摘はあてになりません。

  3. メーカーの対応

    家相に対して、メーカー側はどのような回答をされているのでしょうか?
    そもそも、完成引渡しが終わった建物で、いまさら「家相が悪いから」というのは、それを容認した個人の責任となります。設計段階で専門家に家相を見てもらい、具体的な要望を出したのにもかかわらず、無視した建物を建てたのであれば問題ですが、施主が設計の承認を出し、建物が完成して「引渡しを受けた」ということは、メーカー側は契約どおり履行したということになります。

私は、家相や風水の専門家ではありません。もし指摘された家相が気になるのであれば、それを解決する「風水的処理」もあるかと思います。

風水のメルマガを出している一級建築士で、仙波甚一さんという方がいらっしゃいますので、例えばそんな方にご相談されたらいかがでしょうか?ネットで検索されると出てくるはずです。不十分かも知れませんが、取り急ぎ回答まで。

Wakamoto
メールによる苗字だけの相談だったので、これ以上具体的な回答は出来ませんでしたが、後日電話が掛かってきたので、少し事情が分かりました。ハウスメーカーの対応が悪いため、何と5人の専門家に診てもらったそうです。人によって家の中心の取り方や見立ては違ったものの、「この家は家相が悪い」という意見だけは一致したそうです。

家相は統計学か?迷信か?

上記の相談者は、最終的に支店長も出てきて「確かに担当者は家相は大丈夫だといったようです」と認めたものの、そのプランでお客さんの承認を得て着工し、家相が悪いという法的根拠がないため、問題解決には至っていないということでした。

風水師や家相の鑑定家は、自らの仕事に権威付けするため「この理論は、数世紀以上にわたる数多くの事例を分析して分かった”統計学”だ」という説明をされます。政府の統計でさえ怪しい時代に、誰がどのような形で統計データを集め、なぜその結論に至ったのか、結論となる方角別の吉凶中心の説明には、私たち住宅の専門家でも十分理解できません。

これまで住んでいた家の家相など気にしたこともなかった人たちが、家づくりを始めて家相や風水の専門家から「家相が悪い」と言われた途端、気になり始めて不安になり、家づくりの制約条件になってしまいますが、本音はもう少し”納得感のある回答”が欲しいというのが多くの人の望みでしょう。

家相の基本

Wakamoto
では、まずは建物の間取りから考える家相について、基本をおさらいしていきます。あまり信じていない人も、気持ち悪くない程度に、家相に書かれていることを回避出来れば安心して暮らせます。

張りと欠け

建物1階の外壁ラインの平面形状で、出っ張り部分や引っ込み部分が対象です。

まずは建物の基本形として矩形(長方形)の外壁ラインを縦・横3分の1に分割して線引きします。例えば間口3間(尺モジュールで5.46m)×奥行き4間半(同8.19m)の家だとしたら、1階の床面積は畳27帖の広さとなりますが、一般的に玄関部分は張り出すか引っ込めるかの設計が多いので、張りだせば「張り(凸)」、引っ込めば「欠け(凹)」となります。

「張り」の吉凶

建物の一部が出っ張る『張り』の中で、建物の一辺の長さから1/3以下の出っ張りであれば「吉相」だと判断されます。

3間×4.5間の建物で、長い”4.5間の壁”に1~1.5間の押入れや収納が出っ張っているのであればOKという話です。短い”3間の壁”の場合は1間以下の出っ張りまでOKです。

逆にこの1/3という数字を超えてしまうと、残りの部分は「凹型」となってしまい、『欠け』部分があるという判断になってしまうのです。張りの位置は角に限らず、真ん中であっても1/3以下であれば吉相という判断になるのが一般的な家相です。

「欠け」の吉凶

建物の一部が引っ込む『欠け』は、張りと裏表の関係にあります。
「張り」が1/3を超えるということは、「欠け」が2/3以下になるということで、「凶相」となります。

外壁ラインの一辺長さの2/3以下であれば、凶相の「欠け」という判断で、それがもっと小さくて1/3以下でも同じく「欠け」で家相的には良くないという判断がなされます。

建築的な観点からみれば、恐らく構造バランスが矩形の長方形よりも悪くなるということだろうと予想されます。2階までの通し柱や梁・桁の連続による力の伝達が複雑になる懸念があるということです。四角いダンボールと凹凸型の段ボールの強度をイメージすれば、どちらが強く、単純な構造・最小限の部材で済むか、イメージが湧くのではないでしょうか?

鬼門と裏鬼門

方角によって配置する部屋が変わってくるのが『鬼門』と『裏鬼門』。鬼門は北東方面を指し、方角を干支でいえば『丑寅(うしとら)』の方向です。厳密にいえば方角を八等分した右斜め上(鬼門)と左斜め下(裏鬼門)ですが、時計の1時から2時の方角といえば分かりやすいでしょう。裏鬼門は鬼門を180度回転した南西の方角です。

鬼門を避ける部屋

北東にある「鬼門」は、玄関や水回り(キッチン・トイレ・浴室など)を避けます。また「欠け」も凶相となりますので、この方角は朝だけ日差しが入り、午後からは落ち着いた部屋になる客間や和室がいいでしょう。

考えてみれば、方角は太陽が当たる時間帯や季節感など部屋の居心地に大きな影響を与えます。また偏西風など、日本に平均的に吹く風の向きや湿気の乾きなどにも影響するから、換気設備や高性能なサッシが無かった時代では部屋の配置で調整するというのは当たり前の風習だったのでしょう。

家相は先人の知恵

物事を教えても伝わらない時、人はたとえ話で分からそうとします。例えば雷が鳴ったら「カミナリにへそを取られる」と子供に注意を促す母親のようなもの。秋田県の「なまはげ」なども同様でしょう。悪いことの理屈を教えるより、恐怖心で災いを避けたほうが簡単です。特に昔は「読み書き」が十分できない人たちが多かったから、強烈なイメージで家を建てる時のルールを伝承していったのではないでしょうか?

「欠け」と耐震性

建物の構造躯体で考えると、1・2階を貫通する「通し柱」の位置「耐力壁」の配置などが耐震性能に影響します。耐力壁の配置などによって、建物の『剛心』が変わってきて、建物重量の中心である『重心』とずれが生じると耐震性能が弱くなります。これを『偏心』と呼び、大きな横揺れがあれば、ねじれる力が加わります。コマの重心が回転軸から少しずれるだけでバランスが崩れ、揺れ幅が大きくなるイメージです。

風水では「部屋の中央に階段があるのは凶だ」と風水師から聞きました。説明によると「吹抜けや階段が建物の中央にあると『気』が不安定になるから」ということでしたが、断熱性能が劣り隙間風が入る昔の家では、吹抜けがあれば冬は寒くてたまりません。また床剛性が低くなるため、耐震性能が劣るのもうなずけます。
Wakamoto
「張り」のある間取りは、通勤電車で急ブレーキした時に、足を一歩踏み出した状態のようなものなので、耐震性能には影響をしないのでしょう。

「鬼門」と温度・湿度の変化

現代の家のように、機械換気や冷暖房システムのない昔は、部屋の寒暖や湿気の対策は、その地域に吹く風の方角や建物の向き、そして周辺の地形によって解消するしかありませんでした。

例えばトイレが「厠(かわや)」と呼ばれて、建物の外にあった時代は、当然「水洗トイレ」ではないため、臭いが室内に漂わない場所が望まれます。台所が「クド(かまど)」と呼ばれていた時代は「冷蔵庫」もないから、食物が腐ったりカビが生えにくく保存がきく場所を選ぶのは当然でした。

お風呂も、寒い場所にあると「脳卒中」などの危険性が高く、陽が当たらず湿気の多い場所はカビが生えやすく病気になりがちです。台風はほとんど「裏鬼門」の方向から襲来し、真夏の西日の日射は食物を腐らせたり、畳の日焼けなどマイナス面が多いから、窓を設けるよりも和室の床の間や押し入れなど、窓のない緩衝空間を入れることで、室内の快適性も増すのです。

風水の教え

Wakamoto
中国から来た風水は、文字通り「風」と「水」のコントロールです。大きくは都をおく場所の地形や水脈を探るところから、建物をどこに配置するのかまでをも決めていきました。実際に本場中国の風水には、鬼門・裏鬼門といった、常に変わることのない吉凶の方角はなく、占星術と同様、暦(十二支等)によって運気が変わるという考え方が主流だということです。

運勢や方角は、暦によって変化するというのは、長年定期的に『遷宮』を繰り返してきた「伊勢神宮」にも見て取れると、中国の風水師から聞きました。だから、建物は固定していても、別の対策で吉相にするための処理が可能となるというのが風水の考え方です。「西側に黄色いものを置く」と運勢が良くなるといった、一級建築士のドクターコパの本が有名になりましたが、流派によって様々な解決方法があるようです。

風水では、生まれた場所や先祖の墓のある場所、今住んでいる場所から新居への方角なども鑑定する場合があります。しかし、家相や風水を信じすぎて、使い勝手の悪い間取りになったり、精神的にネガティブになってしまうと本末転倒です。正月の初もうでで、おみくじが『大凶』となっても、あまり気にしないくらいが楽ではないでしょうか?

まとめ

世の中の現象がすべて科学的に解明できるわけではありません。たまには「ゲンを担ぐ」ということがあってもいいでしょう。理屈じゃないときには「プラス発想」で考えたいですね。

家相や占いも、いい点を伝え、特長を伸ばせばいいのですが、相手を不安にさせることのほうが多いような気がします。目の前に専門家がいない「おみくじ」など、不安にさせても、損得がないものは、いたずらに不安を煽りません

私は「いいことだけ」を記憶に残す「ポジティブ・シンキング」です。
家相が悪くても、別に解消策を見出しましょう!

だって、これまで住んでいた実家だって、借りていた賃貸住宅だって、家相を気にして生活していましたか・・・?

家相を気にせずとも、幸せな生活を営んできたはずです。
だから、今、家を建てる土俵に乗っているのでしょう!?

ワンポイントアドバイス

  1. 間取りが決まった頃に、家相の話がよく出てくる。

    ⇒ 気にしていなかった家相が突然制約条件に!?

  2. 家相が悪いといわれる家を、機械装置のない時代で考えてみよう!

    ⇒ 自然災害や高温多湿の気候風土が、家相の原点?

  3. 家相で不安になるより、いいことだけを信じよう!

    ⇒ 自然に逆らわない家をつくれば安心!

Wakamoto
では、また次回の講座をお楽しみに!
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≪住まいづくり専門コンシェルジェ≫ 福岡大学工学部建築学科に在学中、当時の人気建築家『宮脇檀建築研究所』のオープンデスクを体験。卒業後、店舗の企画・設計・施工の中堅企業に就職し、主に首都圏の大型商業施設、駅ビル等のテナント工事にてコンストラクション・マネジメントを体験。1991年に東京から広島に移住し、住宅リフォームのFC本部、住宅営業コンサルティング会社に勤務。全国で1千社以上の工務店・ハウスメーカー・設計事務所と交流し、住宅業界の表も裏も知り尽くす。2001年に独立し、500件以上の住宅取得相談に応じ、広島にて150棟以上の見積入札・新築検査等に携わる。2006年に著書「家づくりで泣く人笑う人」を出版。 マネジメントの国家資格『中小企業診断士』を持つ、異色の住生活エージェント。