【施主が学ぶやさしい住宅建築講座-3】工事の安全を祈願する地鎮祭

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前回の講座は、敷地が軟弱地盤だった時の地盤補強について学んでいただきました。
以下をクリックすると、前回講座の復習が出来ます。

【施主が学ぶやさしい住宅建築講座-2】地盤補強工事の種類と費用の目安

2018.04.05

今回は、実際の建築工事に着工する前に、工事の安全祈願をする『地鎮祭』についてご紹介していきましょう。

地鎮祭の準備

Wakamoto
地鎮祭は、工事着工前にその土地の鎮守の神様を祭り、工事の安全を祈願するために行う儀式。併せてこれから住むご家族の繁栄も祈願します。地域の神社や施主の実家が「氏子」になっている氏神様にお願いし、神主によってお祓い清めていただきます。

地鎮祭の日取りは、一般的に「大安」や「先勝」「友引」などの吉日を暦の中から選びます。通常、午前中に執り行われますが、お日柄によっては正午にスタートするなど、暦や神社のしきたり、地域によっても異なります。

神社の大祭がある春や秋の週末は、結婚式なども重なるため、早めに予約しておいたほうがいいでしょう。

地鎮祭の参加者

  • 建築主とその家族
  • 設計監理者(設計事務所)
  • 施工業者(工務店関係者および棟梁)
    ※棟梁については、工務店規模により参加しないことのほうが多い
  • 神社関係者(神主さん・巫女さんなど)
    施主の服装に関しては、特に決まりはなく、神社にお詣りに行った時に失礼だと思わない程度の服装で構いません。礼服や正装は不要です。

準備するもの

最近の地鎮祭では、神社側が祭壇やお供え物などをすべて準備し、テントや四方に立てる「笹竹」、しめ縄に編み込む「御幣(ごへい)」、地鎮の儀で使う「川砂」などは、施工者側が用意してセッティングします。施主が用意するのは、神社への「玉串(たまぐし)料」と「お神酒(「奉献酒」の熨斗を貼った一升瓶)」の用意です。

上記は、神社側が揃えたお供え物の一例です。施主が用意したのは右側の一升瓶(奉献酒)で、左側のお酒は私(当社)が「お祝い」として持参した箱入りの一升瓶。この神社は漁港に近く、いつも獲れたての新鮮な「真鯛」を用意してくれます。式典後には施主ご家族にプレゼントされます。

玉串料は、神主さんの「祈祷料」とこの「お供え物」の費用で、相場的には3万円から高くても5万円。お供え物は、地鎮祭の祭壇に降りてこられた神様にお酒や食事を振る舞ういう形となり、他の方の地鎮祭に使い回しは出来ません。従ってこの土地にそのまま残していくというのが一般的です。(地域や神社のしきたりによっては異なるケースもあります)

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地鎮祭の流れ

これまで経験してきた地鎮祭で、出雲大社の分祀など、神社によって祭事の流れや「礼(拝)」「拍手」の数の違いなどを経験しました。広島県内の事例ですが、一般的な祭壇のセッティングと流れをご紹介していきます。

祭壇の例

神社側より、組み立て式の祭壇のセットが持ち込まれ、南向きか東向きに祭壇を配置します。

儀式の流れ

設営が整ったら、施主とご家族が右側に並び、設計者や工事関係者が左側に並んで式がスタートします。施主が席を立って所作を求められるのは『鍬入れの儀(くわいれのぎ)』と『玉串奉奠(たまぐしほうてん)』ですが、開始前に神主さんが説明を行います。

  1. 手水(てみず/ちょうず)

    神事の会場(テント内など)に入る前に、手を洗い心身を清めます。

    神社への参拝と同様で、実際には省略されることが多いのですが、行うとやはり気持ちにスイッチが入ります。

    実際に用意してやってみると、子供たちも喜ぶ行事です。

  2. 修祓(しゅばつ)

    いつも神社にいらっしゃる神様に、臨時でこの敷地に降りていただく際、祭壇回りやお供え物、参会者の人たちの穢れ(けがれ)をお祓いします。

    神主さんが神籬(ひもろぎ)を手に取り、まずは祭壇側や祭具をお祓いし、振り返って参列者側に向いてお祓いを行います。神籬とは、榊などの枝に半紙でつくった御幣(ごへい/紙垂)で、左右に振ると「サ~ッ・サ~ッ」と祓う音が聞こえます。軽く頭を下げ目を閉じてお祓いしてもらいます。

  3. 降神の儀(こうしんのぎ),献饌の儀(けんせんのぎ),祝詞奏上(のりとそうじょう)

    祭壇に置かれ、表からは見えないようにくるまれた鏡に、一時的に神様に降りて宿ってもらう儀式『降神の儀』が始まります。神主さんが小さな声で祝詞をあげ、一瞬の沈黙の後「うぉ~~~~お」と息の続く限り大きく長~い声を発すると、天から神様が降臨するので、この声の間は深くお辞儀をして待ちます。

    その後、神様にお酒や食事をして頂くという所作として、お酒が入った徳利のような「瓶子(へいし)」の蓋を開ける動作を『献饌』といい、神様の存在を確かめて、祝詞奏上に進みます。

    この時に、土地の地番(住居表示ではなく神様が分かるのは土地自体の番号)と施主家族の名前、そして設計者や施工者の社名や代表者名などを神様に伝えて、守って頂きます。

  4. 敷地(四方)清め祓いの儀

    神主さんと付き人が、テントから外に出て、敷地の四隅に向かいます。お神酒・お米・お塩・半紙を小さく四角に切った白い紙を用意して、四方から邪悪な存在が敷地内に入って来ないようにお祓いをし、お神酒やお米なども順番に撒きます。

    白い紙は、風に乗ってパラパラと巻き上げるように撒かれるので、まるで花吹雪かパレードのような雰囲気です。

    四方を祓い終ったら、元の位置に戻って本番である『地鎮の儀』がスタートです。清め祓いの儀の時、施主家族はそのまま動かずに席に留まります。

  5. 苅初めの儀(かりぞめのぎ)

    地鎮の儀のスタートは、土地に生えた草や木を刈って、家を建てる準備をする所作から。設計者が木製の鎌を持って、川砂が盛られた山(盛砂)に挿された笹や榊(サカキ)を刈り取る動作を行います。

    大きな声で「エイッ」「エイッ」「エイッ」と三回腹の底から声を出して、最初は右斜めから、続いて左斜め、右斜めと鎌入れをする動作の後、挿していた榊の枝を抜きます。

    画像は私が苅初の儀を担当した時の写真です。建築工事が「設計施工」の場合は省略されるケースもあります。

  6. 鍬入れの儀(くわいれのぎ)

    設計者に続いて、今度は施主(建築主)が『斎鍬(いみぐわ)』を神主さんから手渡され、盛砂に鍬入れをします。

    この時も、苅初めの儀と同様に、「エイッ」「エイッ」「エイッ」と大きな声を出しながら、右・左・右と交互に鍬を打ち込み、山を削る動作をします。

    土地を開墾して、家が建てられるように地ならしをするイメージです。

  7. 穿ち初めの儀(うがちぞめのぎ)

    最後の仕上げに、施工者の代表が『斎鋤(いみすき)』を持ち、施主が鍬入れをした盛砂を切り崩します。

    イメージとしてはスコップで土を掘り返すような動作で、工事着工を彷彿させる所作です。やはり前の儀と同じく「エイッ」「エイッ」「エイッ」と大きな声を出し、右・左・右と鋤を川砂の山に差し込んで、掘り起こします。

    すっかり山が崩れたら、神主さんが祭壇から『鎮めもの』を用意します。

  8. 鎮物埋納の儀(しずめものまいのうのぎ)

    神社から用意された鎮め物は、実際の工事の時に基礎の下に埋められて、地盤から家族を守る役目を果たします。

    地鎮の儀では、一旦神主さんが盛砂に鎮めて(沈めて)、上から鍬で砂を掛けて埋めます。地鎮祭が終わり片付ける時に、この「鎮め物」と「棟札」を施主を通じて施工者に預けます。

    棟札は、上棟時に小屋裏の棟木につけるもので、天井裏から家族を守ります。地鎮祭で敷地のお祓いをして工事の安全を祈願し、この鎮め物と棟札で、建物の上下から入居後の安全を守るというセットが揃います。

  9. 玉串奉奠(たまぐしほうてん)

    神前に榊の小枝でつくられた玉串を納めます。
    まずは神主さんからお手本を見せるように奉奠(ほうてん)するので、同じように行います。神主さんの次が建築主である施主家族、そして設計者、施工者と続きます。

    神主さんから玉串を両手を添えて預かったら、祭壇の前で一礼し、目の前に葉っぱを上にして玉串を持ち、お辞儀をしながら玉串を時計回りに回して、茎のほうを神様のほうに向けて祭壇に置きます。

    その後「二礼・二拍手・一礼」(二度深くお辞儀をして、二回柏手を打ち、最後に一度お辞儀をして終える)で席に戻ります。

    出雲大社などは「四礼・四拍手・一礼」など、神社によっては異なる場合があるため、事前に神主さんに確認しましょう。
  10. 撤饌(てっせん),昇神の儀(しょうしんのぎ)

    地鎮行事が終わり、神様にお帰り頂く儀式です。

    最初に行った『献饌の儀』や『降神の儀』の逆回しで、神前のお供え物を下げる所作が『撤饌(てっせん)』です。実際にはお酒の入った「瓶子」に蓋を戻すことで片付けとします。

    その後、神様は本来の居場所に戻っていきます。降神の儀と同様に、一同起立して神主さんが「ウォ~~~~オ~~」と長く声を出し始めたら深くお辞儀をして神様をお送りします。

    神籬(ひもろぎ)などを納めて、神事は終わりです。

  11. 直会の儀(なおらいのぎ)

    式典が終わったら、一旦椅子などを片付けて参列者一同輪になって広がり、神饌(お供え物)のお下がりを頂く会を『直会(なおらい)』といいます。食事をする訳ではなく、小さな盃を配り、神主さんがお神酒を注いで『神酒拝戴(しんしゅはいたい)』を行います。

    神主さんがお祝いの言葉を述べて、乾杯の音頭を取り、一同乾杯をして地鎮祭の終了です。

    車で参加する人も多いため、お酒は盃を口に付けるだけにし、飲まずに敷地内に浸み込ませても失礼ではありません。四方祓いでもお米や塩、お酒などを敷地に撒いていますし、土地の神様も喜んで頂けるでしょう。

すべての祭事が終了するのは、およそ40分から長くても1時間です。炎天下や極寒の季節は少し辛いですが、最近は工務店側がテントや紅白幕などを用意し、雨や風が強くても開催に影響がないように整えてくれます。(地域性や住宅会社によって異なります)

閑話休題一戸建て住宅では9割以上の方が、地元の神社に依頼し『地鎮祭』を行いますが、宗教上「仏式」を採用するご家庭もあります。その場合は『起工式』としてお寺から僧侶が来られて、地鎮祭と似たような流れで祭事を行います。

Wakamoto
最近、宗教的な行事は減る傾向にありますが、自分たちが住む土地を清め、工事の安全を願う地鎮祭を敢えて行わないという方は、まだまだ一握りです。家相や風水を気にする必要はそれほどありませんが、生涯に何度も経験出来ない『神事』は、この機会に経験されることをお勧めします。

次のステップは、地縄張りと遣り方です。

NEXT:建物配置を確認する「地縄張り」と「水盛り・遣り方」

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ABOUTこの記事をかいた人

≪住まいづくり専門コンシェルジェ≫ 福岡大学工学部建築学科に在学中、当時の人気建築家『宮脇檀建築研究所』のオープンデスクを体験。卒業後、店舗の企画・設計・施工の中堅企業に就職し、主に首都圏の大型商業施設、駅ビル等のテナント工事にてコンストラクション・マネジメントを体験。1991年に東京から広島に移住し、住宅リフォームのFC本部、住宅営業コンサルティング会社に勤務。全国で1千社以上の工務店・ハウスメーカー・設計事務所と交流し、住宅業界の表も裏も知り尽くす。2001年に独立し、500件以上の住宅取得相談に応じ、広島にて150棟以上の見積入札・新築検査等に携わる。2006年に著書「家づくりで泣く人笑う人」を出版。 マネジメントの国家資格『中小企業診断士』を持つ、異色の住生活エージェント。