【施主が学ぶやさしい住宅建築講座-14】屋根の種類

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前回の講座では、屋根下地の防水遮熱、結露防止などについて学んでいただきました。以下前回の講座を振り返ることが出来ます。

【施主が学ぶやさしい住宅建築講座-13】屋根の防水と遮熱

2018.05.28
Wakamoto
屋根に求められるのは「防水性」ですね。雨や雪が漏れなければ最低限の要求は満たしますが、傘のように破れたり劣化すると防水性が失われるから、耐久性も求められます。

今回の講座では、屋根の耐久性勾配など、屋根材を中心に事例紹介をして行きます。
多くの方が、当初はほとんど屋根には関心がなく、間取りや外観のイメージにこだわります。よほど屋根材や屋根の色などが外観に影響を与える場合を除き、住宅会社の提案のまま受け入れられているケースが多いのが屋根ではないでしょうか?

屋根の種類

実際の屋根選びでは、(1)重量、(2)価格、(3)耐久性の3つを比較しながら、種類を選び、そして最終的に価格や性能に影響を及ぼさない「色」と「仕上げ(施釉か素焼きかなど)」を決定していきます。製造業にお勤めで、凝り性な方はレーダーチャートを作成し、総合点で判断されてもいいでしょう。以下それぞれ屋根の種類で特長をまとめます。

和瓦

和瓦が載った家をイメージさせる「甍(いらか)の波」は、昭和四十年代くらいまでは全国各地に普通にみられる風景でした。防水性や耐久性が高く、一度葺いてしまえば台風などで破損したりしない限り、施主一代で補修や葺き替えをすることがないほど、長い実績がある屋根材です。

重量

瓦屋根は重量が重く40~50kg/m程度の荷重があります。屋根が90m(約27坪)程度だとすると4トン程度の荷重が載っている計算です。昔の家のように太い柱・梁を使い、規則正しい柱の配置で屋根荷重をしっかり支えられるような民家では、地震以上に災害頻度が高い台風に耐えられるよう、屋根には重しになるように和瓦が選ばれました。壁も屋根も下地に”練った土”を使うことで、地震時には重い瓦や土壁が容易に落ちたりひび割れて、構造躯体への損傷を軽減させていたのです。

しかし、戦後の住宅不足や木材不足などで木造は細い構造材が使われ、鉄骨系のプレハブ住宅の台頭もあり、重量の重い和瓦は徐々に使われなくなりました。建物自体も床面積が小さくなり、古臭いイメージも重なって、数寄屋風建築など、限られた和風高級住宅田舎づくりの民家でしか選ばれることはなくなったのが、波打つデザインの和瓦です。

瓦の産地

主な産地によって『三州瓦』(愛知県三河地方)と『石州瓦』(島根県石見地方)そして『淡路瓦』(兵庫県淡路島)の大きく3つの商品に分かれていますが、社寺仏閣の鬼瓦など、特殊な瓦は『菊間瓦』(愛媛県菊間町)などいくつかの産地が残っています。

最も普及しているのは、三河の「三州瓦」ですが、山陰や北陸など、凍害のある地域では焼成温度が高く、凍害に強い「石州瓦」が使われているようです。中国地方の山間部には、オレンジ色の石州瓦の街並みが、地域の風景を作っています。(画像は太陽熱利用のOMソーラーハウス。島根県内の中山間地域で、地域に溶け込むよう石州の赤瓦が使われていました)

価格

ひと口に和瓦といっても、産地だけでなく形状や釉薬の有無など様々な種類があります。価格は、耐久性や材料の厚み、保管や運搬費用などでその他の屋根材に比べて割高となりますが、色褪せや劣化がほとんどなく施主一世代で葺き替えるようなことはまずありません。

最近は「平瓦」も増えており、洋風住宅でも採用事例が増加しています。
目安として8,000円~13,000円/m程度です。戸建て1軒で90m程度と想定すると、新築時の屋根仕上げで100万円弱という計算となります。屋根勾配はおおむね4寸(4/10)以上の傾斜が必要で、6寸以上の急こう配になると、作業用足場を架けるなどの割り増し料金が必要です。

陶器瓦施工 波型のセラマウント防災瓦

左の画像は、平瓦(陶器製)でソーラーパネルの取付けをしているところ。右の屋根は洋風デザインを取り入れたセラマウント防災瓦です。

耐久性

和瓦は粘土を1,000℃以上の熱で焼いた陶器製の屋根材で、ガラス質のうわぐすり(釉薬)を塗って焼きあげた光沢のある「施釉(せゆう)瓦」と、釉薬を塗らず出来るだけ空気を遮断していぶして焼いた「いぶし瓦」があります。少し艶消しで風合いのある”いぶし銀”の和瓦は、釉薬を塗っていない「いぶし瓦」です。

耐久性は、ガラスコーティングしたような施釉瓦のほうが耐候性もあり、50~60年経っても劣化の度合いはわずかです。

Wakamoto
前回講座の「防水シート(ルーフィング材)」が、屋根仕上げが仮に雨漏りした場合の二次防水層になり、将来も防水層が劣化していなければ、自分の代では一生ものと考えて良さそうです。

洋瓦

輸入住宅の増加や、プロバンス風の分譲住宅が人気になったこともあり、スペイン風のS瓦やオレンジ色の素焼き瓦など洋風瓦も増えてきました。

洋瓦も、多くは国内の瓦メーカーが製造しているので、デザインやカラーを除いて基本的な重量や耐久性などの性質は和瓦と同等です。下の画像のような、素焼き瓦にいくつかの色をまだら模様に吹付けたS瓦の屋根はかわいらしく人気です。

瓦桟に引っ掛けて1枚1枚瓦を葺いていきます。瓦とルーフィングの間に隙間があるので、軒先から入った空気が最高部の棟から排出されるように「棟換気」を取り付けます。

スレート瓦(コロニアル・カラーベスト)

天然のスレートを葺いた屋根もありますが、概ね人工でつくられた化粧スレートで、メーカーによってコロニアルとかカラーベストとも呼ばれます。昭和四十年代以降に建てられた住宅では最も普及率が高く、建売住宅のほとんどがこのスレート瓦です。

重量

陶器瓦と比べて薄くて軽いのがスレート瓦の特長。20~25kg/m程度の重さなので、陶器瓦の約半分の荷重です。屋根全体に自家用車1台分が載っているくらいの荷重です。耐火性能が求められる屋根材なので、昔は石綿スレートといってアスベストが含有されていました。基盤となる人工繊維にセメントをしみこませて固め、無機系の塗膜で色づけした薄い屋根材です。

軽量鉄骨系のプレハブメーカーも、重い屋根材であれば建物の揺れが増幅されやすく、重量が軽く価格が比較的安価なこのスレート瓦が数多く採用されています。また住宅地では「北側斜線」や「道路斜線」など、屋根形状に制限を受けやすく、カタログで外観のパターンを用意することが多い大手プレハブメーカーでは、どの方角も屋根勾配がある『寄棟(よせむね)屋根』が多いことも、スレート瓦の採用率の高さになっているようです。

価格

スレート瓦の欠点として、材料に人工的に色づけしているため、塗膜が紫外線で劣化しやすく、10年も経てば色褪せしてみすぼらしくなっていました。またきれいに塗装し直しても、スレート同士の隙間を”縁切り”しておかなければ、スレートの裏に雨が溜まって雨漏りの原因になることがあります。新築時の安さが将来の維持・補修時には負担増になってしまうということも考慮が必要です。

目安として3,500円~6,000円/m程度で、端っこ(登り淀)は板金で加工されます。材料自体が瓦3枚分程度の幅の長尺材なので施工性も高く、瓦屋根のおおよそ半額程度の負担で材工が可能です。また屋根の軽さは耐震性に直結します。

耐久性

玄昌岩などの粘土岩で出来た天然スレートの場合は、天然石そのものなので高い耐久性がありますが、高価です。化粧スレートは、まず塗膜が劣化して色褪せをし、その後材料自体も過酷な屋根の環境や紫外線で劣化して、強度も低下、割れやすくなります。

主に塗膜の耐候性を高めた商品がいくつか発売されており、ケイミュー(旧クボタ松下電工外装)の『グラッサ』シリーズなど、採用例が増えています。赤外線を反射する顔料を含ませて、屋根の温度上昇を抑える『遮熱グラッサ』など、機能性屋根材もいくつか発売されています。

Wakamoto
日本では最も普及して安価なスレート瓦ですが、やはり高級感はなく、メンテナンスも必要です。

金属屋根(ガルバリウム鋼板)

スレート瓦よりもさらに軽量で、屋根勾配が小さくても葺くことが出来る金属屋根は、建築家や設計事務所が好んで使う屋根材です。木造住宅には見えない「四角い箱状の家」や、シャープなイメージの「片流れ屋根」など、屋根を薄く軽く見せたり、屋根自体を隠す場合には、このガルバリウム鋼板が選択肢になります。

また都心部で三階建て住宅を建てる場合には、高さ制限(最高高さ10m未満)によって瓦葺きで必要な4寸以上の屋根勾配が取れないことが多く、屋根荷重も軽くしたいから、ガルバリウム鋼板がよく採用されます。ほとんど前面道路から屋根が見えることはなく、三階建てを建てる立地では、遠景から自宅が見えることも少ないので、安くて軽く、雨漏りリスクの少ない金属屋根が選ばれます。

重量

ロール状にもできる薄い鉄板に「瓦棒」や「縦ハゼ(立平)」でジョイント部を繋いでいきます。重量は約5kg/m程度なので、瓦の約10分の1、スレート瓦でも5分の1くらいの軽量屋根です。

価格

細長い1枚の薄い鉄板を連続で敷き詰めて、ジョイントに雨水が浸入しないようカバーしていくため、スレート瓦よりも施工手間が掛かり、若干施工費が割高となります。屋根勾配に対しては、1枚の鉄板なので台風のような吹き上げる風雨があっても、雨水が浸入するリスクはなく、緩い勾配屋根でも葺くことが可能です。

目安となる価格は5,000円~8,000円/mで、雨の音や真夏の鉄板の暑さ対策として、遮熱や防音に配慮した施工をしたほうがいいでしょう。

耐久性

昔の「トタン板」や「波板」は、錆びたり色褪せがひどく、安普請のイメージがありましたが、ガルバリウム鋼板は耐候性が高く、塩害にも強いため、強風の海岸沿いの住宅でも採用されます。

緩い勾配のガルバリウム鋼板葺き きつい勾配のガルバリウム鋼板葺き

左の画像は、1寸5分の緩い勾配の平屋住宅。右の画像は10寸勾配の急傾斜で、施工時には足場が必要となった別荘建築ですが、どのような勾配でも施工性が良く、雪の多い別荘地などでは雨どいを付けずに、雪が積もりにくい急こう配にするとより耐用年数が伸ばせます。

Wakamoto
北海道のように屋根の断熱性能が高ければ、無落雪屋根もありますが、白川郷の合掌造りのように、急こう配の屋根が雪の荷重を減らして躯体への負担も和らげることが可能です。

シングル屋根(アスファルトシングル・ファイバーシングル)

アメリカでは過半数を超える住宅で採用されている屋根材。それがこのシングル屋根です。住宅が密集している日本では、耐火性能が日本の基準をクリアできず、普及が遅れていましたが、耐火性能をクリアし、他の屋根材の欠点もほとんどクリアしているため、輸入住宅を中心に日本でも増加しています。

重量

ガラス繊維の基材にアスファルトを含侵させ、天然石の砂を圧着した屋根材なので、セメントで出来たスレートよりもさらに軽く、アスファルト自体がルーフィングと同じく防水性能が高いため、屋根材に求められる機能を十分果たしています。

重量は10~15kg/m程度で、スレート瓦の約半分の軽さ。素材がアスファルトなので夏の暑さで溶けて屋根下地に密着、台風のような強風でも容易に剥がれません。スレート瓦と違って、曲げられるほど柔らかい材料なので、台風の飛翔物でも割れることはほとんどなく、補修も容易です。

上の画像は、棟換気を取り付けているところ。屋根下地と一体化するため、野地板の下に通気層を設け、軒下から空気が循環するようにして、屋根下地の結露防止、木材腐朽の回避を行います。板金の棟換気材もありますが、この現場では屋根材と同じシングル材で棟を仕上げました。

価格

柔らかく軽い材料なので、施工現場での作業性も高く、運搬も容易なので比較的安いコストで施工できます。スレート瓦に比べて、色の種類は少ないものの、天然の砂の色なので、10年経ってもほとんど色褪せはなく、メンテナンスにも大きな費用は掛かりません。30年程度で現在の屋根材の上に重ね張りが出来るので、剥がす手間や廃棄コストも不要です。

新築時の施工費用の目安は、3,500円~5,000円/m程度で、スレート瓦とほぼ同等です。少し厚みのある高級品のほうが、陰影が出て屋根の表情も豊かになり、耐久性も高いので、少しグレードの高いものを選んでもいいでしょう。旭ファイバーグラスの『オークリッジ・PRO30』などがお勧めです。

耐久性

天然の砂を圧着しているため、劣化してくると砂がポロポロと落ちてくる懸念がありますが、人が屋根に上がって土足で歩いたりしない限り、摩耗することはありません。米国では30年保証や50年保証の材料もあり、3回までの重ね張りが出来ると謳われているので、30年毎に重ね張りしても90年間維持可能です。

重量が軽いことと、防水効果が高いこと、そして屋根の下地に密着して容易には剥がれないため、他の屋根材のように葺き替え時に古い材料を剥がす手間賃や廃棄コストも不要です。耐風性、耐候性も高い材料ですが、質感や色は好みが分かれるところでしょう。

左側の屋根形状は「寄棟」でグレー系のシングル葺き。右側の画像は「切妻屋根」で棟換気は板金加工された既製品を採用。ブラウン色のシングル葺きです。

閑話休題ガルバリウム鋼板とシングルを併せた『ハイブリッドの屋根材

欧米では、日本の「檜皮葺き」のような屋根仕上げもあり、板状の木材で屋根を葺いたものはディズニーランドのお屋敷でも見られます。杉板状に見えるような「ガルバリウム鋼板+シングル」の『コロナ』や、S瓦風の洋風デザインにした『デクラミラノ』など、従来の屋根材の欠点を補うユニークな屋根材もあります。

画像は屋根を葺く前に材料を検品した『コロナ』というハイブリッド屋根材。ニュージーランドからの輸入製品で、軽くて耐久性も高く、通期も取れて強風でもびくともしないユニークな屋根材です。

屋根材選びは、遠くからの”見た目”も大切ですが、実際は日頃通勤や遊びなどで、地元を車で走っていても、屋根のデザインや素材などを意識する人はほとんどいません。特に、純和風で和瓦が似合うような家ではない限り、どの屋根材を使っても生活に影響は与えません。

Wakamoto
重量と耐久性、そして価格のバランスを取りながら、将来のメンテナンスや台風や地震などの自然災害も考慮して、屋根選びをして下さい。

次回は、シロアリ対策などの防蟻処理についてご紹介する予定です。

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ABOUTこの記事をかいた人

≪住まいづくり専門コンシェルジェ≫ 福岡大学工学部建築学科に在学中、当時の人気建築家『宮脇檀建築研究所』のオープンデスクを体験。卒業後、店舗の企画・設計・施工の中堅企業に就職し、主に首都圏の大型商業施設、駅ビル等のテナント工事にてコンストラクション・マネジメントを体験。1991年に東京から広島に移住し、住宅リフォームのFC本部、住宅営業コンサルティング会社に勤務。全国で1千社以上の工務店・ハウスメーカー・設計事務所と交流し、住宅業界の表も裏も知り尽くす。2001年に独立し、500件以上の住宅取得相談に応じ、広島にて150棟以上の見積入札・新築検査等に携わる。2006年に著書「家づくりで泣く人笑う人」を出版。 マネジメントの国家資格『中小企業診断士』を持つ、異色の住生活エージェント。