【施主が学ぶやさしい住宅建築講座-15】シロアリ対策工事

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前回は屋根工事について「種類」を中心に学んでいただきました。
復習は以下のバナーで確認できます。

【施主が学ぶやさしい住宅建築講座-14】屋根の種類

2018.05.31

今回は地盤に近い場所で、耐久性にも影響のある『防蟻(ぼうぎ)処理』を説明していきます。簡単にいえば「シロアリ対策」で、北海道を除く本州以南で木造住宅を建てる場合には、構造材がシロアリに食べられないよう、対策が不可欠です。

Wakamoto
実は軽量鉄骨やコンクリート住宅でも、フローリングの床下地は木質系が多く、床下は結露しやすい(=湿気が多い)ので、シロアリ被害は皆無ではないと知っておいて下さい。

土台の防蟻処理

住宅のシロアリ対策の基本は、構造材(主に土台や大引きなど)にシロアリがやって来ないように防御することです。物理的にシロアリが浸入できないように、基礎をベタ基礎にして地中からの進入経路をなくすとか、土台水切りを設けることでシロアリの侵入を防ぐとともに、外壁を伝う雨水を外部に排出し、土台が濡れないようにすれば、基本的にシロアリが建物に寄りつくことはありません。

またシロアリの好む環境をつくらないことと、仮にシロアリが浸入しても食べられないような材料を選んだり、薬剤等の処理で被害が拡がらないように対策することです。

シロアリが好む環境は、1.外敵がおらず湿気がある 2.食料がある(木質・食物繊維) 3.水がある ので、湿気の多い住宅の基礎部分、特にキッチンや洗面所などの水回りの床下が、シロアリにとって快適空間になっています。

樹種を選ぶ

ヒノキを使った土台。

土台はシロアリだけでなく木材腐朽菌が発生すると耐久性が失われていきます。シロアリや腐朽菌には湿気が大敵で、「長期優良住宅」や「フラット35S」など『劣化等級2以上』をクリアするためには、D1特定樹種か、薬剤注入された土台を使わなければなりません。

耐久性が高いとされる「耐久性区分D1」の樹種は、湿気に強く油分や強いにおいのある木材で、木造住宅で主に使われるのは桧(ヒノキ)ヒバです。比重が重く(年輪が詰んでいる)堅くて、ヒノキチオールというシロアリなどが嫌う臭いがあります。

このような特定のD1樹種を使うと、薬剤等の防蟻処理をすることなく、住宅性能表示制度や住宅金融支援機構の融資基準をクリアすることが可能です。

薬剤を選ぶ

ホウ酸を塗布した土台

和歌山毒入りカレー事件では、シロアリ駆除材が使われました。ヒ素クロルピリホスといった毒物はシロアリ対策への効果が高く、長期に亘って効果が持続していましたが、人体への影響もあるため建築基準法の改正で使用が禁止されました。

現在は「合成ピレスロイド系」や「ネオニコチノイド系」といった人体に影響が少ないとされる薬剤が使用されていますが、効果の持続期間が短く、5年程度で保証が切れるため、将来の安心のための維持管理費負担が気になりますね。床下に入っての防蟻工事は、一般的な家で十数万円から20万円程度掛かり、10年に一度としても小さな額ではありません。

最近は、基礎断熱などで床下が室内と空気循環する高気密高断熱住宅が増えており、人体(特に妊婦や胎児)への影響を考慮して、目薬等にも使われている『ホウ酸』を塗布する事例も登場しています。ホウ酸自体は無色透明で揮発もしないので、上の画像のように人工的に色づけします。

加圧注入

土台に薬剤を塗布しても、農薬散布と同じで、霧吹きで表面に吹き付けるだけなので、木材に十分浸み込みません。またホウ酸以外の防蟻剤は、薬剤が揮発して効果が持続しないため、薬剤の浸み込ませ方にもさまざまな工夫が見られます。

画像は『インサイジング加工』と呼ばれるもので、ローラーに付けられたヤスリのような刃物で土台に小さなひっかき傷をつけて、その傷から薬剤を内部まで浸透させるというものです。

この現場は2×6工法で「基礎断熱」の施工でもあったので、インサイジング加工による土台表面の傷だけでなく、集成材(厚み3cm弱の5つの木材を接着)を使用し、集成(積層)加工する前の段階で薬剤をしみこませています。基礎と土台の間も建材メーカーのフクビ『アリダンTテープ』という”防蟻・防湿システム”を採用しました。もっと薄いベニアを積層させたLVLなど、乾燥度合いが高く堅い材料も使われます。

Wakamoto
木材は湿気が弱点です。シロアリに限らず「雨漏り」や「結露」「土壌からの湿気上昇」などを避けることが、シロアリの忌避効果に繋がります。

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軸組・耐力面材の防蟻処理

シロアリは地中から侵入しますが、一旦木材を食べだしたら土台だけでなく柱の根元などにも被害が及びます。日本で発生するヤマトシロアリイエシロアリは、2階の梁・桁などに被害が及ぶことはありませんので、土台から1mまでの範囲にある構造材(柱や筋交いなど)と構造用合板(外壁に張る面材)に防蟻剤を塗布します。

浴室周辺の構造材に塗布された防蟻処理。黄土色の濡れ色なのですぐに分かる。

アメリカカンザイシロアリの恐怖

輸入建材や海外の貨物船などからこっそりと忍び込んでくる『外来種』が社会問題になっていますが、住宅に関連する生物では「アルゼンチンアリ」や「キクイムシ」「アメリカカンザイシロアリ」などが国内で被害を及ぼしています。

特に「アメリカカンザイシロアリ」は、名称の由来である「カンザイ=乾材」という、乾燥した木材でも食害が発生し、大気が乾燥している米国カルフォルニアでの2×4住宅でも多くの被害が発生しています。日本のシロアリとは異なり2階のほうまで構造材を喰い荒らし、駆除のために日本円で数百万円も負担して家全体をシートでくるみ、数日間燻製処理しているという「NHKクローズアップ現代」の放映は、業界関係者に大きな衝撃を与えました。

既存住宅でアメリカカンザイシロアリの食害に遭うと、建物全体の燻製処理しか駆除方法がないようなので、新築時の構造躯体がむき出しの状態の時に予防策を取っておくことが賢明です。すでに日本でもかなり発見事例があり、新築時の予防は低コストで可能です。

1棟丸ごとホウ酸処理

土台の防蟻処理でも、人体に影響を及ぼさない「ホウ酸処理」をご紹介しました。ホウ酸は天然資源の「ホウ酸塩鉱物」が原料で、人間にとっては食塩と同程度の毒性なので、床下や壁の内部など、人が直接触れることのない部位でなくても安全な防蟻剤です。目薬の保存剤としても使用されているくらいですが、肝臓機能で毒素を排泄できない昆虫にとっては殺虫剤として効果的な材料です。

『エコボロンPRO』というホウ酸系木材保存剤を外壁下地にも吹付けます。こちらの現場は『nobopan』という構造用面材を外壁に張った事例です。

ホウ酸は「難燃剤」としても使われ、黒いTシャツで汗だくになった時と同様、乾けば白い結晶が表面につくだけなので揮発もせず、小屋組みも含めて家全体の構造躯体に吹付けておくと「キクイムシ」や「ゴキブリ」も含めた虫対策、忌避効果が期待できます。ただし食塩と同じで水が掛かると薄まり流れ出してしまうので、雨掛かりのない構造体での使用となります。

閑話休題日本のシロアリは、基本的に地面近くしかいないと考えられていますが、私が実際に欠陥住宅の調査で確認した事例では、2階の桁まで食害に遭った事例に遭遇しました。この建物は、ラスカット板と呼ばれる左官下地の構造用合板が使われ、躯体内に雨水の浸入が見られました。壁体内結露もあったようで、外部から水が浸入し、壁体内が湿潤状態になっていると、シロアリも土台から水分に誘導されて上がってくるようです。専門家によると、水分を運ぶ役目を持った働きアリもいるそうです。

断熱材でも、自然素材系の『セルロースファイバー』や『ウール(羊毛)断熱材』などは、防虫や難燃処理が必要で、ホウ酸が混ぜられます。アルゼンチンアリなどの外来種は、まったく餌のないビーカーの中でも1か月以上生きていますが、ホウ酸を入れたビーカーでは一週間以内に死滅します。ゴキブリにも「ホウ酸ダンゴ」が使われるくらい、虫嫌いにはホウ酸の噴霧や断熱材利用がお勧めです♪

 

Wakamoto
冒頭にも書いた通り、基本的にはシロアリが建物に近寄らない、構造躯体までたどり着かないような対策をするのが最も有効なシロアリ対策、防蟻処理です。揮発性の薬剤は、人体に全く影響がないとは言い切れず、短期間で保証が切れ、将来メンテナンス費用が掛かり続けます。
▼次回はバルコニーの防水について考えていきましょう。
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ABOUTこの記事をかいた人

≪住まいづくり専門コンシェルジェ≫ 福岡大学工学部建築学科に在学中、当時の人気建築家『宮脇檀建築研究所』のオープンデスクを体験。卒業後、店舗の企画・設計・施工の中堅企業に就職し、主に首都圏の大型商業施設、駅ビル等のテナント工事にてコンストラクション・マネジメントを体験。1991年に東京から広島に移住し、住宅リフォームのFC本部、住宅営業コンサルティング会社に勤務。全国で1千社以上の工務店・ハウスメーカー・設計事務所と交流し、住宅業界の表も裏も知り尽くす。2001年に独立し、500件以上の住宅取得相談に応じ、広島にて150棟以上の見積入札・新築検査等に携わる。2006年に著書「家づくりで泣く人笑う人」を出版。 マネジメントの国家資格『中小企業診断士』を持つ、異色の住生活エージェント。