【施主が学ぶやさしい住宅建築講座-12】接合金物と中間検査

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Wakamoto
無事棟上げが終わり、屋根の下地に防水のためのアスファルトルーフィングを施工し終えたら、多少天気が崩れても大丈夫なので現場もひと段落です。

上棟の日に駆けつけてくれた応援の大工さんたちも、翌日からは自分の担当現場に戻っていき、上棟したばかりの現場は、概ね棟梁1人か弟子の見習い大工の2人で大工工事を進めていきます。

棟上げの様子は、前回の記事でご確認下さい。

【施主が学ぶやさしい住宅建築講座-11】棟上げと上棟式

2018.05.07

棟上げ翌日から、大工さん(棟梁)は、前日組み上げた構造躯体に、耐震性能を高めるための「筋交い」や「接続金物」などを取り付けていきます。外部では、同時並行で屋根屋さんによる屋根ふき工事(瓦やカラーベスト、ガルバリウム鋼板張りなど)が進められます。

接合金物

昔の日本家屋は、あまり釘や金物を使うことはありませんでした。大工が自ら手刻みして加工した”継手(つぎて)”や”仕口(しくち)”で材木同士を繋ぎあわせ、緩みそうな場所には「込み栓」や「くさび」を打ち込んで、最低限の建築金物として「かすがい」や「山形プレート」などが使われていました。

木材同士で繋ぐことで、地震の揺れも材料自体が少し潰れることで、柳の木のような”柔軟さのある”揺れを吸収する柔構造の建物が主流でした。壁も、斜め材の筋交いではなく「貫(ぬき)」と呼ばれる水平方向の横桟と竹木舞を組み、土壁塗りの下地をつくり、漆喰などで左官仕上をしていました。

適度に強い揺れが分散され、外壁にひび割れが来ても、ご近所に住む左官職人が補修すれば事足りるというのが、戦前までの日本の住宅(伝統的軸組み工法)でした。コンクリートの基礎に土台をアンカーボルトで緊結し、慣性の法則によって強い揺れがそのまま直接構造躯体に伝搬するという現代の住宅では、それぞれの接続部すべてに金物を取り付けて締め付けるようになりました。

羽子板ボルト

梁と桁など、直行した水平部材が、大きな揺れで抜け落ちないように、ボルトで引き寄せてナットで締め付ける『羽子板ボルト

この金物は、まだ構造材があらわになって応援の大工さんたちが数多くいる「建て方(=棟上げ)」の日に、手分けをして締め付けられていきます。メッキされた羽子板ボルトが、足場の上のカゴに大量に用意され、構造材が交差する接合部ごとに配られ、ガチガチに固められます。

このように躯体が揺れないようにボルト締めされた後、分厚い床合板を敷き詰めて適切なピッチで釘止めされるので、それだけでも昔よりも揺れない建物になっています。

ホールダウンアンカー(ホールダウン金物)

建物の四隅や中央部など、建物が横に変形するのを防ぐ『耐力壁』を適切に配置します。木造では「筋交い」、鉄骨では「ブレース」と呼ばれる斜め材を入れて固めますが、変形しにくい代わりに、柱の足元と頭(柱頭といいます)には、上方向に大きな”引き抜きの力”が掛かります。

車を運転している時の急ブレーキと同じで、シートベルト的な役目がこの『ホールダウン・アンカー』です。

熊本地震では、震度7の繰り返しの揺れで、このホールダウンアンカーを取り付けている柱側のビスが抜けて、柱ごと土台から抜け落ちて倒壊した建物もありました。それほどの力がこの耐力壁に掛かるのです。

筋交いプレート

阪神淡路大震災で、淡路島の比較的新しい民家で、筋交いを入れておきながら、釘止めだったので大きな揺れで容易に釘が抜けてしまい、筋交いが役目を果たさないケースがありました。

そこで筋交いの留め方や接合金物も進化し、釘止めではなく『筋交いプレート』と呼ばれるコーナー金物を、筋交いと柱・床にビス止めして抜けにくくしました。しかしその後発生した熊本地震では、複数のビスが大きな揺れで筋交いに「割れ」を生じさせ、筋交い自身が途中でポッキリ折れてしまって、倒壊した建物もありました。

一定の変形(『層間変位』と呼びます)を超えてしまうと、建物の強度が一気に失われます。そのため、筋交い自身に少し柔軟性を持たせるような筋交いプレートも開発されました。画像は、建築金物専業メーカーの老舗企業、岡部(株)の『ブレスターZ600』という筋交いプレートです。

閑話休題在来木造で棟上げ後に取り付けるボルトやプレートなどの金物も数多くありますが、仕口加工をすることで接合部が弱くなるのを防ぐために、ホゾなどの穴あけ加工をせず、接合部は強度のある金物同士でボルト締めする『金物工法』も数多くあります。

画像は『KES構法』と呼ばれる金物工法で三階建て住宅を建てた広島市南区の現場。鉄骨造と同じような間取り、強度の建物を建てることが可能で、梁はこの金物の厚みとほぼ同じ”スリット状”の切れ込みだけを入れるので、構造材は太さそのままの強度が保てます。

亜鉛メッキされた鋳物のプレートは、錆びることもなく柱にしっかりとボルト留めされ、梁を受けて横に開けられた小さなボルト穴に数本のピンを差し込んで抜け落ちないように固定します。

中間検査

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棟上げ後、概ね一週間前後で建築確認を行った役所や検査機関によって、中間検査が行われます。まだ柱や梁などの構造躯体が露わになっている状態で、外周りは『タイベック®』のような透湿防水シートで囲われ、土台や柱は防蟻処理が終わった段階です。

工法によっては外壁に『ダイライト®』などの構造用合板、面材が張られて、耐震強度が設計図書通りか確認できる状態で、検査員が建物検査を行います。主に建築金物の取付けが適正か耐力壁の位置が図面通りかなどをチェックします。

広島では市役所のほか、民間のハウスプラス中国住宅保証や広島住宅センターなど、『指定確認検査機関』が実施します。住宅性能評価機関や瑕疵担保責任保険など、関連サービスも提供していますが、施主が指名することはほとんどなく、工事を担当する施工会社が選んで依頼します。

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住宅金融支援機構の『フラット35S』など、住宅ローンの適合証明なども、この中間検査で技術基準に照らし合わせてチェックを行います。

次回は、屋根工事をみていきましょう!

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≪住まいづくり専門コンシェルジェ≫ 福岡大学工学部建築学科に在学中、当時の人気建築家『宮脇檀建築研究所』のオープンデスクを体験。卒業後、店舗の企画・設計・施工の中堅企業に就職し、主に首都圏の大型商業施設、駅ビル等のテナント工事にてコンストラクション・マネジメントを体験。1991年に東京から広島に移住し、住宅リフォームのFC本部、住宅営業コンサルティング会社に勤務。全国で1千社以上の工務店・ハウスメーカー・設計事務所と交流し、住宅業界の表も裏も知り尽くす。2001年に独立し、500件以上の住宅取得相談に応じ、広島にて150棟以上の見積入札・新築検査等に携わる。2006年に著書「家づくりで泣く人笑う人」を出版。 マネジメントの国家資格『中小企業診断士』を持つ、異色の住生活エージェント。