前回の洋風建具に続き、今回は和風の建具の取付けです。
洋風建具については、以下復習して下さい。
和風の建具は、基本的に柱と柱の間の開口部に嵌めるものです。開口枠の上下に鴨居や敷居などの「溝」があり、建具自体は『倹飩(ケンドン)式』と呼ばれる”戸を上枠の溝に差し込んで落とす”ことで、容易に取り外しが出来る扉です。横にスライドする『引戸』が基本です。
鴨居と敷居
和風建具の取付けは、ほぼ鴨居と敷居に尽きます。畳敷きの和室の出入り口に収まるのが和風の建具で、床面の建具用の溝を『敷居(しきい)』と呼び、上枠の溝を『鴨居(かもい)』と呼びます。
画像は広島市中区で完成した家の『小上がりの和室』の出入り口の工事です。3枚の建具(こちらでは障子)が壁の中にすべて納まり、全開すると建具の存在が見えなくなります。小上がりは、掘りごたつのある和風居酒屋のように、他の洋室の床から腰かけられるくらいの35cm程度床が高くなっている部屋で、その分上部枠の『鴨居』はほぼ天井の高さに揃います。
小上がりの和室が完成した様子を、洋室(リビング)側からと、障子を閉めた和室側からの2枚の画像でもご紹介します。出入り口は圧迫感がないように建具(障子)の高さを2mとしていますが、サッシの内側に付く『内障子』や押入れの『襖』は、外部建具の『内法寸法』に合わせるため、洋室の床面から2mの高さに揃えています。つまり建具自体は160cm程度の高さです。
真壁(しんかべ)と長押(なげし)
一般的に、洋風の建具は『建具枠』に収まり、和風の建物は『柱間』に収まります。つまり構造がみえる『真壁(しんかべ)造』の部屋の出入り口で使われます。柱や梁・桁といった木構造が見える仕上げは、美しく見えるバランスがあり、本格的な和室であれば建具と天井までの間の空間(垂れ壁)の高さのバランスも重要です。
画像は、長押(なげし)と呼ばれる水平方向の化粧材を取付けた事例。真壁のヒノキの柱と同じくらいの幅で、柱をクロスする形で水平の材料を取り付けると、その厚み分の陰影と共に和室らしい深みが与えられます。
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二間続きの和室
最近ではほとんど造られることの少ない『二間続きの和室』では、欄間や長押、床柱といった昔ながらの和室で使われる要素を見ることが出来ます。そんな現場の様子を広島県廿日市市の現場写真からご紹介してきましょう。
柱に緑色に巻いているのは、きれいに仕上がっているヒノキの柱や黒檀の床柱などが、作業で傷つかないための『養生』(クッション材)です。欄間によって2つの部屋の天井が繋がり、空気が動きます。こちらでは外部のサッシは普通の高さとして、機械換気で天井近くに漂う暖気を排出します(右上の小さな開口)。縁側をとる場合には、廊下となる縁側の建具上部に欄間を設けるケースが多いでしょう。
天井も竿縁で格子状に組み、網代で仕上げるなど、本格和風の天井です。
赤い聚楽を塗っている途中と、完成した室内写真もご紹介しておきます。
二方向開口の和風リビング
少し特殊な事例ですが、和風テイストが好みながら、実際の生活は洋風なので、リビングの一角だけ純和風の部屋をつくった広島市安佐北区の事例もご紹介しておきましょう。
手前が吹抜けのあるリビングで、敷居はフローリングと段差のないフラットです。鴨居と天井の間には透明ガラスの欄間を設けて、二面の襖で完全に仕切ることが可能です。小さな2人のお子さんがいたので、大きくなるまではこの部屋が家族4人の寝室です。
奥に本格的な和室を思わせる数寄屋風天井をつくっているので、そちらもご紹介しますね!
この和室は、70歳代のベテランの大工さんの手による造作です。
▼次回は、また外に出て外部の『雨樋』を見ていきましょう!