いよいよ外部の仕上げ段階の解説です。
外壁の仕上げが完了し、足場を撤去する直前に、軒先に雨どいを付けていきます。
目次
塩化ビニール樹脂製雨樋
最もオーソドックスな雨樋は塩化ビニール製で、洋風住宅でも和風住宅でも多く使われています。画像は、和風住宅の『化粧垂木』に取り付けた「樋受け金具」と「半丸軒樋」です。和瓦を葺いた民家などで見慣れた形状ですが、最近の新築ではほとんど使われないデザインの軒樋です。
鼻隠しと破風板
雨樋を取付ける場所は、屋根の突端の軒先です。最近の新築住宅は洋風化が進み、また耐火性能が求められるため、以前の民家のように軒下に垂木が見えるような和風の家はほとんどなくなりました。軒裏も垂木の鼻先(鼻隠し)も、外からの火事の延焼を防ぐため、セメント系や窯業系の材料で覆います。
樋受け金物
以前にように、垂木が現しで見えるケースは減り、防火性の高い鼻隠しに樋受け金物を取り付けていきます。金具の形状自体、以前のデザインとは全く異なり、雨樋自身も丸型よりも角型が増えました。
軒樋と縦樋
屋根からの雨を受ける、水平方向の「軒樋」は、少し水勾配をつけて建物の角に設置された「上合(集水器)」に集められ、「縦樋」を通じて地中に埋設された雨水枡に流れていきます。軒樋は角型がほとんどとなりましたが、縦樋はまだ丸型のほうが多いようです。
オーバーフロー管と集水器
雨が降るのは屋根だけでなく、バルコニーにも雨が溜まります。落ち葉やゴミなどが排水目皿に詰まって、雨水が排水されずにバルコニーがプールになるのを防ぐため、バルコニー出入り口のサッシよりも低い位置で、溜まった雨が外に流れ出すように『オーバーフロー管』をつけます。バルコニーの腰壁や外壁に雨垂れがつかないよう、雨樋で溢れる雨水を受けて、2階屋根からの縦樋と「エルボー」で繋ぎます。
樋のカラー
樹脂製の雨樋は、サッシと同様いくつかのカラーバリエーションがあります。
縦樋は外壁の色に合わせて目立たなくするのが一般的ですが、軒樋は屋根材に近い色か、破風板や鼻隠しの色に近い色を選ぶか、悩むところです。いずれにしても形状や色など、それほど存在が目立たなくしたほうがすっきりします。
金属製雨どい
塩化ビニールの雨樋よりも、デザイン性・耐久性を重視しこだわりのある方は、金属製の雨樋も検討されます。純和風住宅では、屋根の一部を「銅板葺き」にされるような豪邸の場合「銅製の雨樋」が使われ、玄関脇には鎖状になって雨が溢れて下に伝わっていく「鎖縦樋」のようなものもありました。今ではシンプルなデザインのガルバリウム鋼板製が、若い世代にも好まれています。
軒受け金物
建築家や設計事務所が好んで使う『タニタハウジングウェア』のガルバリウム鋼板製雨樋は、人が地面に立って雨どいを見た時にもスッキリ見せたいということで、軒受け金物が下からは見えない構造になっています。ブラケットと呼ばれる金具を鼻隠しに取り付け、上から半丸の雨樋を”掴む”イメージです。まるで基礎のアンカーボルトを固定する治具のような形状です。
排水接続
雨水は、その他の生活雑排水(汚水)などとは経路を分けて『雨水枡』に集めて排水されます。昔であれば、そのまま庭に浸透していた雨ですが、敷地内で集められ、汚水は下水処理施設へ、雨水は下水処理場がパンクしないように、水路等に排出されます。
トラブル事例
通常の屋根は、切妻でも寄棟でも、屋根に降った雨は南北や東西など”複数の家の隅”にある縦樋に集められ、地中埋設された排水管を通って雨水枡に流れます。
しかし最近ではソーラー発電を最大限載せたいとか、デザイン的に屋根がフラットに見える四角い建物を好む施主も増えて、片流れ屋根も人気です。画像の現場では、広い敷地に平屋で大きな片流れ屋根(ガルバリウム鋼板葺き)としましたが、外構工事まで縦樋を排水接続していなかったことが原因で、石垣になっていた敷地の角の擁壁が豪雨で崩れました。
特殊な条件が重なってこのような状況になりましたが、雨水を一カ所にそのまま浸透させると、土砂災害と同様な状況になることに気づかされます。画像のように、借りのパイプで敷地外に排出するか、埋設した配管に接続しておけば避けられた事故でした。
完成例
ファッションでもこだわる人は小物のギアに凝るように、家づくりでも雨どいは他人も気づかない個性表現になり得ます。たかが雨どい、されど意外と重要な構成要素です。