前回の講座は、壁紙の下地づくりを解説しました。
今回は、塗装仕上げの下地について学んでいきます。前回の復習は以下クリック下さい。
ドライウォール
元々日本の住宅の壁は、土壁の下地に漆喰や聚楽などの”左官仕上”が基本でした。しかも南北面はほとんど壁はなく、襖や障子などの建具で部屋を仕切っているだけの”風が通り抜ける間取り”でした。欧米の住宅の壁も、レンガ積みなどの下地に漆喰塗りなど、やはり”左官仕上”(=湿式工法)がほとんどだったようです。
戦後の人口増加や住宅需要の高まり、そして建物が密集してきて火災の安全性などをクリアするために、石膏ボード(プラスターボード)が開発され、乾式工法による短工期の住宅建設が可能となってきました。乾式工法の壁下地なので『ドライウォール』と呼ばれます。
ジョイントパテ
下地のつくりかた自体は、ビニールクロス貼りと大差はありませんが、熟練の左官職人のように”より平滑にきれいに仕上げる”ためには、クロスの厚みでごまかしがきく壁紙よりも、下地作りが重要になってきます。具体的にはパテやジョイントテープの塗り重ねや幅が増えて、手間は倍増です。
画像は本格的な輸入住宅の建築現場で、下地のプラスターボードも施工方法も本場米国の『ドライウォール工法』です。日本では石膏ボードを縦長に並べていきますが、米国では横長使いで縦に積み重ねていきます。従って、石膏ボードの継ぎ目部分のパテも横になっているのが分かります。
ペーパー掛け
パテはヘラで塗っていきますが、乾燥収縮して目地が割れたり、ボードの継ぎ目がやせて凹凸が目立つことのないよう、下塗り・中塗り・上塗りと塗り重ねていきます。仕上げは目がきめ細かいペーパーで平滑にします。数ミクロンの塗膜(塗装仕上げ)でも左官仕上と同じように継ぎ目を感じさせない壁下地づくりが理想です。
シーラー処理と水性塗料
内装壁を塗装にするニーズは、質感だけでなくアトピーなどのアレルギー症状のある人が、ビニールクロスに含まれる可塑剤や、糊に含まれる揮発性物質などによる”健康被害”を回避したいというケースがほとんどです。従って、塗料の溶剤もシンナー系の揮発性物質ではなく、水に溶ける塗料を使う『水性塗料』(水性アクリルエマルジョン塗料等)によるほとんど臭いのない仕上げが好まれます。
壁下塗り
石膏ボードのジョイント部分が目立たないようパテしごきをして下地が出来たら、下塗りをしていきます。巾木や廻縁が先に取り付けられていると、汚さないように「養生シート」の作業が必要となります。こちらの現場では、巾木や廻縁は後付けで、養生の手間と材料を不要としています。
ケーシング&モールディング
壁の上塗りが終わったら、ドア枠(ケーシング)や廻縁(モールディング)などを取付けて仕上ていきます。上記の画像と比較すると、少しづつ完成に近づいていることが分かります。
塗装下地壁紙
壁の質感も重視しながら、エコロジーな自然素材を求めるなら、少し厚めの天然の紙を下地に張ってその上に水性塗料を塗るという工法もあります。下地の紙も塗料もドイツ製のものが多く、日本国内で良く利用されているのは『オガファーザー』や『ルナファーザー』という木片チップ入りの壁紙です。
壁紙を下地にした塗装仕上げは、壁紙自体が厚みがあり、材料にも小さな凹凸があるので、塗装をしても継ぎ目は多少分かります。ビニールクロスと違って、何度も塗料の塗り重ねが出来、耐久性も高いので、長期的に見れば選択肢の一つとしてお勧めですが、新築時のコストは割高となります。
▼次回は、左官仕上の下地について学んでいきましょう。