初めての家づくり成功応援ブログ

【施主が学ぶやさしい住宅建築講座-13】屋根の防水と遮熱

建物の部位で最も過酷な環境になる屋根。

氷点下にまで下がる真冬から、太陽熱に照らされて60℃以上の温度で焼ける真夏、そして紫外線にも晒され、雨や風、振動なども常に受け続けます。さらに内外の温度差によって屋根下地等に結露も発生しやすく、雨を漏らさないように丁寧な施工も求められます。

今回の講座では、屋根の防水や遮熱など基本的な部分を学んでいきましょう。
前回の講座は『接合金物と中間検査』です。

【施主が学ぶやさしい住宅建築講座-12】接合金物と中間検査

2018.05.18

屋根の防水工事

Wakamoto
一般的な屋根は、野地板合板の上に『アスファルトルーフィング』と呼ばれるシート状の下葺き材を敷きますが、単純な形状の屋根ばかりではなく、トップライトドーマーなどは特に防水工事に注意が必要です。

トップライトの納め

狭小地や北面の家など、暗くなりがちな室内を明るくする方法として、トップライト(天窓)が良く利用されます。屋根に開口部を設けることは、雨漏りの原因にもなりやすく、トップライト周りは二重の捨て貼りを行います。

画像のように、ルーフィングは上下の重ね代100mm以上、左右の重ね代200mm以上を確保し、雨が軒先側に流れていくように重ねていきます。トップライト周りは枠の内側までルーフィングを立ち上げ、隅角部にピンホールが出来ないよう丁寧に施工します。

屋根勾配が3寸(3/10)未満の場合は、雨漏りのリスクが高まるため、トップライト以外の方法で採光を検討しましょう。

壁立上がりの取り合い

最近はZEH(ゼロエネルギー住宅)をはじめとして、屋根に太陽光パネルを搭載する割合が増え、少しでも屋根面積を増やすために、屋根の真ん中に棟を設けず、段違いで屋根をずらすケースも登場してきました。

2階が載らない部屋の屋根(下屋と言います)も、屋根が壁の立上がりで止まるので、壁を伝って雨が浸入しないよう、ルーフィングを立ち上げます。ルーフィングは角でカットして繋ぐのではなく、連続して折り曲げて250mm以上の立ち上げを設けます。その上から壁の防水シート(タイベック等の透湿防水シート)を張って、水切りを設置、雨が入り込んでも外に排出できるようにします。

谷の取り合い

屋根の「谷」というのは、2階の部屋に凸部があり、壁が”入り隅”になっている上部で、軒先が直角に交わっている部分。雨が降ると、水が集まってくる部分で、屋根材も斜めにカットする必要があるため、最も雨水が浸入しやすい個所です。

アスファルトルーフィングは、斜めにカットすることなく十分に重ね代を取って、防水の連続性を保ちます。溝が出来る谷の部分は、屋根から流れ込んだ雨水が軒先の雨樋に集められるよう、板金で谷樋をつくります。

仮に屋根材が動いたり劣化しても、その下で雨漏りのないように”二次防水層”をつくるのが、屋根防水の目的です。

屋根の遮熱工事

Wakamoto
最近は地球温暖化の影響もあり、日本でも九州や中四国地方は亜熱帯地域のように夏の日射が厳しくなってきました。屋根面で熱を反射する”遮熱”という考え方も登場してきました。

これまでの住宅は、屋根の下の小屋裏で換気をし、天井裏に断熱材を入れるというケースがほとんどでした。最近では居室の天井を高くとる勾配天井も好まれ、屋根で断熱するケースも増えました。

屋根断熱の場合は小屋裏の換気が出来ず、西日の暑さで熱せられた屋根が断熱材に伝わって「保温」され、夜になっても天井付近に熱気がこもるという現象も増えています。断熱性能を高めるほど、暑さが逃げず熱帯夜になるのです。

遮熱ルーフィング

ルーフィング材でも様々な機能が付加された商材が登場しました。画像は建材メーカーのフクビの『遮熱ルーフエアテック』という屋根防水シートです。

メーカーカタログによると、野地板の表面温度を6~8℃程度下げる効果があり、アスファルトルーフィングに比べて湿気を通す”透湿効果”も高いため、屋根部分での結露のリスクが低減できます。

重量も一般のルーフィングの3分の1程度なので、作業性もいいのがメリットです。

アルミ蒸着シート二重屋根

野地板にアルミ蒸着シートを敷き詰めた上に、胴縁により空気層を設け、その上にさらに合板下地にアスファルトルーフィングを張るという二重構造の屋根を採用した事例。

アルミサッシやアルミ鍋で分かる通り、アルミは直接熱を伝えやすいという性質(=熱伝導率の高さ)がある一方で、熱を反射しやすい材料(=輻射熱のカット)でもあるので、ペアガラスと同様”移動しない空気層”を設けることで、屋根からの輻射熱を室内に入れないという発想の商品でした。

こちらの現場では、屋根材をオーストラリアから輸入した『コロナ』を葺き、屋根断熱を『セルロースファイバー』の吹込みとしました。コロナはガルバリウム鋼板の下地に、ファイバーシングルと同様に「色砂」を吹付けたもので、軽くて耐久性の高い屋根材です。

断熱パネル

工場で断熱材のパネルを製作して、クレーンで吊って、垂木に嵌め込んでいく工法もありました。

発泡系の断熱材と野地板合板がパッケージになっていて、断熱材と合板の間に通気層があり、軒から入った空気が棟に抜けていくことで、結露の原因となる湿気や内外の温度差を抑えて、遮熱効果も高めます。

工場生産の安心感はありますが、それほど現場作業の簡略化にはならず、コストが高いため、今では新しい部材も登場して、屋根下地・防水工事と、室内側の断熱・遮熱工事を分けて行うケースがほとんどです。

石膏ボード

和風住宅を手掛ける工務店で、野地板の上に厚さ12.5mmのプラスターボードを敷き詰め、その上にアスファルトルーフィングを施工した事例もありました。

プラスターボードはご存知の通り”耐火性能”があり、バーナーであぶってもすぐには火の熱が伝わりません。雨に濡れると脆いものの、比較的安い材料で遮熱効果も認められるため、和瓦の屋根下地に使用しました。

和瓦の場合は、乾式工法では瓦の隙間で通気が出来るため、屋根下地には熱がこもりにくく、屋根荷重が大きい分、垂木も太く軒下の通気層の確保も容易なので、小屋裏の換気量も他の屋根材より大きくなります。

閑話休題屋根にソーラーパネルを載せる場合、屋根の仕上げをした上に架台を組んでソーラーパネルを載せる場合と、屋根一体型でソーラーパネル自体が屋根材になるケースがあります。

画像は『屋根一体型』のソーラーパネルを載せた事例の屋根下地。アスファルトルーフィングを敷き詰めた後に、薄いガルバリウム鋼板を重ねていき、その上に屋根いっぱいに太陽光モジュールを載せていきます。

ソーラー自体が熱を反射したり吸収するため、夏の小屋裏は遮熱効果がありますが、冬が北側の屋根よりも暖かくなりやすく、小屋裏の換気をしている場合に、野地板や垂木等に結露が生じてカビが生えるケースも出ています。

また、ソーラー発電は温度が高過ぎると発電効率が落ち、パネル下に通気がなく熱くなりやすい屋根一体型ソーラーは、屋根と分離したソーラー発電よりもKwあたりの発電量が落ちると専門家が指摘しています。

Wakamoto
日本では、屋根下地や防水方法だけでも、様々な部材・工法があります。耐久性が求められる屋根なので、実績や経過年数の多さで選んだほうが無難です。20年以上使われている材料・工法だったら安心です。

小屋裏の結露防止

雪の多い寒い地域では、軒下から入り込んだ冷たい空気が、天井裏から漏れる暖かい空気で結露し、雨漏りのようになるケースが少なくありません。また融けないまま屋根に残った雪から水滴が漏れ、つららになって天井を突き破る『すがもれ』という現象もあり、室外とはいえ屋根の断熱や結露防止は意外と重要です。

透湿ルーフィング

屋根の防水で最も一般的に使われるアスファルトルーフィングは、安価で実績も豊富ですが、ほとんど湿気を通しません。また熱による変形や低温時の硬化など、屋根下地の耐久性が必ずしも高くないため、改良製品も登場してきました。

画像はセーレン(株)という国内企業が開発した『ルーフラミテクト』という製品。アスファルトルーフィングに比べて重量は約5分の1で、透湿性は約200倍との触れ込みです。

道路のアスファルトをイメージしてもらえば分かる通り、真夏には溶けて柔らかくなり、野地板にも張り付いてしまうため、将来の廃棄処分を考えると、このような薄いシート状の製品は分別回収や焼却処分の容易さで選ばれます。

遮熱透湿シート

透湿にプラスして、遮熱機能を追加することでさらに結露のリスクを下げるルーフィングもあります。

画像は米国デュポン社が開発した『タイベック・ルーフライナー』という製品。輻射熱の反射率が高く、湿気だけでなく有機ガスも透過させる素材なので、合板から出る揮発性物質、ホルムアルデヒド等も素早く輩出できるとメーカーは謳います。

Wakamoto
このような機能性の防水シートは、数多く発売されていて、プロでもどれがいいのか混乱しています。一定の遮熱効果はあるので、費用対効果で選んで下さい。目安として、差額が5万円以内であれば採用してもいいでしょうが、基本的に断熱や遮熱は、何か不具合が生じた時にメンテナンスが容易な「小屋裏」から行えるほうがいいと思います。

次回は、屋根のこう配や屋根材、施工方法について学びます。