前回の記事では、ハウスメーカーの選び方について書きました。
「工法」「価格」「性能」「人」そして「実績」の5つに分類して説明しています。
ご興味のある方は、復習も兼ねてお読みください。
新築を建てる時、仕事が忙しくて大手に任せたら安心だと思う人は、大手ハウスメーカーを選ばれます。外食産業で言えば『大手外食チェーン』の安心感です。ファミリーレストランや回転ずし、居酒屋チェーンに行くのと似ています。特別においしい訳ではないでしょうし、決して安い訳でもないけど、「当たりはずれ」が少なく、家族連れでも安心です。ローコスト系は「ファストフード店」と考えれば近いイメージです。
本部が開発したメニューやレシピに、セントラルキッチン。そして従業員用接客マニュアルがあり、パートやアルバイトでも戦力になるように教育システムが充実しています。広告宣伝と多店舗化、共通の看板によるブランディングによって、信頼のイメージをつくりだし、経営やオペレーションも近代化しています。しかし画一的な雰囲気により面白みが欠け、新たな発見や感動はありません。
一方で、地元の工務店との家づくりは、地域の中に数多く営業している飲食店の中から、大切な日のお祝いの席や長年お世話になった大切な人をもてなすお店探しに似ています。
工務店の選び方
工務店といっても、スーパーゼネコンの「竹中工務店」規模の会社もあるので、ここでは地域密着型の戸建住宅を中心に事業を手掛けている施工会社について書いていきます。住宅会社の種類と規模感という解説も書きましたので、これを前提に年間50棟未満の新築を手掛ける地元工務店とお考え下さい。
地元企業でも、複数の住宅展示場に出展し、年間50棟以上新築を手掛けている住宅会社は、外食産業で言えばファミリーレストランではないものの、「地元飲食チェーン」です。建築業界では「ビルダー」と呼ばれます。
テイストで選ぶ
飲食店でも、和食のお店から中華、イタリアン、フレンチ、トルコ料理など、数多くのジャンル・地域の料理が存在します。優劣ではなく、好みによって分かれます。工務店がつくる家は、大手のように他社との差別化のために特殊な部材や工法を開発するということはありません。ほぼ『軸組み工法(在来木造)』か『ツーバイフォー工法』という、どこでも調達できる部材による「標準化工法」です。飲食店オーナーの料理人と同じで、各社のテイストは工務店社長の好みに左右されるのです。
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和風テイスト
今は、深い軒下に広縁があり、二間続きの和室で雪見障子が建てつけられているような家はほとんどなくなりました。静岡の菊池建設などのように数寄屋の家を手掛ける住宅会社も残っていますが、坪100万円は下回らないでしょう。しかし既存の住宅地での建て替えで、周りの雰囲気を壊さないよう、和風テイストの家にしたいというニーズは残っています。 外観イメージだけでなく、使われる素材も天然素材が多用され、室内も柱が見える『真壁』となるので、構造材の接合部が見える処理も技術が必要です。昔ながらの「手刻み加工」で棟梁が加工した仕口・継手が美しく、プレカットでは味わえない感動を上棟時に体験することも喜びでしょう。
昔の徒弟制度を経験したベテランの大工さんでなければ、このような家づくりは難しいでしょうから、工務店選びというよりは「大工選び」に近い、いい職人探しを工務店側に依頼します。
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洋風テイスト
今の日本の家は、広い意味では「洋風化」が進んでいますが、海外の人たちから見れば『無国籍』的な住宅が多く、和洋折衷の住宅がほとんどです。明治から大正時代に掛けては、英国人のジョサイヤ・コンドルや米国人のウィリアム・ヴォーリスなど、お雇い外国人建築家による設計や、その日本人の弟子たちが「洋館」を手掛けました。 西洋の様式美を忠実に真似た住宅だったので、華族や士族・成功した事業家などの邸宅として建てられ、現存するものは今では「重要文化財」的な扱いを受けますが、欧米では80~100年前の建物も、普通に取引されています。
どうしても日本では「○○風」といったテイストになりますが、それは土地の形状や近隣の街並みとの調和などから、致し方ない面があるかも知れません。出来るだけ周辺の街並みや環境に影響を受けない立地を選ぶことが、イメージ通りの家をつくる最初の条件になるでしょう。業者選びは、間取りも含めてかなりの設計力や経験値が必要で、施工例を見せてもらうのがスタートです。
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現代和風
和瓦が載って、ずっしりと重量感のある古臭いイメージのする和風ではなく、すっきりとスマートなイメージの和風を好む方も増えてきました。「地元の木」を使い、太陽や風などの自然をじょうずに取り入れて建てる「パッシブデザイン」の和の住まいです。 最近では『デザインビルド』と呼ばれるデザイン重視、社内にデザイナーを抱える工務店も増えており、外部パートナーとして設計事務所とコラボする工務店など、若い人たちのデザインニーズに応える施工会社を選びたいですね。
外部に木を使うと、新築時の印象はいいものの、湿度が高く雨の多い日本では、住み続けていくと経年劣化が激しく、5年も経てば傷みが目立つようになってきます。工務店側も「他社との差別化」目的で、外部に木を使いデザイン重視で家を建てる傾向が高いのがこの「デザインビルド」なので、見積比較や価格交渉は難しいでしょう。新築時も入居後も資金的余裕がなければ、最初に思い描いていたライフスタイルで住み続けるのは大変かも知れません。
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コンテンポラリースタイル
従来の住宅は、屋根の頭頂部に「棟」があり、建物中央の棟から左右に屋根勾配がついた家がほとんどでした。三角屋根の家が、雨や雪を屋根に留めることなく雨どいを通じて雨水をスムーズに放流し、小屋裏の換気も自然の力だけで十分に行われる設計が可能でした。 最近は、三角の形状の屋根が好きではないという方も増えてきました。建築家がデザインした「箱のような家」が住宅雑誌やライフスタイル雑誌で紹介され、モデルハウスでも採用され始めたのです。実際にはビル建築物のように屋上がある訳ではなく、緩い勾配の「片流れ屋根」が多く、屋根形状を見せないためにパラペットと呼ばれる「立ち上がり部分」をつくることが大半です。店舗併用住宅の看板部分と同じです。
軒の出や庇(霧よけ)がない家が大半なので、外壁の汚れ対策は必須です。シャープに見せるためのディティールを失敗すると、整形手術に失敗した「バランスの悪い崩れ顔」になるリスクがあるので、センスのあるデザイン経験豊富な会社を選別して下さい。
Next:工務店の選び方-2 特長で選ぶ
特長で選ぶ
工務店の特長というのは、各社の「強み」を知ることです。
料理人で言えば、単に和食やフレンチといった料理の違いではなく、オーガニックにこだわるとか、世界中のスパイスを試してみるといった他店との違いです。その道のプロとして大切にしている素材や家づくりの思想を聞いてみると、規格プラン中心のハウスメーカーでは得られない、深い考察や先人の知恵を自分の家づくりにも取り入れることが出来るかも知れません。
お酒や料理のうんちくを聞くことで、食事が豊かになるのと同様、家づくりが楽しく精神的豊さを感じられます。それこそが、工務店に頼む醍醐味であり、いい会社と出会えた時の喜びです。
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自然素材中心の家
大手ハウスメーカーは「安定供給出来ない材料」や「品質のばらつきがある部材」を嫌います。大量に発注しても、価格の変動が少なく量産効果が出て、手入れが簡単な『JIS規格の工業製品』が好まれるのです。
注文住宅で、個性を望む施主、アトピーなどの疾患に悩む人たちは、画一的で冷たい感じのする工業製品よりも、流通量は少なくても自分たちのニーズに合致した素材が見つかれば採用を検討してみたいもの。例えば「無添加の漆喰」や「植物由来のオイル塗装」「鉱物由来の内装材」など。
内壁の下地材となるプラスターボード(石膏ボード)も、解体時に建設廃材になるからと、解体後に「土に還る素材」しか使わないという会社もあります。またビニールクロスも燃えると有機ガスが発生するからと、折り機で編んだ「紙布」や「和紙」を貼る会社や、ドライウォールに水性塗料を塗る会社など、各社のこだわりは多岐にわたります。
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大架構の家
車いじりが好きで、1階に2台分のガレージを設けたいとか、広いリビングで柱のない空間を確保したいなど、5mを超える柱間の住宅を希望される方もいらっしゃいます。一般の方は建築に対する十分な知識がないため、住宅展示場に行くと「重量鉄骨でなければ無理ですね・・・」といった話となり、地元の建設会社・工務店も「S造(鉄骨造)」を前提に計画を進めがちです。
しかし今や木造で大規模公共建築物を建てられる時代になりました。戸建住宅でも集成材だけでなく「LVL(単板積層材)」や「CLT(直交積層材)」など大規模建築用の木質系構造用部材も増えています。構造躯体の重さにより基礎も大きくなる重量鉄骨造よりも、比重が軽くコストも抑えられて部屋の広さも確保できる木造の優位性を活かし、耐震性能の高さと間取りの自由度を強みとする工務店もあります。
パナソニックが開発した『テクノストラクチャー』やFC方式で展開している『SE構法』ほか、『KES構法』『門型フレーム』など特殊な建築金物を使って5m以上柱のない空間をつくることができる木造構法も、ネットで探してみれば数多く見つかるでしょう。
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ゼロエネルギーの家
単に断熱性能を高め『魔法瓶のような家』という高断熱住宅から、夏至や冬至の太陽光の角度なども計算し、建物の配置計画から開口部の位置・大きさまでデザインして省エネルギー性能を高める『パッシブデザイン』に進化してきました。
断熱性能が高いだけであれば、夏の西日で暖められた部屋が夜になっても熱が溜まり、熱帯夜で寝苦しい状態が続くケースもありました。エアコンや換気だけでは天井面の表面温度は容易に下がりません。意外と光熱費が掛かって、暑さや寒さが感じられてクレームになる中途半端な高断熱住宅も少なくなかったのです。
2010年以降、低炭素住宅やトップランナー基準、そしてZEH(セロ・エネルギー・ハウス)など、従来の『次世代省エネ住宅』の基準よりも高い省エネ住宅に、国からの補助金や税制優遇なども実施されましたが、世界基準からすれば、中国や韓国にさえ後塵を拝すような断熱基準の家がまだまだ大半です。
日本よりも韓国や中国の内陸部は冬寒い地域が多いとはいえ、大手ハウスメーカーのうち世界基準の省エネ性能の家を標準的につくっている会社が数社しかないというのはお寒い状況です。断熱に熱心に取り組む工務店や設計事務所のほうが、プレハブメーカーよりもはるかに省エネルギーの住宅を建設しています。家の燃費計算をしてもらうか、UA値、C値といった断熱・気密の計算データ、測定結果を提示してもらいましょう。
Next:工務店の選び方-3 業態で選ぶ
業態で選ぶ
工務店選びで『業態』と聞いてもピンとこないかも知れません。
住宅建築は、建設業の許可を持っていれば、1人親方の大工さんから売上げ1兆円を超える大企業まで、日本国内で数十万社の会社で建てることが可能です。大分類では『建設業』ですが、頼む先の業態によって、価格もグレードもデザインも全く変わるのが注文住宅の建築です。
関連記事として書いた『ハウスメーカーと工務店の違い』はこちら
家づくりも、業態の違いによって「建築単価」も違えば「商談の進め方」も、出来上がる家の「テイスト」もかなり変わってきます。親戚が工務店や建設会社を経営していたり、知人が住宅会社に勤めているからと言って、あなたが建てたい家を依頼する先として適切かどうか、以下の説明でご判断下さい。
最も確かめたいのは①その会社の主要な対象顧客は誰か?、そして②その会社の1物件あたりの顧客単価はいくらか?ということです。小売りのお店をイメージしてもその違いは接客対応から提供される商品まで違ってくることがイメージできるでしょう。
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建設会社(地元中堅ゼネコン)
創業者の事業スタートは、大工の親方で木造住宅からスタートしても、戦前や戦後すぐに建設業をスタートした会社は、日本の経済成長に合わせてビル建設や公共事業によって成長した会社が多い。社長は経済同友会やロータリークラブ、ライオンズクラブなどの地元経済団体で活動しており、医療法人や福祉法人などの施設建設工事や、施設オーナーの自宅建設など、主に鉄筋コンクリート造が得意。
ほとんどが紹介で、5千万円以下の住宅を建築するケースはあまりなく、木造戸建て住宅の進出にはフランチャイズ加盟など他社からのノウハウを購入して、子会社で住宅事業をスタートする会社が一般的。このような会社は、一線級の営業マンは客単価の高い「ビル工事の営業」に就き、親会社からの出向者や他のハウスメーカーを退職した再就職組が営業を担っている。規格商品でカタログがあれば住宅販売も出来るといった、建売りや賃貸住宅とあまり変わらないような住宅が多く、過度な期待やこだわりの注文は避ければコスパの高い住宅取得も可能。
ただしほとんどの建物はビニールクロスに新建材、アルミサッシで吹抜けは避けるような「無難な家」。現場監督はビルの工事監理が中心で、戸建て住宅は大工任せになりがち。
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ビルダー(住宅販売会社)
複数の住宅展示場に出展し、概ね年間50棟程度以上住宅建築を手掛けている地元業者。
商談のスタートは専任の営業マンとなり、大手ハウスメーカーと体制はほぼ同じ。商談が進んでいくと、建築士資格を持つ設計担当者がプランを作成し、契約後にインテリアコーディネーターとの打合せに進む。工事担当の現場監督は、契約時か地鎮祭の時などに初めて紹介されるか、顔を知らないまま現場が進行するケースも少なくない。施主よりも職人たちのほうが仲間であり、守る存在になってしまう。社長は、自動車販売などの異業種からも含め「営業畑」の独立が多く、1軒あたりの受注額が大きいから住宅事業で自分の営業力を試そうという人も少なくない。従って建築技術の知識は乏しく、家づくりに対する強い想いや建物への愛情、住宅供給者としての責任感よりも、ライバル他社との競争や売上げ確保、受注棟数の拡大が事業目的になっているケースのほうが多い。
営業マンが実際に住んでいる家について本人から話を聞き、契約を進めるのであれば先に社長とも会って、なぜ住宅事業を手掛けているのか、その思想などを聞いてから判断したほうがいい。逆に営業部長や営業マンなどの営業部門任せにし、営業会議で数字ばかり追っている社長も少なくないので、見分けたうえで会社を選びたい。社長の器以上の家は建たない。
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工務店(建築士事務所登録)
新築を中心とした住宅建設を手掛ける施工会社。年間数棟から20棟程度の注文住宅と、リフォーム事業を手掛け、建設業許可だけでなく『二級建築士事務所』などの設計事務所の免許も取得して、元請けで一般消費者の住宅建築を担っている。事務所には社名入りのトラックが停まっていて、資材や道具などを積み、現場中心に会社が回っている。
自社の建物性能を体験してもらうために、実験棟のようなモデルハウスを建築しているケースもあるが、概ねカタログや規格商品といったものはなく、地域密着による紹介受注が中心。今ではホームページを充実させネットからの相談が増えている会社もあるが、会社規模から意匠設計まで出来る設計者を抱える余裕はなく、デザイン性を重視する外観やおしゃれなインテリアなどは不得意。
断熱性能や構造材へのこだわりなど、技術面での特長を全面に出しがちで、説明も専門的なので一般の消費者にはとっつきにくい。事業の比重は、信頼して契約してもらった施主の工事現場や実施図面作成等が大きいため、土地探しの段階や無料のプラン提示を何度も求めるお客さんには対応が疎遠になりがち。
私が運営する『住宅CMサービス広島』のような、エージェント利用や、家づくりカウンターなどのマッチングサービスを利用して、相性や施工内容、こだわり部分などを確かめれば、不安やデメリットは逆に「魅力」になり得る業態。こだわりが強いほど、価格が高くなるから、やはり個人での折衝は厳しいだろう。個性の強い社長が多い。
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工務店(大工工務店)
ゼネコンやハウスメーカーの大工工事を下請けでしながら、近所のリフォームなども請け負う家族経営の小さな工務店。職人の手配が主な仕事なので、事務所に出入りするのも職人や作業員、不動産会社の営業マンなどがほとんど。「友達の親が工務店を経営している」とか「知り合いの旦那が大工なので安くできる」といった紹介で新築を依頼すると、トラブルや失敗が多い。
新しい法律や出始めたばかりの施工技術・新素材を学ぶことは消極的で、指示されたこと以上の仕事は期待できないため、設計が伴わない大規模修繕工事やリフォーム工事などの依頼先として考えておけばコスパが高い。大手ハウスメーカーの長期保証で高いお金を負担するのであれば、外壁塗装等も含めこのような地元の職人集団、専門工事会社を押さえておいたほうが経済合理性がある。
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設計事務所(分離発注等)
ネットで探しやすくなったとは言うものの、個人が設計事務所の事務所を訪ねるのは敷居が高く、個人住宅の設計だけでは食べていけない設計者・建築事務所が多いため、施工に関与する設計事務所も増えてきた。
数百万円の設計料を負担できる施主は、設計者を「先生」として信頼し、施工者選びも先生に任せるケースが多い。そのため建設業許可のない設計事務所が表面的に工事の請負契約を結び、工事中のトラブルがキッカケで法令違反や施工知識の不足が表面化するケースが増えている。
また凝った設計をした結果、予算が大幅にオーバーすることも多く、途中解約すると多大な違約金で建築プロジェクトが行き詰るため、分離発注を勧められるケースは注意が必要。複数の専門工事業者に相見積を行い、価格の安い業者に分離発注して設計者が全体のコーディネートする場合、設計料にプラスしてコーディネート料負担も発生する。その金額は建設業許可を持って元請け施工している工務店利益を上回るケースもあり、最初から元請けで設計事務所登録もしている工務店に頼んだほうが安心出来てコスパも高いということにも。
設計事務所は、本業のデザインセンスへの期待と現場の品質監理のみに特化して依頼したい。
Next:工務店の選び方-4 価格帯で選ぶ
価格帯で選ぶ
注文住宅は、立地条件も希望される床面積の広さも、使われる素材も、それぞれ施主によって異なります。だから前もってどのくらいの金額が掛かるのか知ることは容易ではありません。既製品の犬小屋を買うのであれば価格は分かっても、大切な家族である犬の住まいをDIYで作ってあげようと、工具から揃えるとしたら、例えホームセンターで買うとしても、必要な工具や部材をリストアップし、数量等をはじいてみなければ、価格の見当がつきません。それ以上に、住宅の価格は選択肢も揺れ幅も大きく、さらに見積をブラックボックス化している会社もあるのが注文住宅の値段です。
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ローコスト住宅(坪20万円台~40万円台前半)
福岡県筑後市からスタートして十数年で東証一部上場したタマホームは、ローコスト住宅を売り物にして急成長した工務店。元は筑後興産という土木建設会社(地元中堅ゼネコン)の専務が子会社として始めた住宅事業です。当時も『アイフルホーム』や『ユニバーサルホーム』といった坪29.8千円のローコスト住宅のフランチャイズ店があり、「アキュラシステム」というボランタリーチェーンも坪20万円台のローコスト住宅の建築ノウハウや販売方法を教えていました。
実際には以下のようなカラクリで表面的に坪単価を安く見せるのが主流です。(数組の契約解除のサポートをし見積書・契約書を確認)
① メーターモジュールによる床面積の増加(坪単価計算の母数が増える)
② 外壁に囲まれた室内の「延べ床面積」ではなく、バルコニー・ポーチなども含めた「施工床面積」を採用(同上)
③ あくまでも「建築本体工事」で、付帯工事やオプション工事、別途工事は割高
④ 40坪以上であれば、人気のオプション工事が標準仕様になるなど、床面積が小さくならない巧妙なインセンティブ
⑤ プランが固まる前に「取りあえず契約」を結び、解約は10万円の実費のみと、解約保証の安心感で効率営業価格体系の分かりやすさと安さ、そして解約がしやすく設備関係のグレードが高いから、建築知識が少なく経験の浅い営業マンでも効率よく受注が出来、その営業効率の高さも価格の安さに反映しています。逆に言えば大手ハウスメーカーが高い理由も分かりますね♪
建築現場は「コスト優先」で品質に対して細かいことは言わないから、実際に工事を担当する業者によるばらつきが多く、現場監督は担当現場が多いので工事品質はおざなり。現場監督のレベルなどにより、良質な協力業者から去っていくことが多いと聞きます。
ローコスト住宅メーカーと契約したお客さんが持っていたチラシに『高気密高断熱 大安心の家』で契約し、チラシや仕様書などで「全室ペアガラス採用(ただし居室のみ)」と確認。実際には洗面所や浴室はシングルガラスという事例もあり。仕様や資金計画表等プロに見てもらうことを勧めます。 -
こだわりなし一般住宅(坪50万円前後)
建築基準法や公庫基準をクリアした次世代省エネ住宅レベルの一般的な住宅。
『乾式工法』と呼ばれる新建材を多用して、カタログから部材を選ぶ比率が高くなる。例えば外壁は『窯業系サイディング』にコーキング目地、屋根は『カラーベストコロニアル』などの薄くて軽い屋根材、開口部は『アルミ樹脂複合サッシ』で、内装は床が『複合フローリング』や『長尺シート』に壁はビニールクロス貼り。断熱材は、ロックウールやグラスウールなどの『繊維系断熱材』を採用というパターンで、ほぼ大手ハウスメーカー並みの住宅が手に入ります。新建材は、種類が豊富で新築時の製品の安定性が高く、職人の技術による仕上がりの差が出にくいので、こだわりが少ない人には十分。工務店側が他社との差別化のために、一部の新建材を無垢材や左官材料などの『湿式工法』を採用したり、施主の希望で瓦屋根にするなど、多少のグレードアップは含まれます。しかし経年劣化により、次第に新築時の質感が失われやすく、早めのメンテナンスが欠かせません。
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こだわりの注文住宅(坪60万円台)
長期優良住宅(地域型住宅ブランド化事業等)や低炭素住宅、ZEH(ゼロエネルギー・ハウス)などの先導的性能を担保しながら、空間の自由度も実現させる住宅。木造住宅ながら、構造計算や熱損失計算、建物の燃費の算出や気密測定など、建物の性能を「数値化」して、性能だけでみれば大手ハウスメーカーを上回るレベルの施工技術力、住宅を建築する施工者が取組んでいます。
『基礎断熱』に床の仕上げは『無垢材』として、床からの寒さを抑え、開口部も『樹脂サッシ』で断熱材も現場発泡ウレタンやセルロースファイバー、羊毛など多様な素材で厚みを増し、室内の温度さの少ない環境が実現可能となります。換気システムも熱交換型の第一種換気システムを採用し、エネルギーロスが少なく光熱費負担を抑えられるため、太陽光発電を搭載するだけでエネルギー収支はプラスになるレベルです。
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こだわりのフルオーダー住宅(坪70万円~)
高い性能や間取りの自由度だけでなく、さらに使われる素材や仕上げへの施主のこだわりを実現させようと思ったら、さらに建築費が膨らみます。例えば外壁をレンガ積みにするとか、数寄屋造りのような真壁で柱が見える漆喰塗の和風の家に住みたいとか・・・。大きな吹抜けのある家も、床面積で計算するよりも空間自体のボリュームは大きく、構造材も仕上げ面積も数量が増えるため、坪単価は高くなります。
このランクになると、照明や家具もお引き渡し後に自分で量販店から買って設置するよりも、空間にあう形での「オーダー家具」(作り付け家具)や「建築化照明」といったインテリアと一体化するような照明計画が進められます。キッチンもアイランド型やペニンシュラ型などのオーダーキッチンや輸入キッチンなど、さらに設備も自由度が高まります。
また自然災害の増加や地球温暖化といった問題もあり、新築時に通常の「耐震」だけではなく、減災のために『制振装置』や『免震ゴム』などを付けるケースや、屋根にソーラー発電を搭載したり集熱パネルを設置して、太陽の熱を基礎に蓄えるといった『自然エネルギー利用』も増えてきました。さらに壁体内の充填断熱(内断熱)だけでなく付加断熱(外張り断熱)で断熱材の厚みを増し、木製サッシにトリプルガラスを採用するなど、ドイツ基準の『パッシブハウス』や米国基準の『LEEDプラチナ』レベルの超断熱性能を目指す投資を考える人たちも、工務店を詳しく調べて実績や能力を確かめています。
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大手メーカーの坪単価は?
工務店に依頼する上記のようなフルオーダーの家は、かなりの予算的余裕が必要です。
実際に住宅業界のシンクタンクが調べたところ、坪100万円以上の高額な超高級住宅のほとんどが、大手ハウスメーカーや設計事務所ではなく、腕のいい老舗の工務店が建築しているというデータがあるそうです。坪300万円以下の仕事はしない、数寄屋や茶室づくりの依頼が多い棟梁など、社寺仏閣や文化財を取り扱うレベルの職人さんたちも、数は減ったとはいえニーズは続いているのです。では、実際に展示場を持つ大手ハウスメーカーに注文住宅を頼むと、どのくらいの費用が掛かり坪単価になるのか、やはり住宅業界のシンクタンク『住宅産業新聞社』のデータを日経BP社が公表していましたので、参考にご紹介しておきましょう。2010年のデータと2015年のデータを比較できるようにしています。年間数千棟から1万棟超えする建築着工している各社の「平均値」の価格です。
Next:工務店の選び方-5 実績で選ぶ
実績で選ぶ
工務店選びの最後は『実績で選ぶ』です。
大手ハウスメーカーの場合は、各都道府県内での施工実績が重要だと書きました。しかし工務店の場合は、もっと狭いエリアでの商圏で活動していて、大半が年間施工棟数20棟以下なので、判断材料として以下整理してみました。逆にいえば地域で50棟以上の会社は建売業者か、ハウスメーカーと同じような「営業主体」の会社となり、間取りや仕様の自由度は失われがちです。
- 業歴(会社設立時期や住宅事業をスタートして以降の累積棟数)
- 営業エリア(狭いほど地域密着型で、お引き渡し後の評判も近所から聞ける)
- 売上比率(個人向け新築住宅の売上に占める割合とリフォーム件数)
- 推奨モデルの採用率(自社の特長としてPRしている工法や仕様の実際の採用率)
- 紹介受注率(工事をしたお客さんや協力会社などからの評判で紹介される割合)
業歴
長い歴史を持つ会社では、明治創業の工務店もありますが、長ければいいという訳ではありません。
また業歴が短い会社も悪い訳ではありませんが、協力業者の対応やアフターに関する経験値などが豊富かどうかは重要な要素です。代表者が技術者として他の中堅企業で働き、自ら高い志を持って創業したというケースでは、前職での実績や大切にしてきたことなどが分かれば納得できるでしょう。
戸建住宅の事業は比較的新しいという老舗企業もあるので、実際に新築住宅を始めてからの推移やこれまでの累積棟数などを確認すれば、その会社の実態が概ね把握できるのではないでしょうか?お引き渡し後も長い付き合いになるから「後継ぎがいるかどうか?」も重要な要素です。
営業エリア
実際の「住宅の価値」は、商談時に熱心だとか楽しく打合せが出来たということよりも、実際に住んだ人の評判です。その評判は、やはり『地域密着型』で入居後もちょっとしたことでも立ち寄ってくれて、無償で調整してくれることなど、親身になって対応してくれるかどうかでしょう。地域で悪い評判が立ってしまうと仕事に影響が出るから、出来るだけ営業エリアが狭く、地域でいい仕事をしている工務店を選ぶのが賢明です。
例えば、大手ハウスメーカーやゼネコンの下請けをやっている工務店は、元請け会社の指示によって、遠方でも出かけて仕事をしてきます。広域で対応しますが、それは「確実に仕事が発生した後の現場対応」で、移動に掛かる時間や燃料代・高速代などは工事代金に含まれて発注されます。
一方、どこで建てるか工務店や住宅会社探しをしている人は、本社がどこにあるかはあまり意識はしていません。プランの依頼も敷地の調査や見積作成、その後の打合せまで、お金を負担することなく、数回は無料サービスで対応してもらうことがほとんど。それは地域密着型工務店でも変わりはありません。
また実際に工事の請負契約をし、工事中の現場管理からお引き渡し後のメンテナンスまで、相当の回数工事現場や施主の自宅を往復することになるでしょう。優秀な工務店経営者であれば、この移動で失われる時間(機会損失)は、結果的に自社の収益だけではなく、お客さんに負担していただく工事費のUPに繋がって、地域での評判は薄まるだけだと気づきます。
本当にいい仕事が出来、地域で評判の会社は、営業エリアを広げることでプラスよりもマイナスの影響が大きいと分かっているのです。
売上比率
私が運営している『住宅CMサービス広島』では、入札に参加してもらう工務店の基礎データ(会社概要)を出してもらう中で、年間売り上げに占める戸建て新築住宅の割合とリフォームの件数で企業の実態を判断しています。
新築ばかりでリフォームが極端に少ない会社は、メンテナンスやアフターフォローが疎かになっている可能性がありますし、ビル工事や公共事業の売上比率が高い会社は、社内の一線級の設計者や現場監督は大型物件を担当し、住宅事業は窓際になったベテラン社員で、古い知識やセンスしか持ち合わせてないといったリスクが少なくありません。売上げ的には新築戸建て(注文住宅)が6割以上の比率で、工事件数では圧倒的にリフォーム件数が多いという工務店が、評判が高く顧客満足度の高い会社だと予想されます。
出来れば直近の3年間のおおよその推移も把握したいですね!
推奨モデルの採用率
社長が熱心に『高気密高断熱』の家を勧めるのに、社長の自宅は昔ながらの古民家で、隙間だらけのスカスカの家だったら説得力はありません。同様に、頑丈な構造を誇るモデルハウスを建設し、お客さんに熱心に勧めていても、実際にその仕様・構法を選ぶ人が少なければ、価格が高過ぎるとか信頼性に疑問が残るなど、どこかにデメリットが隠されている可能性が高いでしょう。
新しい工法やシステムに飛びつき、多額なお金を払ってフランチャイズ加盟や特許工法を自慢する工務店社長は少なくありません。それは「このエリアで当社以外の会社はこの工法は使えない」という『排他的』で『差別化』出来ることが目的です。つまりその分コストUPは確実ですが、実際に社長や社員が、少なからぬコスト負担をして、その家に住んで快適だったとか信頼できると「体験した結果」かどうかが問題です。
採用率が高い工法は、自分たちが「実験台」になることなく、すでに快適に暮らしている人たちがいて、課題があれば解決している可能性が高いということです。そのあたりも確かめたうえで推奨する仕様や工法を採用し、会社選びをすることが肝要です。
紹介受注率
「業歴」にも書いた通り、工務店の評価は過去に建てたご家族の満足度の高さ、評判です。
ビジネスライクな国アメリカでも、工務店の評価は『レピュテーション』つまりAmazonなどで表示されている「星の数」と同じく地元での評判が高く、紹介受注が6割以上あるかどうかが人気の工務店のバロメーターだと言われます。
紹介受注率だけでなく、実際にお住まいの方の自宅を見学させてもらえるか、そして協力業者さんの自宅や家族の家を一定数建てているかどうかが、いい仕事をしてチームワークのある工務店かどうかの見極めです。特に下請け工事をしている業者さんや職人さんたちは、単に仕事をもらっていてお世話になっているかどうかよりも、儲け主義ではなく顧客満足を追求している工務店の社長かどうか良く知っています。
どのようなチラシや雑誌への掲載よりも、確かな判断材料になるでしょう。
実際に、実の姉が建てた家は、入居から1年近くも手直し工事が続いたのに、その家が住宅雑誌に掲載されて、工務店に不信感を持った妹さんが、両親と住む二世帯住宅建築の相談にお越しになり、私が運営する『住宅CMサービス広島』で地元優良工務店の入札制度を利用して、自宅を建てられました。
当サービスでは、完成した時点での『お客様の声』の公開はもとより、入居後1年を経過し、実際に四季を通じて暮らし感じた声もご自宅に取材訪問して、インタビュー記事としてご紹介しています。以下のボタンをクリックしてもらうと実際にサービスを利用して暮らしてみた評判が分かります♪