初めての家づくり成功応援ブログ

住宅会社の選び方(工務店編)【若本修治の住宅取得講座-9】

前回の記事では、ハウスメーカーの選び方について書きました。
「工法」「価格」「性能」「人」そして「実績」の5つに分類して説明しています。
ご興味のある方は、復習も兼ねてお読みください。

住宅会社の選び方(ハウスメーカー編)【若本修治の住宅取得講座-8】

2018.02.10

新築を建てる時、仕事が忙しくて大手に任せたら安心だと思う人は、大手ハウスメーカーを選ばれます。外食産業で言えば『大手外食チェーン』の安心感です。ファミリーレストランや回転ずし、居酒屋チェーンに行くのと似ています。特別においしい訳ではないでしょうし、決して安い訳でもないけど、「当たりはずれ」が少なく、家族連れでも安心です。ローコスト系は「ファストフード店」と考えれば近いイメージです。

本部が開発したメニューやレシピに、セントラルキッチン。そして従業員用接客マニュアルがあり、パートやアルバイトでも戦力になるように教育システムが充実しています。広告宣伝と多店舗化、共通の看板によるブランディングによって、信頼のイメージをつくりだし、経営やオペレーションも近代化しています。しかし画一的な雰囲気により面白みが欠け、新たな発見や感動はありません。

一方で、地元の工務店との家づくりは、地域の中に数多く営業している飲食店の中から、大切な日のお祝いの席や長年お世話になった大切な人をもてなすお店探しに似ています。

工務店の選び方

Wakamoto
「工務店」と聞くと、大工さんや現場作業員を思い浮かべる人も少なくありませんが、セルフビルドを除く日本の家の99%が工務店によって建てられています。設計事務所に依頼しても、大手ハウスメーカーに頼んでも、最終的には地元の工務店・建設会社が建築現場で住宅建設を行っているのです。

工務店といっても、スーパーゼネコンの「竹中工務店」規模の会社もあるので、ここでは地域密着型の戸建住宅を中心に事業を手掛けている施工会社について書いていきます。住宅会社の種類と規模感という解説も書きましたので、これを前提に年間50棟未満の新築を手掛ける地元工務店とお考え下さい。

地元企業でも、複数の住宅展示場に出展し、年間50棟以上新築を手掛けている住宅会社は、外食産業で言えばファミリーレストランではないものの、「地元飲食チェーン」です。建築業界では「ビルダー」と呼ばれます。

テイストで選ぶ

飲食店でも、和食のお店から中華、イタリアン、フレンチ、トルコ料理など、数多くのジャンル・地域の料理が存在します。優劣ではなく、好みによって分かれます。工務店がつくる家は、大手のように他社との差別化のために特殊な部材や工法を開発するということはありません。ほぼ『軸組み工法(在来木造)』か『ツーバイフォー工法』という、どこでも調達できる部材による「標準化工法」です。飲食店オーナーの料理人と同じで、各社のテイストは工務店社長の好みに左右されるのです。

施工技術的には、このような英国風・米国東海岸テイストの建物も日本の工務店によって建築可能です。

Wakamoto
ニチハケイミューなど、外壁サイディングメーカーのカタログに載っているような『和洋折衷』の家は、概ねどの工務店でも同じようなテイストの家は建てられます。外観のデザインテイストにそれほどこだわりがないのであれば、価格重視か性能重視(快適な空気環境)、間取り重視で進めて下さい。
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Next:工務店の選び方-2 特長で選ぶ

特長で選ぶ

工務店の特長というのは、各社の「強み」を知ることです。
料理人で言えば、単に和食やフレンチといった料理の違いではなく、オーガニックにこだわるとか、世界中のスパイスを試してみるといった他店との違いです。その道のプロとして大切にしている素材や家づくりの思想を聞いてみると、規格プラン中心のハウスメーカーでは得られない、深い考察や先人の知恵を自分の家づくりにも取り入れることが出来るかも知れません。

お酒や料理のうんちくを聞くことで、食事が豊かになるのと同様、家づくりが楽しく精神的豊さを感じられます。それこそが、工務店に頼む醍醐味であり、いい会社と出会えた時の喜びです。

施主立会いでの気密測定の様子。気密は実際に計測しなければC値の確認が出来ない

Wakamoto
工務店によっては、外装材に「レンガ積み」をしてる会社や「天然の漆喰塗り」を標準にしている会社、あるいは「当社は独自のプランが特長です」という会社もありますが、価格の安さを売り物にしている会社が長らく続いているというケースはほとんどありません。

Next:工務店の選び方-3 業態で選ぶ

業態で選ぶ

工務店選びで『業態』と聞いてもピンとこないかも知れません。
住宅建築は、建設業の許可を持っていれば、1人親方の大工さんから売上げ1兆円を超える大企業まで、日本国内で数十万社の会社で建てることが可能です。大分類では『建設業』ですが、頼む先の業態によって、価格もグレードもデザインも全く変わるのが注文住宅の建築です。

身近な小売店舗(小売流通業)で考えればイメージしやすいのが「業態」です。例えばお弁当を買うのにも、ほか弁のような専門店もあれば、コンビニ弁当や食品スーパーの総菜コーナー、百貨店のデパ地下にある食料品売り場など、お店の形態規模売り方(セルフ販売か対面販売かなど)によって「客単価」も「商品グレード」も異なります。

関連記事として書いた『ハウスメーカーと工務店の違い』はこちら

家づくりも、業態の違いによって「建築単価」も違えば「商談の進め方」も、出来上がる家の「テイスト」もかなり変わってきます。親戚が工務店や建設会社を経営していたり、知人が住宅会社に勤めているからと言って、あなたが建てたい家を依頼する先として適切かどうか、以下の説明でご判断下さい。

最も確かめたいのは①その会社の主要な対象顧客は誰か?、そして②その会社の1物件あたりの顧客単価はいくらか?ということです。小売りのお店をイメージしてもその違いは接客対応から提供される商品まで違ってくることがイメージできるでしょう。

郊外の分譲地の『住宅展』に出展しているビルダー各社の新築モデル

設計事務所に依頼し予算1千万円以上オーバーしてプロジェクトがストップした施主に、設計者を外して建築工事とインテリア工事を分離発注し、求める空間を予算内に実現させた事例

Next:工務店の選び方-4 価格帯で選ぶ

価格帯で選ぶ

Wakamoto
新聞折り込みや郵便ポストに入るチラシなどを見ると、近所でも安い建売住宅の価格が目に入ります。地元なのでおおよその土地価格が想定できると、建築費は1千万円台前半か高くても1千万円台半ばだと想像されます。「注文でも2倍はしないだろう」という目安で建替えや新築を考える方は少なくありません。

注文住宅は、立地条件も希望される床面積の広さも、使われる素材も、それぞれ施主によって異なります。だから前もってどのくらいの金額が掛かるのか知ることは容易ではありません。既製品の犬小屋を買うのであれば価格は分かっても、大切な家族である犬の住まいをDIYで作ってあげようと、工具から揃えるとしたら、例えホームセンターで買うとしても、必要な工具や部材をリストアップし、数量等をはじいてみなければ、価格の見当がつきません。それ以上に、住宅の価格は選択肢も揺れ幅も大きく、さらに見積をブラックボックス化している会社もあるのが注文住宅の値段です。

アルコーブになった中庭でプライベートな庭を愉しみたいというご要望へのプラン。フルオーダーのこのような間取りは、床面積に比べて外皮面積や構造材の材積は大きく、エネルギーロス対策も必要で、坪単価は高くなる。

三井ホームと住友林業の『財閥系』メーカーは、2015年に平均坪単価が90万円を超えました。特殊な技術はほとんどないオープン化工法の2社です。

この金額は、一般に「坪単価」とされる『建築本体工事』ではなく、外部の付帯設備工事やオプション工事等を含む、実際に各メーカーと請負契約を結んだ金額の平均値です。平均なので上限はさらに高く1億円超もあるでしょうが、コストダウンしても平均値よりも1千万円以上下がることはないでしょう。この数字が、実際にローン返済していく住宅価格です。

Next:工務店の選び方-5 実績で選ぶ

実績で選ぶ

工務店選びの最後は『実績で選ぶ』です。
大手ハウスメーカーの場合は、各都道府県内での施工実績が重要だと書きました。しかし工務店の場合は、もっと狭いエリアでの商圏で活動していて、大半が年間施工棟数20棟以下なので、判断材料として以下整理してみました。逆にいえば地域で50棟以上の会社は建売業者か、ハウスメーカーと同じような「営業主体」の会社となり、間取りや仕様の自由度は失われがちです。

  1. 業歴(会社設立時期や住宅事業をスタートして以降の累積棟数)
  2. 営業エリア(狭いほど地域密着型で、お引き渡し後の評判も近所から聞ける)
  3. 売上比率(個人向け新築住宅の売上に占める割合とリフォーム件数)
  4. 推奨モデルの採用率(自社の特長としてPRしている工法や仕様の実際の採用率)
  5. 紹介受注率(工事をしたお客さんや協力会社などからの評判で紹介される割合)

Wakamoto
それぞれに関して、少し詳しく解説していきます。

業歴

長い歴史を持つ会社では、明治創業の工務店もありますが、長ければいいという訳ではありません。
また業歴が短い会社も悪い訳ではありませんが、協力業者の対応やアフターに関する経験値などが豊富かどうかは重要な要素です。代表者が技術者として他の中堅企業で働き、自ら高い志を持って創業したというケースでは、前職での実績や大切にしてきたことなどが分かれば納得できるでしょう。

戸建住宅の事業は比較的新しいという老舗企業もあるので、実際に新築住宅を始めてからの推移やこれまでの累積棟数などを確認すれば、その会社の実態が概ね把握できるのではないでしょうか?お引き渡し後も長い付き合いになるから「後継ぎがいるかどうか?」も重要な要素です。

大工さんや協力業者との関係も重要。上棟時のお昼休みの記念撮影。筆者も右端の大工さんの手前に!

営業エリア

実際の「住宅の価値」は、商談時に熱心だとか楽しく打合せが出来たということよりも、実際に住んだ人の評判です。その評判は、やはり『地域密着型』で入居後もちょっとしたことでも立ち寄ってくれて、無償で調整してくれることなど、親身になって対応してくれるかどうかでしょう。地域で悪い評判が立ってしまうと仕事に影響が出るから、出来るだけ営業エリアが狭く、地域でいい仕事をしている工務店を選ぶのが賢明です。

例えば、大手ハウスメーカーやゼネコンの下請けをやっている工務店は、元請け会社の指示によって、遠方でも出かけて仕事をしてきます。広域で対応しますが、それは「確実に仕事が発生した後の現場対応」で、移動に掛かる時間や燃料代・高速代などは工事代金に含まれて発注されます。

一方、どこで建てるか工務店や住宅会社探しをしている人は、本社がどこにあるかはあまり意識はしていません。プランの依頼も敷地の調査や見積作成、その後の打合せまで、お金を負担することなく、数回は無料サービスで対応してもらうことがほとんど。それは地域密着型工務店でも変わりはありません。

また実際に工事の請負契約をし、工事中の現場管理からお引き渡し後のメンテナンスまで、相当の回数工事現場や施主の自宅を往復することになるでしょう。優秀な工務店経営者であれば、この移動で失われる時間(機会損失)は、結果的に自社の収益だけではなく、お客さんに負担していただく工事費のUPに繋がって、地域での評判は薄まるだけだと気づきます。

本当にいい仕事が出来、地域で評判の会社は、営業エリアを広げることでプラスよりもマイナスの影響が大きいと分かっているのです。

売上比率

私が運営している『住宅CMサービス広島』では、入札に参加してもらう工務店の基礎データ(会社概要)を出してもらう中で、年間売り上げに占める戸建て新築住宅の割合とリフォームの件数で企業の実態を判断しています。

新築ばかりでリフォームが極端に少ない会社は、メンテナンスやアフターフォローが疎かになっている可能性がありますし、ビル工事や公共事業の売上比率が高い会社は、社内の一線級の設計者や現場監督は大型物件を担当し、住宅事業は窓際になったベテラン社員で、古い知識やセンスしか持ち合わせてないといったリスクが少なくありません。売上げ的には新築戸建て(注文住宅)が6割以上の比率で、工事件数では圧倒的にリフォーム件数が多いという工務店が、評判が高く顧客満足度の高い会社だと予想されます。

出来れば直近の3年間のおおよその推移も把握したいですね!

推奨モデルの採用率

社長が熱心に『高気密高断熱』の家を勧めるのに、社長の自宅は昔ながらの古民家で、隙間だらけのスカスカの家だったら説得力はありません。同様に、頑丈な構造を誇るモデルハウスを建設し、お客さんに熱心に勧めていても、実際にその仕様・構法を選ぶ人が少なければ、価格が高過ぎるとか信頼性に疑問が残るなど、どこかにデメリットが隠されている可能性が高いでしょう。

屋根で集熱して床下に暖まった空気を送る『パッシブソーラー』を採用した事例。実際に建築した事例があり、入居後の生活の様子が聞ければ採用も安心だ。

新しい工法やシステムに飛びつき、多額なお金を払ってフランチャイズ加盟特許工法を自慢する工務店社長は少なくありません。それは「このエリアで当社以外の会社はこの工法は使えない」という『排他的』で『差別化』出来ることが目的です。つまりその分コストUPは確実ですが、実際に社長や社員が、少なからぬコスト負担をして、その家に住んで快適だったとか信頼できると「体験した結果」かどうかが問題です。

採用率が高い工法は、自分たちが「実験台」になることなく、すでに快適に暮らしている人たちがいて、課題があれば解決している可能性が高いということです。そのあたりも確かめたうえで推奨する仕様や工法を採用し、会社選びをすることが肝要です。

紹介受注率

「業歴」にも書いた通り、工務店の評価は過去に建てたご家族の満足度の高さ、評判です。
ビジネスライクな国アメリカでも、工務店の評価は『レピュテーション』つまりAmazonなどで表示されている「星の数」と同じく地元での評判が高く、紹介受注が6割以上あるかどうかが人気の工務店のバロメーターだと言われます。

紹介受注率だけでなく、実際にお住まいの方の自宅を見学させてもらえるか、そして協力業者さんの自宅や家族の家を一定数建てているかどうかが、いい仕事をしてチームワークのある工務店かどうかの見極めです。特に下請け工事をしている業者さんや職人さんたちは、単に仕事をもらっていてお世話になっているかどうかよりも、儲け主義ではなく顧客満足を追求している工務店の社長かどうか良く知っています。

どのようなチラシや雑誌への掲載よりも、確かな判断材料になるでしょう。
実際に、実の姉が建てた家は、入居から1年近くも手直し工事が続いたのに、その家が住宅雑誌に掲載されて、工務店に不信感を持った妹さんが、両親と住む二世帯住宅建築の相談にお越しになり、私が運営する『住宅CMサービス広島』で地元優良工務店の入札制度を利用して、自宅を建てられました。

当サービスでは、完成した時点での『お客様の声』の公開はもとより、入居後1年を経過し、実際に四季を通じて暮らし感じた声もご自宅に取材訪問して、インタビュー記事としてご紹介しています。以下のボタンをクリックしてもらうと実際にサービスを利用して暮らしてみた評判が分かります♪