家づくりを考え始めた多くの方が、まず『住宅総合展示場』に行き、出展メーカーのモデルハウス見学から情報収集をされます。住宅雑誌やインターネット、チラシで目にした近所で開催される完成見学会や分譲住宅の内覧会でも情報を集めてみるものの、やはり多くの人たちが訪問し、複数の住宅会社の建物を一度で体験して比較できるのは、総合展示場のほうが気楽です。
雑誌やネットで資料請求すれば、自宅住所を書かなければ資料を送ってもらえないし、総合展示場であれば「個人情報だから」と自宅記載を拒否することも可能です。いくつかのハウスメーカーのモデルを見せてもらい、印象の良さそうな住宅会社だけ連絡先を教えればいいと考えるのです。しかも出展メーカーはほぼテレビCMで良く知っている大手ハウスメーカーがほとんどで、信頼できそうです。実はそこに落とし穴もあるのですが、それは最後に触れましょう♪
今回の記事では、まず住宅展示場に出展しているハウスメーカーを中心に、注文住宅を建てる場合の住宅会社の選び方を書いてみます。
目次
ハウスメーカーの選び方
ここで一口に「ハウスメーカー」といってもいくつか分類があるので、別の記事『ハウスメーカーと工務店の違い』をご紹介しておきましょう。
工法で選ぶ
ハウスメーカーの中で、工場生産比率が高く、独自の部材開発・設計により国土交通大臣の認定を得ているような住宅会社を『プレハブメーカー』と呼びます。
プレハブは「プレファブリケーション」の略語で、鉄骨系や木質パネル系などメーカーによって工場出荷時の部材にも大きな違いがあります。また特殊な工法を手掛けず、標準化された『オープン工法』で構造躯体を組む木造軸組み系やツーバイフォー系のハウスメーカーなど、木造住宅を手掛ける住宅会社も増えてきました。以下主要な工法と代表的な住宅メーカーを整理してみます。
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軽量鉄骨系プレハブメーカー
肉厚3~6mm未満の比較的薄い鉄骨(鋼材)を使い、地震等の横揺れに対しては「ブレース」と呼ばれる斜め材をタスキ掛けに取り付ける。工事現場の仮設事務所や、児童数が増えすぎて設置される仮設校舎(教室)などを思い浮かべてもらえば、イメージがよく分かる。木造の筋交いと同様に、斜め材のブレースがなければ建物は揺れやすく、柱も木造在来工法並みのピッチで入っていることが多い。
「鉄」は強い材料と思いがちだが、鉄(スチール製)でできた橋や街灯など身近なものを思い浮かべてもらえば、実際には揺れ(振動が伝わり)やすく錆が生じて、火災で高温になるとグニャリと曲がって元に戻らない性質がある。各社「防錆技術」や「耐火被覆」によってマイナス面をカバーしているが、熱伝導率の高さと揺れの大きさを考えると快適性は木造にも劣る。それは、代表的メーカーのアパート入居経験者の多くはすでに経験済み。
【代表的メーカー】積水ハウス,ダイワハウス,三洋ホームズ -
軽量鉄骨ユニット系メーカー
ブレースにより横揺れを防ぐ軽量鉄骨系に比べ、太い柱と梁を溶接することで大空間をつくる「ラーメン構造」で、長方形のユニットを工場で製造し、トレーラーなど大型トラックで現場まで運ぶ工法。コンテナを積むイメージで考えると分かりやすい。昔の「田の字型」の日本家屋と同じで、一定の柱ピッチで襖や障子を開け放てる「大空間」は確保できるものの、間取りはパターン化しやすい。
基礎を見ると鉄骨ユニットが設置されるコーナー部分が独立基礎となっていて、どこに柱が来るのか一目瞭然。やはり鉄骨は『ヒートブリッヂ』となって外気温と室内の温度差が大きい季節には、壁内部が露点温度になりやすい。壁体内に湿気が進入しないような「ベーパーバリア(防湿層)」の施工が甘いと、鉄骨に結露が生じ、繊維系断熱材であれば水分を含んで垂れ落ち、断熱効果がさらに失われるという悪循環になりやすい。
あったかさを売り物にしているメーカーもあるが、木造のほうがコストを掛けずにより断熱性能を高めやすい。
【代表的メーカー】トヨタホーム,セキスイハイム,パナホーム -
重量鉄骨系メーカー
肉厚6mm以上の鋼材で構造躯体を組む住宅。
必ずしもユニットではないため、比較的柱の配置は自由で間取りの自由度も高い。柱と梁をボルト接続する『ラーメン構造』で、基本的に柱と梁だけで荷重を負担する。マンションやビルほどの柱の太さはないものの、戸建て住宅としては柱が太いため、相対的に室内が狭くなり、施工性も含めて狭小地には向かない。また、重量も木造や軽量鉄骨に比べて重いため、躯体を支えるための基礎も大きくなって、建物自体の荷重はかなり大きくなる。その分必要な「地耐力」も大きくなって、軟弱地盤や盛り土など十分な地盤強度が得られない立地では、地盤改良工事が他の工法よりも大掛かりとなり、見積時よりもコストアップに繋がる可能性が高い。
さらに熱伝導の大きな鉄の使用割合が多いため、外壁には100mm以上のALC(軽量気泡コンクリート)を張って熱損失を低減させなければ、夏暑く冬寒い住宅になってしまう。外壁の厚み分も敷地に余裕がなくなる要因になり、持ち出しのバルコニーがある場合はより構造躯体に熱が伝わりやすくなる。法定耐用年数は長い。
【代表的メーカー】旭化成ヘーベルハウス ※パナホームや積水ハウスなども一部商品ラインナップあり -
在来木造系メーカー
いわゆる『木造軸組み工法』と呼ばれる在来工法の家を建てるメーカー。
一般の材木屋に流通している柱や梁を使い、大工さんたちが組み立てる住宅。横揺れに対しては、斜め材の「筋交い」や面材の「構造用合板」等を使い、構造材に「集成材」や「LVL」といった従来の無垢材の欠点を補う材料も増えている。接合部は金物工法を使用するなど、耐震性は向上しているものの、二階建て住宅では「4号建築物」という構造計算までしなくていい特例がある。費用負担をしても、構造計算と住宅性能評価制度の「構造等級」は明示してもらうことを勧めたい。構造等級は2または3(建築基準法の1.25倍~1.5倍の強度)として、耐火性能も『省令準耐火』以上の指定をしたい。
木造は耐震性能や耐火性能が低いイメージがあるものの、性能表示制度に基づく等級をクリアすれば、同じ等級の鉄骨プレハブ住宅と性能は変わらない。断熱性能は高めやすい。
【代表的メーカー】住友林業,一条工務店,東日本ハウス,アキュラホーム,タマホーム,積水シャーウッド -
枠組み壁工法系メーカー
輸入住宅系の『2×4(ツーバイフォー)工法』および『木質パネル工法』のメーカー。
「モノコック構造」と呼ばれる建物の外殻全体で横揺れなどの地震力を分散する家。軸組み工法が骨組みの強さで力に耐える「フレーム構造」に対して、外側の殻全体の強度で耐えることで、外部からの力が接合部に集中しないため、ねじれに強い。「モノコック構造」は、安全性と軽量化を重視する自動車などでも数多く採用されている。基本的に『プラットホーム工法』として、1階の床をつくって1階壁パネルを起こし、2階の床をステージのようにつくってから2階の壁をつくる「床勝ち」なので、『ファイヤーストップ』と呼ばれる壁内部の空気を閉じ込めやすい。そのメリットは、壁体内の気密性のアップや火災の安全性の向上などが見込め、比較的安価に高い性能を得ることが可能。
しかし壁によって強度を保っているため、将来のリフォームでは壁の位置の変更が容易ではないなどの制約条件もあり、また釘の強度によって建物の変形を抑えているため、一旦変形したら歪んで元に戻らない。巨大地震でも倒壊のリスクは非常に低い。
断熱性能も壁の厚みが4インチの場合は、他の工法よりも断熱材の厚みが薄く、構造材を2インチ×6インチにするか、外張り断熱にするなどの断熱強化の工夫は必須。
【代表的ハウスメーカー】三井ホーム,スウェーデンハウス,東急ホーム,三菱地所ホーム
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コンクリート住宅
建設現場で鉄筋や型枠を組んで、生コンを流し込む『鉄筋コンクリート造(RC造)』ではなく、工場で製造されたPCコンクリートパネルをクレーンで吊り、ボルトで留めていく工法。厚みも荷重もあるため、高い耐久性・耐震性・遮音性がある。もちろんシロアリや錆なども発生しない。
一方で、重量鉄骨造の外壁に使われる『軽量気泡コンクリート(ALC)』と比較して、コンクリート密度が高く衝撃にも強いものの、蓄熱容量が大きく、夏の日射や冬の冷え込みを躯体に蓄えやすい。しっかり断熱をしないと熱を奪われてエネルギーロスが大きくなる懸念もある。壁によって荷重を支えるため、間取りの自由度は高くない。
構造躯体の火災の安全性は極めて高い。とはいえ外部開口部(サッシ)から火災が進入した場合は内装次第で室内は延焼するので、過信は禁物。
【代表的ハウスメーカー】大成パルコン,百年住宅(ウベハウスを吸収),レスコハウス
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