住宅会社の選び方(ハウスメーカー編)【若本修治の住宅取得講座-8】

スポンサーリンク




人で選ぶ

住宅取得された方のアンケートや取材記事を見ると、多くの人が「信頼できる担当者だった」と、依頼先の会社やプラン以上に「人に恵まれた」から成功したと感じています。しかし多くの場合は「初対面の営業マン」の印象とその後の数回の打合せ「自分たちの家を任せよう」と意思決定しているのです。

一目惚れの恋愛」とまでは言わないまでも、数回のデートで婚約(=工事請負契約)を申し込まれ、トントン拍子で挙式の日取り(=お引渡し日)まで決められるようなもの。恋愛結婚では、周りの人たちにも紹介し友人や親族からの助言や印象も得られます。しかし、住宅取得の場合の営業マンは『婚約請負人』のようなもので、婚約に至るまでのエスコートを完ぺきにこなし、数多くの婚約者をつくるための教育訓練を受けているといっても過言ではありません。

木製サッシも採用した高断熱の住宅。エアコン1台で暮らせる性能に6機の室外機があるのは、間取りの失敗と営業マンの営業成績にプラスになることが起因していると予想される。

つまり『結婚詐欺師』とまでは言わないものの、仕事として顧客心理を研究し、いかに効率よくエスコートできるか会社からも求められている人材が、あなたに婚約を迫ると考えて冷静に比較・判断されることを勧めます。「彼は本当に私たちを幸せにすると心から思っている人なのか?」ということです。

契約の時点では違約金を払えば逃げられます。しかし工事が着工し第三者のインスペクション(建築中の建物の詳細検査)に入ってもらって工事の精度が低く、当初の約束を履行しないとしても、この時点で出来ることは限られます。だから「信頼できそう」とか「熱心だ」という情緒や感情ではなく、人事の担当官として、採用面接するくらいのシビアさで相手を見極めて下さい。私がお勧めする人の選び方は以下の通りです。

  • 個人の経歴・職歴を把握する

営業担当者は、こちらの家族構成や勤務先、年収など、数多くの情報収集をしますが、こちらは相手の勤務先だけ。言葉の巧みさや淀みないセールストークよりも、もっと相手の担当者のことを知りましょう。最も聞きたいのは「なぜ住宅業界に就職し、今の仕事を続けているのか・・・?

どこで生まれ育って、両親や家族はどのような人なのか?どのような家に住んできたのか?
そして最終学歴で進学した時に選んだ学部や学科。就職で選んだ業界とその理由。今の会社に勤め始めての経験年数や仕事の内容、これまで家づくりをお世話した方々の家族数や入居後のお付き合いの様子まで・・・。

その担当者が、仕事で大切にしていることや過去に契約したお客様を大切にしているかどうか、そのくらいのことは聞いてみるのです。趣味や出身地などで共通の話題が見つかるかも知れませんし、逆に相手の担当者もあなたと親密な関係になれば「契約数字を上げる対象」から、このご家族には社内でも優秀な設計者と現場監督を付けてあげたいという「大切なお客様」に変わる可能性も高まります。

Wakamoto
私がサラリーマン時代の勤務先は、住宅営業マンの研修事業を行っていました。その時の教育は「家を売るな!自分を売り込め!」というもの。営業研修は『自分史づくり』からのスタートです。次第に営業マンの意識も経験の積み方も変わってきます。私も自社サイトで「若本修治のプロフィール」として自分史を公開しています。
  • 持っている公的資格を確認する

名刺には肩書や所属部署が書かれていますが、それは組織側が勝手につけたもの。
多くの住宅営業マンは『宅地建物取引士』の資格取得を会社から推奨され、住宅ローンの勉強のため『住宅ローンアドバイザー』などの資格も持っているかも知れません。しかしこれらの資格は「販売のための資格」であり、快適な住まいを提供するために学ぶ経験や知識は表していません。

出来れば『二級建築士』や『建築施工管理技士』などの、理系・技術系の資格を持った人が望ましいですね。それは、何も建築学科を卒業している必要はなく、本当にやる気があり、お客さんにいい家を引き渡したいと願う熱心な担当者は、営業担当であってもチャレンジし、合格できる資格です。

現場経験を積んで、会社から営業部門に異動するように辞令が出た人もいるでしょうし、自分の建築知識のなさでお客さんに迷惑を掛けると考え、資格学校に通った人もいるでしょう。口先だけの営業トークを磨く人よりも、やはりこのような「現場のこと、建築のことを学ぼう」という姿勢のある人を選びたいですね。

  • 自宅を建てる場合の優先順位を聞いてみる

住宅を販売しているプロが自宅を建てる時、何に注意して何を優先するのか聞いてみるのは参考になるもの。
すでに自宅を持っている人には、どこで建てたかを聞いてみると人となりが分かります。まだ賃貸に住んでいる人だったら、将来自分が勤務している会社で家を建てるかどうか聞いてみましょう。100%本心かどうかは不明ですが、その時に社内では誰に設計してもらい、現場監督や大工さんは誰を指名するか、そして家づくりの優先順位こだわりたいところなどを聞いてみると参考になると思います。

営業の担当者も「人」なので、営業成績を上げようという緊張感を解いてあげ、出来るだけお互いが共感できるよう、本人のこともしっかり聞いてあげると、いい関係が築けます。疑心暗鬼の状態や、営業マンに押し切られて気がつけば契約していた状態になると、家づくりが楽しくなくなり、つくる側も「モノ」として建築工事を扱いがちです。

Next:ハウスメーカーの選び方-5 実績で選ぶ

スポンサーリンク

ABOUTこの記事をかいた人

アバター

≪住まいづくり専門コンシェルジェ≫ 福岡大学工学部建築学科に在学中、当時の人気建築家『宮脇檀建築研究所』のオープンデスクを体験。卒業後、店舗の企画・設計・施工の中堅企業に就職し、主に首都圏の大型商業施設、駅ビル等のテナント工事にてコンストラクション・マネジメントを体験。1991年に東京から広島に移住し、住宅リフォームのFC本部、住宅営業コンサルティング会社に勤務。全国で1千社以上の工務店・ハウスメーカー・設計事務所と交流し、住宅業界の表も裏も知り尽くす。2001年に独立し、500件以上の住宅取得相談に応じ、広島にて150棟以上の見積入札・新築検査等に携わる。2006年に著書「家づくりで泣く人笑う人」を出版。 マネジメントの国家資格『中小企業診断士』を持つ、異色の住生活エージェント。