前回の記事では、ハウスメーカーの選び方について書きました。
「工法」「価格」「性能」「人」そして「実績」の5つに分類して説明しています。
ご興味のある方は、復習も兼ねてお読みください。
新築を建てる時、仕事が忙しくて大手に任せたら安心だと思う人は、大手ハウスメーカーを選ばれます。外食産業で言えば『大手外食チェーン』の安心感です。ファミリーレストランや回転ずし、居酒屋チェーンに行くのと似ています。特別においしい訳ではないでしょうし、決して安い訳でもないけど、「当たりはずれ」が少なく、家族連れでも安心です。ローコスト系は「ファストフード店」と考えれば近いイメージです。
本部が開発したメニューやレシピに、セントラルキッチン。そして従業員用接客マニュアルがあり、パートやアルバイトでも戦力になるように教育システムが充実しています。広告宣伝と多店舗化、共通の看板によるブランディングによって、信頼のイメージをつくりだし、経営やオペレーションも近代化しています。しかし画一的な雰囲気により面白みが欠け、新たな発見や感動はありません。
一方で、地元の工務店との家づくりは、地域の中に数多く営業している飲食店の中から、大切な日のお祝いの席や長年お世話になった大切な人をもてなすお店探しに似ています。
工務店の選び方
工務店といっても、スーパーゼネコンの「竹中工務店」規模の会社もあるので、ここでは地域密着型の戸建住宅を中心に事業を手掛けている施工会社について書いていきます。住宅会社の種類と規模感という解説も書きましたので、これを前提に年間50棟未満の新築を手掛ける地元工務店とお考え下さい。
地元企業でも、複数の住宅展示場に出展し、年間50棟以上新築を手掛けている住宅会社は、外食産業で言えばファミリーレストランではないものの、「地元飲食チェーン」です。建築業界では「ビルダー」と呼ばれます。
テイストで選ぶ
飲食店でも、和食のお店から中華、イタリアン、フレンチ、トルコ料理など、数多くのジャンル・地域の料理が存在します。優劣ではなく、好みによって分かれます。工務店がつくる家は、大手のように他社との差別化のために特殊な部材や工法を開発するということはありません。ほぼ『軸組み工法(在来木造)』か『ツーバイフォー工法』という、どこでも調達できる部材による「標準化工法」です。飲食店オーナーの料理人と同じで、各社のテイストは工務店社長の好みに左右されるのです。
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和風テイスト
今は、深い軒下に広縁があり、二間続きの和室で雪見障子が建てつけられているような家はほとんどなくなりました。静岡の菊池建設などのように数寄屋の家を手掛ける住宅会社も残っていますが、坪100万円は下回らないでしょう。しかし既存の住宅地での建て替えで、周りの雰囲気を壊さないよう、和風テイストの家にしたいというニーズは残っています。
外観イメージだけでなく、使われる素材も天然素材が多用され、室内も柱が見える『真壁』となるので、構造材の接合部が見える処理も技術が必要です。昔ながらの「手刻み加工」で棟梁が加工した仕口・継手が美しく、プレカットでは味わえない感動を上棟時に体験することも喜びでしょう。
昔の徒弟制度を経験したベテランの大工さんでなければ、このような家づくりは難しいでしょうから、工務店選びというよりは「大工選び」に近い、いい職人探しを工務店側に依頼します。
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洋風テイスト
今の日本の家は、広い意味では「洋風化」が進んでいますが、海外の人たちから見れば『無国籍』的な住宅が多く、和洋折衷の住宅がほとんどです。明治から大正時代に掛けては、英国人のジョサイヤ・コンドルや米国人のウィリアム・ヴォーリスなど、お雇い外国人建築家による設計や、その日本人の弟子たちが「洋館」を手掛けました。
西洋の様式美を忠実に真似た住宅だったので、華族や士族・成功した事業家などの邸宅として建てられ、現存するものは今では「重要文化財」的な扱いを受けますが、欧米では80~100年前の建物も、普通に取引されています。
どうしても日本では「○○風」といったテイストになりますが、それは土地の形状や近隣の街並みとの調和などから、致し方ない面があるかも知れません。出来るだけ周辺の街並みや環境に影響を受けない立地を選ぶことが、イメージ通りの家をつくる最初の条件になるでしょう。業者選びは、間取りも含めてかなりの設計力や経験値が必要で、施工例を見せてもらうのがスタートです。
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現代和風
和瓦が載って、ずっしりと重量感のある古臭いイメージのする和風ではなく、すっきりとスマートなイメージの和風を好む方も増えてきました。「地元の木」を使い、太陽や風などの自然をじょうずに取り入れて建てる「パッシブデザイン」の和の住まいです。
最近では『デザインビルド』と呼ばれるデザイン重視、社内にデザイナーを抱える工務店も増えており、外部パートナーとして設計事務所とコラボする工務店など、若い人たちのデザインニーズに応える施工会社を選びたいですね。
外部に木を使うと、新築時の印象はいいものの、湿度が高く雨の多い日本では、住み続けていくと経年劣化が激しく、5年も経てば傷みが目立つようになってきます。工務店側も「他社との差別化」目的で、外部に木を使いデザイン重視で家を建てる傾向が高いのがこの「デザインビルド」なので、見積比較や価格交渉は難しいでしょう。新築時も入居後も資金的余裕がなければ、最初に思い描いていたライフスタイルで住み続けるのは大変かも知れません。
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コンテンポラリースタイル
従来の住宅は、屋根の頭頂部に「棟」があり、建物中央の棟から左右に屋根勾配がついた家がほとんどでした。三角屋根の家が、雨や雪を屋根に留めることなく雨どいを通じて雨水をスムーズに放流し、小屋裏の換気も自然の力だけで十分に行われる設計が可能でした。
最近は、三角の形状の屋根が好きではないという方も増えてきました。建築家がデザインした「箱のような家」が住宅雑誌やライフスタイル雑誌で紹介され、モデルハウスでも採用され始めたのです。実際にはビル建築物のように屋上がある訳ではなく、緩い勾配の「片流れ屋根」が多く、屋根形状を見せないためにパラペットと呼ばれる「立ち上がり部分」をつくることが大半です。店舗併用住宅の看板部分と同じです。
軒の出や庇(霧よけ)がない家が大半なので、外壁の汚れ対策は必須です。シャープに見せるためのディティールを失敗すると、整形手術に失敗した「バランスの悪い崩れ顔」になるリスクがあるので、センスのあるデザイン経験豊富な会社を選別して下さい。
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