特長で選ぶ
工務店の特長というのは、各社の「強み」を知ることです。
料理人で言えば、単に和食やフレンチといった料理の違いではなく、オーガニックにこだわるとか、世界中のスパイスを試してみるといった他店との違いです。その道のプロとして大切にしている素材や家づくりの思想を聞いてみると、規格プラン中心のハウスメーカーでは得られない、深い考察や先人の知恵を自分の家づくりにも取り入れることが出来るかも知れません。
お酒や料理のうんちくを聞くことで、食事が豊かになるのと同様、家づくりが楽しく精神的豊さを感じられます。それこそが、工務店に頼む醍醐味であり、いい会社と出会えた時の喜びです。
-
自然素材中心の家
大手ハウスメーカーは「安定供給出来ない材料」や「品質のばらつきがある部材」を嫌います。大量に発注しても、価格の変動が少なく量産効果が出て、手入れが簡単な『JIS規格の工業製品』が好まれるのです。
注文住宅で、個性を望む施主、アトピーなどの疾患に悩む人たちは、画一的で冷たい感じのする工業製品よりも、流通量は少なくても自分たちのニーズに合致した素材が見つかれば採用を検討してみたいもの。例えば「無添加の漆喰」や「植物由来のオイル塗装」「鉱物由来の内装材」など。
内壁の下地材となるプラスターボード(石膏ボード)も、解体時に建設廃材になるからと、解体後に「土に還る素材」しか使わないという会社もあります。またビニールクロスも燃えると有機ガスが発生するからと、折り機で編んだ「紙布」や「和紙」を貼る会社や、ドライウォールに水性塗料を塗る会社など、各社のこだわりは多岐にわたります。
-
大架構の家
車いじりが好きで、1階に2台分のガレージを設けたいとか、広いリビングで柱のない空間を確保したいなど、5mを超える柱間の住宅を希望される方もいらっしゃいます。一般の方は建築に対する十分な知識がないため、住宅展示場に行くと「重量鉄骨でなければ無理ですね・・・」といった話となり、地元の建設会社・工務店も「S造(鉄骨造)」を前提に計画を進めがちです。
しかし今や木造で大規模公共建築物を建てられる時代になりました。戸建住宅でも集成材だけでなく「LVL(単板積層材)」や「CLT(直交積層材)」など大規模建築用の木質系構造用部材も増えています。構造躯体の重さにより基礎も大きくなる重量鉄骨造よりも、比重が軽くコストも抑えられて部屋の広さも確保できる木造の優位性を活かし、耐震性能の高さと間取りの自由度を強みとする工務店もあります。
パナソニックが開発した『テクノストラクチャー』やFC方式で展開している『SE構法』ほか、『KES構法』『門型フレーム』など特殊な建築金物を使って5m以上柱のない空間をつくることができる木造構法も、ネットで探してみれば数多く見つかるでしょう。
-
ゼロエネルギーの家
単に断熱性能を高め『魔法瓶のような家』という高断熱住宅から、夏至や冬至の太陽光の角度なども計算し、建物の配置計画から開口部の位置・大きさまでデザインして省エネルギー性能を高める『パッシブデザイン』に進化してきました。
断熱性能が高いだけであれば、夏の西日で暖められた部屋が夜になっても熱が溜まり、熱帯夜で寝苦しい状態が続くケースもありました。エアコンや換気だけでは天井面の表面温度は容易に下がりません。意外と光熱費が掛かって、暑さや寒さが感じられてクレームになる中途半端な高断熱住宅も少なくなかったのです。
2010年以降、低炭素住宅やトップランナー基準、そしてZEH(セロ・エネルギー・ハウス)など、従来の『次世代省エネ住宅』の基準よりも高い省エネ住宅に、国からの補助金や税制優遇なども実施されましたが、世界基準からすれば、中国や韓国にさえ後塵を拝すような断熱基準の家がまだまだ大半です。
日本よりも韓国や中国の内陸部は冬寒い地域が多いとはいえ、大手ハウスメーカーのうち世界基準の省エネ性能の家を標準的につくっている会社が数社しかないというのはお寒い状況です。断熱に熱心に取り組む工務店や設計事務所のほうが、プレハブメーカーよりもはるかに省エネルギーの住宅を建設しています。家の燃費計算をしてもらうか、UA値、C値といった断熱・気密の計算データ、測定結果を提示してもらいましょう。
Next:工務店の選び方-3 業態で選ぶ