住宅会社の選び方(工務店編)【若本修治の住宅取得講座-9】

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実績で選ぶ

工務店選びの最後は『実績で選ぶ』です。
大手ハウスメーカーの場合は、各都道府県内での施工実績が重要だと書きました。しかし工務店の場合は、もっと狭いエリアでの商圏で活動していて、大半が年間施工棟数20棟以下なので、判断材料として以下整理してみました。逆にいえば地域で50棟以上の会社は建売業者か、ハウスメーカーと同じような「営業主体」の会社となり、間取りや仕様の自由度は失われがちです。

  1. 業歴(会社設立時期や住宅事業をスタートして以降の累積棟数)
  2. 営業エリア(狭いほど地域密着型で、お引き渡し後の評判も近所から聞ける)
  3. 売上比率(個人向け新築住宅の売上に占める割合とリフォーム件数)
  4. 推奨モデルの採用率(自社の特長としてPRしている工法や仕様の実際の採用率)
  5. 紹介受注率(工事をしたお客さんや協力会社などからの評判で紹介される割合)

Wakamoto
それぞれに関して、少し詳しく解説していきます。

業歴

長い歴史を持つ会社では、明治創業の工務店もありますが、長ければいいという訳ではありません。
また業歴が短い会社も悪い訳ではありませんが、協力業者の対応やアフターに関する経験値などが豊富かどうかは重要な要素です。代表者が技術者として他の中堅企業で働き、自ら高い志を持って創業したというケースでは、前職での実績や大切にしてきたことなどが分かれば納得できるでしょう。

戸建住宅の事業は比較的新しいという老舗企業もあるので、実際に新築住宅を始めてからの推移やこれまでの累積棟数などを確認すれば、その会社の実態が概ね把握できるのではないでしょうか?お引き渡し後も長い付き合いになるから「後継ぎがいるかどうか?」も重要な要素です。

大工さんや協力業者との関係も重要。上棟時のお昼休みの記念撮影。筆者も右端の大工さんの手前に!

営業エリア

実際の「住宅の価値」は、商談時に熱心だとか楽しく打合せが出来たということよりも、実際に住んだ人の評判です。その評判は、やはり『地域密着型』で入居後もちょっとしたことでも立ち寄ってくれて、無償で調整してくれることなど、親身になって対応してくれるかどうかでしょう。地域で悪い評判が立ってしまうと仕事に影響が出るから、出来るだけ営業エリアが狭く、地域でいい仕事をしている工務店を選ぶのが賢明です。

例えば、大手ハウスメーカーやゼネコンの下請けをやっている工務店は、元請け会社の指示によって、遠方でも出かけて仕事をしてきます。広域で対応しますが、それは「確実に仕事が発生した後の現場対応」で、移動に掛かる時間や燃料代・高速代などは工事代金に含まれて発注されます。

一方、どこで建てるか工務店や住宅会社探しをしている人は、本社がどこにあるかはあまり意識はしていません。プランの依頼も敷地の調査や見積作成、その後の打合せまで、お金を負担することなく、数回は無料サービスで対応してもらうことがほとんど。それは地域密着型工務店でも変わりはありません。

また実際に工事の請負契約をし、工事中の現場管理からお引き渡し後のメンテナンスまで、相当の回数工事現場や施主の自宅を往復することになるでしょう。優秀な工務店経営者であれば、この移動で失われる時間(機会損失)は、結果的に自社の収益だけではなく、お客さんに負担していただく工事費のUPに繋がって、地域での評判は薄まるだけだと気づきます。

本当にいい仕事が出来、地域で評判の会社は、営業エリアを広げることでプラスよりもマイナスの影響が大きいと分かっているのです。

売上比率

私が運営している『住宅CMサービス広島』では、入札に参加してもらう工務店の基礎データ(会社概要)を出してもらう中で、年間売り上げに占める戸建て新築住宅の割合とリフォームの件数で企業の実態を判断しています。

新築ばかりでリフォームが極端に少ない会社は、メンテナンスやアフターフォローが疎かになっている可能性がありますし、ビル工事や公共事業の売上比率が高い会社は、社内の一線級の設計者や現場監督は大型物件を担当し、住宅事業は窓際になったベテラン社員で、古い知識やセンスしか持ち合わせてないといったリスクが少なくありません。売上げ的には新築戸建て(注文住宅)が6割以上の比率で、工事件数では圧倒的にリフォーム件数が多いという工務店が、評判が高く顧客満足度の高い会社だと予想されます。

出来れば直近の3年間のおおよその推移も把握したいですね!

推奨モデルの採用率

社長が熱心に『高気密高断熱』の家を勧めるのに、社長の自宅は昔ながらの古民家で、隙間だらけのスカスカの家だったら説得力はありません。同様に、頑丈な構造を誇るモデルハウスを建設し、お客さんに熱心に勧めていても、実際にその仕様・構法を選ぶ人が少なければ、価格が高過ぎるとか信頼性に疑問が残るなど、どこかにデメリットが隠されている可能性が高いでしょう。

屋根で集熱して床下に暖まった空気を送る『パッシブソーラー』を採用した事例。実際に建築した事例があり、入居後の生活の様子が聞ければ採用も安心だ。

新しい工法やシステムに飛びつき、多額なお金を払ってフランチャイズ加盟特許工法を自慢する工務店社長は少なくありません。それは「このエリアで当社以外の会社はこの工法は使えない」という『排他的』で『差別化』出来ることが目的です。つまりその分コストUPは確実ですが、実際に社長や社員が、少なからぬコスト負担をして、その家に住んで快適だったとか信頼できると「体験した結果」かどうかが問題です。

採用率が高い工法は、自分たちが「実験台」になることなく、すでに快適に暮らしている人たちがいて、課題があれば解決している可能性が高いということです。そのあたりも確かめたうえで推奨する仕様や工法を採用し、会社選びをすることが肝要です。

紹介受注率

「業歴」にも書いた通り、工務店の評価は過去に建てたご家族の満足度の高さ、評判です。
ビジネスライクな国アメリカでも、工務店の評価は『レピュテーション』つまりAmazonなどで表示されている「星の数」と同じく地元での評判が高く、紹介受注が6割以上あるかどうかが人気の工務店のバロメーターだと言われます。

紹介受注率だけでなく、実際にお住まいの方の自宅を見学させてもらえるか、そして協力業者さんの自宅や家族の家を一定数建てているかどうかが、いい仕事をしてチームワークのある工務店かどうかの見極めです。特に下請け工事をしている業者さんや職人さんたちは、単に仕事をもらっていてお世話になっているかどうかよりも、儲け主義ではなく顧客満足を追求している工務店の社長かどうか良く知っています。

どのようなチラシや雑誌への掲載よりも、確かな判断材料になるでしょう。
実際に、実の姉が建てた家は、入居から1年近くも手直し工事が続いたのに、その家が住宅雑誌に掲載されて、工務店に不信感を持った妹さんが、両親と住む二世帯住宅建築の相談にお越しになり、私が運営する『住宅CMサービス広島』で地元優良工務店の入札制度を利用して、自宅を建てられました。

当サービスでは、完成した時点での『お客様の声』の公開はもとより、入居後1年を経過し、実際に四季を通じて暮らし感じた声もご自宅に取材訪問して、インタビュー記事としてご紹介しています。以下のボタンをクリックしてもらうと実際にサービスを利用して暮らしてみた評判が分かります♪

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ABOUTこの記事をかいた人

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≪住まいづくり専門コンシェルジェ≫ 福岡大学工学部建築学科に在学中、当時の人気建築家『宮脇檀建築研究所』のオープンデスクを体験。卒業後、店舗の企画・設計・施工の中堅企業に就職し、主に首都圏の大型商業施設、駅ビル等のテナント工事にてコンストラクション・マネジメントを体験。1991年に東京から広島に移住し、住宅リフォームのFC本部、住宅営業コンサルティング会社に勤務。全国で1千社以上の工務店・ハウスメーカー・設計事務所と交流し、住宅業界の表も裏も知り尽くす。2001年に独立し、500件以上の住宅取得相談に応じ、広島にて150棟以上の見積入札・新築検査等に携わる。2006年に著書「家づくりで泣く人笑う人」を出版。 マネジメントの国家資格『中小企業診断士』を持つ、異色の住生活エージェント。