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価格帯で選ぶ
注文住宅は、立地条件も希望される床面積の広さも、使われる素材も、それぞれ施主によって異なります。だから前もってどのくらいの金額が掛かるのか知ることは容易ではありません。既製品の犬小屋を買うのであれば価格は分かっても、大切な家族である犬の住まいをDIYで作ってあげようと、工具から揃えるとしたら、例えホームセンターで買うとしても、必要な工具や部材をリストアップし、数量等をはじいてみなければ、価格の見当がつきません。それ以上に、住宅の価格は選択肢も揺れ幅も大きく、さらに見積をブラックボックス化している会社もあるのが注文住宅の値段です。
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ローコスト住宅(坪20万円台~40万円台前半)
福岡県筑後市からスタートして十数年で東証一部上場したタマホームは、ローコスト住宅を売り物にして急成長した工務店。元は筑後興産という土木建設会社(地元中堅ゼネコン)の専務が子会社として始めた住宅事業です。当時も『アイフルホーム』や『ユニバーサルホーム』といった坪29.8千円のローコスト住宅のフランチャイズ店があり、「アキュラシステム」というボランタリーチェーンも坪20万円台のローコスト住宅の建築ノウハウや販売方法を教えていました。
実際には以下のようなカラクリで表面的に坪単価を安く見せるのが主流です。(数組の契約解除のサポートをし見積書・契約書を確認)
① メーターモジュールによる床面積の増加(坪単価計算の母数が増える)
② 外壁に囲まれた室内の「延べ床面積」ではなく、バルコニー・ポーチなども含めた「施工床面積」を採用(同上)
③ あくまでも「建築本体工事」で、付帯工事やオプション工事、別途工事は割高
④ 40坪以上であれば、人気のオプション工事が標準仕様になるなど、床面積が小さくならない巧妙なインセンティブ
⑤ プランが固まる前に「取りあえず契約」を結び、解約は10万円の実費のみと、解約保証の安心感で効率営業価格体系の分かりやすさと安さ、そして解約がしやすく設備関係のグレードが高いから、建築知識が少なく経験の浅い営業マンでも効率よく受注が出来、その営業効率の高さも価格の安さに反映しています。逆に言えば大手ハウスメーカーが高い理由も分かりますね♪
建築現場は「コスト優先」で品質に対して細かいことは言わないから、実際に工事を担当する業者によるばらつきが多く、現場監督は担当現場が多いので工事品質はおざなり。現場監督のレベルなどにより、良質な協力業者から去っていくことが多いと聞きます。
ローコスト住宅メーカーと契約したお客さんが持っていたチラシに『高気密高断熱 大安心の家』で契約し、チラシや仕様書などで「全室ペアガラス採用(ただし居室のみ)」と確認。実際には洗面所や浴室はシングルガラスという事例もあり。仕様や資金計画表等プロに見てもらうことを勧めます。 -
こだわりなし一般住宅(坪50万円前後)
建築基準法や公庫基準をクリアした次世代省エネ住宅レベルの一般的な住宅。
『乾式工法』と呼ばれる新建材を多用して、カタログから部材を選ぶ比率が高くなる。例えば外壁は『窯業系サイディング』にコーキング目地、屋根は『カラーベストコロニアル』などの薄くて軽い屋根材、開口部は『アルミ樹脂複合サッシ』で、内装は床が『複合フローリング』や『長尺シート』に壁はビニールクロス貼り。断熱材は、ロックウールやグラスウールなどの『繊維系断熱材』を採用というパターンで、ほぼ大手ハウスメーカー並みの住宅が手に入ります。新建材は、種類が豊富で新築時の製品の安定性が高く、職人の技術による仕上がりの差が出にくいので、こだわりが少ない人には十分。工務店側が他社との差別化のために、一部の新建材を無垢材や左官材料などの『湿式工法』を採用したり、施主の希望で瓦屋根にするなど、多少のグレードアップは含まれます。しかし経年劣化により、次第に新築時の質感が失われやすく、早めのメンテナンスが欠かせません。
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こだわりの注文住宅(坪60万円台)
長期優良住宅(地域型住宅ブランド化事業等)や低炭素住宅、ZEH(ゼロエネルギー・ハウス)などの先導的性能を担保しながら、空間の自由度も実現させる住宅。木造住宅ながら、構造計算や熱損失計算、建物の燃費の算出や気密測定など、建物の性能を「数値化」して、性能だけでみれば大手ハウスメーカーを上回るレベルの施工技術力、住宅を建築する施工者が取組んでいます。
『基礎断熱』に床の仕上げは『無垢材』として、床からの寒さを抑え、開口部も『樹脂サッシ』で断熱材も現場発泡ウレタンやセルロースファイバー、羊毛など多様な素材で厚みを増し、室内の温度さの少ない環境が実現可能となります。換気システムも熱交換型の第一種換気システムを採用し、エネルギーロスが少なく光熱費負担を抑えられるため、太陽光発電を搭載するだけでエネルギー収支はプラスになるレベルです。
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こだわりのフルオーダー住宅(坪70万円~)
高い性能や間取りの自由度だけでなく、さらに使われる素材や仕上げへの施主のこだわりを実現させようと思ったら、さらに建築費が膨らみます。例えば外壁をレンガ積みにするとか、数寄屋造りのような真壁で柱が見える漆喰塗の和風の家に住みたいとか・・・。大きな吹抜けのある家も、床面積で計算するよりも空間自体のボリュームは大きく、構造材も仕上げ面積も数量が増えるため、坪単価は高くなります。
このランクになると、照明や家具もお引き渡し後に自分で量販店から買って設置するよりも、空間にあう形での「オーダー家具」(作り付け家具)や「建築化照明」といったインテリアと一体化するような照明計画が進められます。キッチンもアイランド型やペニンシュラ型などのオーダーキッチンや輸入キッチンなど、さらに設備も自由度が高まります。
また自然災害の増加や地球温暖化といった問題もあり、新築時に通常の「耐震」だけではなく、減災のために『制振装置』や『免震ゴム』などを付けるケースや、屋根にソーラー発電を搭載したり集熱パネルを設置して、太陽の熱を基礎に蓄えるといった『自然エネルギー利用』も増えてきました。さらに壁体内の充填断熱(内断熱)だけでなく付加断熱(外張り断熱)で断熱材の厚みを増し、木製サッシにトリプルガラスを採用するなど、ドイツ基準の『パッシブハウス』や米国基準の『LEEDプラチナ』レベルの超断熱性能を目指す投資を考える人たちも、工務店を詳しく調べて実績や能力を確かめています。
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大手メーカーの坪単価は?
工務店に依頼する上記のようなフルオーダーの家は、かなりの予算的余裕が必要です。
実際に住宅業界のシンクタンクが調べたところ、坪100万円以上の高額な超高級住宅のほとんどが、大手ハウスメーカーや設計事務所ではなく、腕のいい老舗の工務店が建築しているというデータがあるそうです。坪300万円以下の仕事はしない、数寄屋や茶室づくりの依頼が多い棟梁など、社寺仏閣や文化財を取り扱うレベルの職人さんたちも、数は減ったとはいえニーズは続いているのです。では、実際に展示場を持つ大手ハウスメーカーに注文住宅を頼むと、どのくらいの費用が掛かり坪単価になるのか、やはり住宅業界のシンクタンク『住宅産業新聞社』のデータを日経BP社が公表していましたので、参考にご紹介しておきましょう。2010年のデータと2015年のデータを比較できるようにしています。年間数千棟から1万棟超えする建築着工している各社の「平均値」の価格です。
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