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住宅会社の選び方(ハウスメーカー編)【若本修治の住宅取得講座-8】

家づくりを考え始めた多くの方が、まず『住宅総合展示場』に行き、出展メーカーのモデルハウス見学から情報収集をされます。住宅雑誌やインターネット、チラシで目にした近所で開催される完成見学会や分譲住宅の内覧会でも情報を集めてみるものの、やはり多くの人たちが訪問し、複数の住宅会社の建物を一度で体験して比較できるのは、総合展示場のほうが気楽です。

雑誌やネットで資料請求すれば、自宅住所を書かなければ資料を送ってもらえないし、総合展示場であれば「個人情報だから」と自宅記載を拒否することも可能です。いくつかのハウスメーカーのモデルを見せてもらい、印象の良さそうな住宅会社だけ連絡先を教えればいいと考えるのです。しかも出展メーカーはほぼテレビCMで良く知っている大手ハウスメーカーがほとんどで、信頼できそうです。実はそこに落とし穴もあるのですが、それは最後に触れましょう♪

今回の記事では、まず住宅展示場に出展しているハウスメーカーを中心に、注文住宅を建てる場合の住宅会社の選び方を書いてみます。

ハウスメーカーの選び方

Wakamoto
日本の一戸建て住宅は、注文住宅の比率が高く、世界で稀にしかない『ハウスメーカー』という業態があります。住宅メーカーとかプレハブメーカーと呼ばれる場合がありますが、オーダー生産による住宅建設が一般的です。従って、どこにオーダーするかは個人の自由で、設計の自由度も価格差も大きい中でどの会社にするのか、自分たちで選ばなければスタート出来ません。

ここで一口に「ハウスメーカー」といってもいくつか分類があるので、別の記事『ハウスメーカーと工務店の違い』をご紹介しておきましょう。

注文住宅の依頼先の基礎知識とその違い【若本修治の住宅取得講座-5】

2018.02.01

工法で選ぶ

ハウスメーカーの中で、工場生産比率が高く、独自の部材開発・設計により国土交通大臣の認定を得ているような住宅会社を『プレハブメーカー』と呼びます。

プレハブは「プレファブリケーション」の略語で、鉄骨系や木質パネル系などメーカーによって工場出荷時の部材にも大きな違いがあります。また特殊な工法を手掛けず、標準化された『オープン工法』で構造躯体を組む木造軸組み系やツーバイフォー系のハウスメーカーなど、木造住宅を手掛ける住宅会社も増えてきました。以下主要な工法と代表的な住宅メーカーを整理してみます。

代表的ハウスメーカーは、商品シリーズによっては他の工法の住宅も手掛けていますが、あくまで主力商品の工法として取り上げています。また記載は順不同としています。工法の解説は、各社の開発力等で記載内容と異なる点があることはご容赦下さい。

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Next:ハウスメーカーの選び方-2 価格で選ぶ

価格で選ぶ

Wakamoto
工法がある程度分かっても、問題は実際に自分たちが負担する工事代。
ネットや実際にモデルハウスに行ってカタログをもらい価格を聞いても、坪単価の幅も大き過ぎて「自分たちの用意した敷地」では一体いくらくらいの建築費が掛かるのか、具体的にはイメージできません。

住宅展示場に行くと、販売する側の営業マンによって建築予算を導き出されます。勤務先や年収等を聞かれ、概算見積金額を出されても、それは「返済可能な最大限の住宅価格」を提示されたに過ぎないかも知れないのです。そうなると、依頼する会社や工法による違いではなく、談合における「天の声」と同じで、その金額を目指した限りなく100%に近い各社の見積が提出されるだけでしょう。

まずは、復習のために「坪単価」や「建築本体価格」について解説したページを紹介しておきます。
『注文住宅の予算把握と交渉術(1)注文住宅の建設費』

主要ハウスメーカー10社の1棟あたり平均価格と坪単価(2015年)

あなたがモデルハウスで話を聞く営業マンは、定価のないオーダーによる注文住宅で、ご要望や敷地条件によって大きく価格変動がある場合、自慢げに「当社はかなりお高いので、その予算を組むことが出来ますか?」とお客さんを選ぶようなことをするでしょうか?総合展示場でも雑誌の資料請求ページでも、自社だけでなくライバル各社が商談のチャンスを狙っているのです。

少なくとも、坪単価を伝えた途端に多くの人が去っていくより、土地を確認するなりプランだけでもつくるといった次の商談機会を残せるような価格説明を行うでしょう。しかし主要ハウスメーカーの多くは上場企業で売上や利益などの統計データは開示され、業界紙やシンクタンクなどでも各社の業績や業界全体の傾向を調査・分析しています。今回は住宅業界の出版社で各社の取材を行っている『住宅産業新聞社』のデータで、各社の実態を見ていきましょう。

平均価格の高い順で並べると、7社が3千万円超えの坪単価80万円越えが分かる。

このデータは、各社が坪単価表示している『建築本体価格』ではなく、別途工事や付帯工事なども含めて、戸建て住宅を建築する施主と交わした工事請負契約の年間総合計を、その年の総受注棟数で割った数字。つまり契約1棟あたりの平均単価で、各社の中央値です。上は平均よりも1千万円以上の契約はあるでしょうが、この平均額よりも1千万円低いケースは考えられません。面積によって価格は下がっても、平均坪単価はハウスメーカーの場合はそれほど変動の要素が少ないと思われます。

雑誌や展示場で話を聞いて、自分でざっくりと計算したよりも、かなり高いイメージを持ちませんか?
実際に2013年から日銀の総裁が交代し、デフレ脱却のために低金利政策で緩やかに経済成長しているとはいえ、私たちの財布が大きく膨らんだわけでも、デフレが解消して物価が大きく上昇したわけではありません。消費税増税によって駆け込み需要はあっても、その反動による落ち込みで物価は一部の嗜好品・高級品を除いて下落や安定しているはずです。

業界大手積水ハウスの1棟あたり平均価格の推移(2010~14年)

私たちの記憶では、2014年4月に消費税が5%から8%に上昇する直前は、駆け込み需要もあって景気はプラス状態、物価も順調に上昇しました。しかし民主党政権時代の2012年12月までは『失われた20年』と言われ、東日本大震災以前から物価は下落気味でした。恐らく公共事業の予算も縮小していたことから、建設費も上昇の兆しはなく、東日本大震災の復興や2020年東京オリンピックの決定で、建築費が上昇し始めたのは8%への消費増税のショックが収まった2015年以降でしょう。

その間の大手ハウスメーカーの建築価格の推移を、戸建て住宅No.1企業の積水ハウスの株主向けIR情報から以下抜粋しグラフ化してみました。

同社が手掛ける住宅事業の中で、個人向け一戸建ての「請負型事業」のデータ。

デフレ気味だったこの期間に、400万円近く同社の注文住宅の価格は上昇していたということです。主要10社の2015年の平均価格で積水ハウスは3,700万円ですから、消費増税ショックの不況の折でも、さらに単価を伸ばしていたのです。ちなみにこの間の請負型住宅建設部門の売上高は、2013年度の5,176億円から2014年度4,270億円、さらに2015年度は3,937億円と総額はマイナス成長なので、1棟あたりの単価を上げるのは全社を挙げて必達目標だったのでしょう。40坪の建物だとして、坪10万円もの上昇です。

これは皆さんが企業にお勤めであれば、当然の企業論理であり非難には当たりませんが、一般に価格が分からない注文住宅は「価格操作が可能」だということも示しています。たまたま予算のあるお客様に、カタログ価格よりも高い住宅のオプションを採用頂いたとか、立地条件が良く眺望が素晴らしいからつい建物が広くなって建築費が膨らんだという「特殊事例」ではありません。年間で1万棟を超える同社の戸建住宅購入者が、毎年100万円近くの価格増を知らないまま、提示される見積価格を交渉しても、前年よりもかなり割高の住宅を買ってしまったというデータです。

1社だけであれば、ブランド力と営業力のある積水ハウスだからということになるため、上記の主要10社の2010年のデータとも比較してみましょう。

主要ハウスメーカー10社の1棟あたり平均価格と坪単価(2010年)

2010年といえば東日本大震災が発生する前、長期に亘るデフレで住宅着工戸数も2009年に年間100万戸を大幅に割り込み、業界に激震が走りました。民主党政権に変わっても新築着工の先行きは見えず、耐震偽装に端を発した『構造計算厳格化』の流れに住宅業界も苦しんでいた時代です。

2015年と比較してみると、平均価格の順位が4位以降かなり変動しているのが分かります。

5年間で500万円以上の価格上昇したのは4社(太字)でほとんど横ばいは2社(赤字)

【解説】
2010年から2015年の6年間で最も平均価格が上昇したのはパナホームの724万円。坪単価でも11万6千円UPしています。上位3社も毎年100万円程度住宅単価が上がっていったことが分かります。一方で「当社は高いですよ!」という営業が出来ていた重量鉄骨のヘーベルハウス(旭化成ホームズ)が、意外にもほぼ横ばいで価格は上昇しておらず、重量鉄骨を建てられる客層が限られてきていることも予想されます。

ほぼ横ばいのトヨタホームと、わずかだけの上昇にとどまっているセキスイハイム(積水化学工業)は、営業力の弱さによって価格でしか戦えていないことが要因かもしれません。トヨタホームのグループに入ったミサワホームも昔のような勢いは感じられません。

このようなデータで各社の推移をみていくと、企業努力とか製品購入者の高い要望に応えるためのコストアップは感じられません。低金利による100万円あたりの返済額の低下や、着工棟数の落ち込みを客単価でカバーした様子が伺われ、他の輸出産業のような国際的競争のない「営業トーク」で数字を操作できる業界の実態が垣間見えるようです。

Next:ハウスメーカーの選び方-3 性能で選ぶ

性能で選ぶ

ハウスメーカー選びの中で、最初は外観のデザインやモデルハウスの印象、そして営業マンとの相性で進むケースが少なくありません。有名なメーカーなので大きな性能差はなく、どの会社を選んでもそんなに大きな失敗もしないだろうという安心感がブランド力です。車や家電がそうであるように、基本的な機能・性能には大差なく、自分のこだわりや個性とマッチするメーカーを選べば大丈夫だと思うでしょう。しかし複数の会社で話を聞き、興味を持って突っ込んで聞いていくほど、訳が分からなくなっていくのが住宅という「オーダー受注生産品」です。

営業マンとの相性や企業の知名度といった、実際にあなたがお金を負担するマイホームには全く影響を与えない「主観的・情緒的」要素ではなく、出来るだけ「客観的・冷静」に比較できる選択肢判断するための情報を集めようとすると、それぞれの工法や会社の考え方によって、同じお金を負担しても建物の性能に違いが出てくることに気づきます。営業マンは「自社の家が最高!」と洗脳されているだけで、他社の仕様や性能には無頓着、建築の知識も乏しいということが次第に分かってくるでしょう。

住宅性能評価制度

工法や価格の違いに関わらず、建物の性能を客観的に評価する指標として、国による公平な評価制度が生まれました。それが『住宅性能表示制度』と呼ばれ、国土交通省管轄による第三者評価機関によって、設計段階と施工後の二段階で建物の評価が得られます。
詳しくは業界団体の(一社)住宅性能評価・表示協会でご確認下さい。

現在以下10分野に関して評価の物差しが用意されています。

  1. 構造の安定(耐震等級・耐風等級・耐雪等級・地盤または杭の許容支持力・基礎の構造)
  2. 火災時の安全(感知警報装置・退避安全対策・脱出対策・耐火等級)
  3. 劣化の軽減(劣化対策)
  4. 維持管理更新への配慮(維持管理対策)
  5. 温熱環境(温熱環境・エネルギー消費量)
  6. 空気環境(ホルムアルデヒド対策・換気対策・室内の化学物質濃度)
  7. 光・視環境(単純開口率・方位別開口比)
  8. 音環境(透過損失等級)
  9. 高齢者等への配慮(高齢者等配慮等級)
  10. 防犯(開口部の侵入防止対策)

Wakamoto
このなかで将来簡単にリフォームできない重要な3つの分野について少し詳しくみていきましょう。
1.の構造の安定と3.劣化の軽減、5.温熱環境です。

構造の安定(耐震性能等)

地震や台風などの自然の力に対する建物の強度です。
特に地震の多い日本では『耐震等級』が重視され、「等級-1」から「等級-3」まで工法に関わりなく、国が定めた基準で建物の強さを選べます。従って木造だろうが鉄骨や鉄筋コンクリート住宅であろうが、大手のハウスメーカーでも小さな工務店でも、構造計算をして共通の物差しで等級を指定すれば、地震に対する危険性や倒壊・損傷のリスクは同じと考えて構いません。

もちろん熊本地震をみるように、建築基準法に合致し新しい耐震基準で建てられた住宅でも、倒壊した新しい建物もあれば大きな被害を免れた老朽化した建物もありました。私も震災3か月後に現地の益城町に入り、専門書等でも詳細確認しましたが、地震動の周期地盤の関係や、建物の柱や耐力壁の上下階の位置関係(専門的に「直下率」といいます)によって被害に大きな差が出ていました。

大手ハウスメーカー積水ハウスの制振装置とブレース

コストパフォーマンスや間取りの自由度を考えると、どのメーカーを選ぶにしても『耐震等級-2』で構造計算書を添付してもらえば安心でしょう。プラス火災保険で地震保険を付ければ、津波や土石流災害等の心配のない地域であれば、老後も心配なく暮らせると思います。

むしろ建物自体の倒壊や損傷よりも、震災後の生活の復旧などを考えて、単に「耐震」だけでいいのか、それとも揺れをある程度吸収する『制振』の装置を付けるか、さらに建物自体に地震の揺れを伝えないようにする『免震』まで取り入れるかは、予算との兼ね合いです。ここでは詳しくは触れませんので、ご興味があればそれぞれのキーワードで検索して下さい。

劣化の軽減(耐久性や可変性)

建物は長期に亘って使われ、風雨紫外線やシロアリなどの害虫類にもさらされるため、部材の劣化や交換などの対策が必要です。劣化に関しては工法によって材料が異なるため、それぞれの構造材に対しての基準が定められています。木造ではシロアリ対策、鉄骨造では防錆措置、コンクリート住宅ではセメントの種類や鉄筋のかぶり厚さなどです。

劣化等級は「等級-1」から「等級-3」までの3段階で、最高等級の3の場合、三世代(75~90年程度)まで長持ちするような対策が講じられているという評価が得られます。性能表示制度が出来た後に定められた『長期優良住宅』は、100年住宅とも呼ばれ、福田内閣の時代に構想されました。設計段階だけでなく、入居後のメンテナンス計画まで提出し国の承認が得られて、登録もされるので、長期優良住宅仕様として、補助金を得るのも賢い方法です。

桧の土台が少し緑がかっているのがホウ酸を塗布した印。薄緑の板状で敷き詰めているのは断熱材

上記の写真は、木造住宅の劣化対策の事例。
土台は人体に影響のない防蟻処理として『ホウ酸』を塗布し、基礎部分の換気は熱交換型の第一種換気システムで床下の温度・湿度をコントロールできるようにします。基礎換気口もなく『基礎断熱』として気密パッキンを施工しているので、シロアリが侵入する隙間もなく、侵入しても生存する環境にない状態をつくります。

維持管理や可変性も、建物寿命よりも早く傷む設備配管に関して、さや管やヘッダー配管など、交換が容易な配管工事を行っています。この写真の現場は『長期優良住宅』として国から補助金を得た注文住宅の事例です。

温熱環境(省エネルギー対策)

国の政策としての「地球温暖化対策」だけでなく、入居後に負担する光熱費の削減、四季を通じて快適な環境で暮らせる性能、そして寒さに起因する血圧で生じる病気や自宅内での事故、暑さに起因する熱中症の予防など、建物の高気密・高断熱化は、新築時で重要な要素となってきました。

大手ハウスメーカーも『エコファースト』や『世界一あったかい我が家』などと積極的にアピールしていますが、なかなか性能を体感し比較する機会が得られず、個人差もあることから、共通の物差しとして省エネ基準がつくられてきました。性能表示制度では、基準がつくられた年によって「等級-1」から「等級-4」まで4段階に分けられていますが、世界と比較して最高等級の「等級-4」でもまだ国際的には断熱性能が低いとされています。

建物からの熱損失の割合を測る指標としてUa値や、建物の気密性を測るC値といった基準もありますが、専門的なことは詳しいサイトがあるので、ここでは『建物の燃費』という考え方を説明してみたいと思います。ドイツをはじめヨーロッパではかなり普及している『エネルギーパス』という、住宅の燃費を表示する証明書を発行しています。

下の画像は、ドイツの「パッシブハウス研究所」が認定している建物の燃費を計算するソフト『燃費ナビ』で、大手ハウスメーカーの展示場モデルを計算によって比較したもの。パッシブハウスジャパンのサイトで確認することが出来ます。
パッシブハウスジャパン 建物省エネ×健康マップ

このマップを見ると、戸建てでは最大手となる積水ハウスの鉄骨モデルは、かなり断熱性能が低く、環境に与える負荷も健康に与えるリスクも相対的に大きいということが分かります。実際に省エネを謳い文句に大手ハウスメーカーが出展している住宅展示場のモデルでは、屋外の室外機の数にビックリしたのは、私だけではないようです。

エアコンの室外機が上下10台並ぶ住宅展示場のモデルハウス。エコファーストと書かれていました。

住宅展示場のモデルハウスは、「機械設備」によって暑くもなく寒さも感じない快適な環境に保たれています。しかしそれがどれだけのエアコン台数で賄われ、月額の光熱費がどのくらいになっているのか、実際に建物の外で確認し、営業マンから説明を受けることをお勧めします。まるで昔のアメリカ車に乗っているほど、燃費の悪い家を知らずに建ててしまうということのないよう、出来れば「一次エネルギー消費量」なども計算してもらいましょう。

Next:ハウスメーカーの選び方-4 人で選ぶ

人で選ぶ

住宅取得された方のアンケートや取材記事を見ると、多くの人が「信頼できる担当者だった」と、依頼先の会社やプラン以上に「人に恵まれた」から成功したと感じています。しかし多くの場合は「初対面の営業マン」の印象とその後の数回の打合せ「自分たちの家を任せよう」と意思決定しているのです。

一目惚れの恋愛」とまでは言わないまでも、数回のデートで婚約(=工事請負契約)を申し込まれ、トントン拍子で挙式の日取り(=お引渡し日)まで決められるようなもの。恋愛結婚では、周りの人たちにも紹介し友人や親族からの助言や印象も得られます。しかし、住宅取得の場合の営業マンは『婚約請負人』のようなもので、婚約に至るまでのエスコートを完ぺきにこなし、数多くの婚約者をつくるための教育訓練を受けているといっても過言ではありません。

木製サッシも採用した高断熱の住宅。エアコン1台で暮らせる性能に6機の室外機があるのは、間取りの失敗と営業マンの営業成績にプラスになることが起因していると予想される。

つまり『結婚詐欺師』とまでは言わないものの、仕事として顧客心理を研究し、いかに効率よくエスコートできるか会社からも求められている人材が、あなたに婚約を迫ると考えて冷静に比較・判断されることを勧めます。「彼は本当に私たちを幸せにすると心から思っている人なのか?」ということです。

契約の時点では違約金を払えば逃げられます。しかし工事が着工し第三者のインスペクション(建築中の建物の詳細検査)に入ってもらって工事の精度が低く、当初の約束を履行しないとしても、この時点で出来ることは限られます。だから「信頼できそう」とか「熱心だ」という情緒や感情ではなく、人事の担当官として、採用面接するくらいのシビアさで相手を見極めて下さい。私がお勧めする人の選び方は以下の通りです。

営業担当者は、こちらの家族構成や勤務先、年収など、数多くの情報収集をしますが、こちらは相手の勤務先だけ。言葉の巧みさや淀みないセールストークよりも、もっと相手の担当者のことを知りましょう。最も聞きたいのは「なぜ住宅業界に就職し、今の仕事を続けているのか・・・?

どこで生まれ育って、両親や家族はどのような人なのか?どのような家に住んできたのか?
そして最終学歴で進学した時に選んだ学部や学科。就職で選んだ業界とその理由。今の会社に勤め始めての経験年数や仕事の内容、これまで家づくりをお世話した方々の家族数や入居後のお付き合いの様子まで・・・。

その担当者が、仕事で大切にしていることや過去に契約したお客様を大切にしているかどうか、そのくらいのことは聞いてみるのです。趣味や出身地などで共通の話題が見つかるかも知れませんし、逆に相手の担当者もあなたと親密な関係になれば「契約数字を上げる対象」から、このご家族には社内でも優秀な設計者と現場監督を付けてあげたいという「大切なお客様」に変わる可能性も高まります。

Wakamoto
私がサラリーマン時代の勤務先は、住宅営業マンの研修事業を行っていました。その時の教育は「家を売るな!自分を売り込め!」というもの。営業研修は『自分史づくり』からのスタートです。次第に営業マンの意識も経験の積み方も変わってきます。私も自社サイトで「若本修治のプロフィール」として自分史を公開しています。

名刺には肩書や所属部署が書かれていますが、それは組織側が勝手につけたもの。
多くの住宅営業マンは『宅地建物取引士』の資格取得を会社から推奨され、住宅ローンの勉強のため『住宅ローンアドバイザー』などの資格も持っているかも知れません。しかしこれらの資格は「販売のための資格」であり、快適な住まいを提供するために学ぶ経験や知識は表していません。

出来れば『二級建築士』や『建築施工管理技士』などの、理系・技術系の資格を持った人が望ましいですね。それは、何も建築学科を卒業している必要はなく、本当にやる気があり、お客さんにいい家を引き渡したいと願う熱心な担当者は、営業担当であってもチャレンジし、合格できる資格です。

現場経験を積んで、会社から営業部門に異動するように辞令が出た人もいるでしょうし、自分の建築知識のなさでお客さんに迷惑を掛けると考え、資格学校に通った人もいるでしょう。口先だけの営業トークを磨く人よりも、やはりこのような「現場のこと、建築のことを学ぼう」という姿勢のある人を選びたいですね。

住宅を販売しているプロが自宅を建てる時、何に注意して何を優先するのか聞いてみるのは参考になるもの。
すでに自宅を持っている人には、どこで建てたかを聞いてみると人となりが分かります。まだ賃貸に住んでいる人だったら、将来自分が勤務している会社で家を建てるかどうか聞いてみましょう。100%本心かどうかは不明ですが、その時に社内では誰に設計してもらい、現場監督や大工さんは誰を指名するか、そして家づくりの優先順位こだわりたいところなどを聞いてみると参考になると思います。

営業の担当者も「人」なので、営業成績を上げようという緊張感を解いてあげ、出来るだけお互いが共感できるよう、本人のこともしっかり聞いてあげると、いい関係が築けます。疑心暗鬼の状態や、営業マンに押し切られて気がつけば契約していた状態になると、家づくりが楽しくなくなり、つくる側も「モノ」として建築工事を扱いがちです。

Next:ハウスメーカーの選び方-5 実績で選ぶ

実績で選ぶ

「ハウスメーカーの選び方」の最後は、やはりその地域での『実績』です。
小売流通業の大手『イトーヨーカ堂』やコンビニ大手の『セブンイレブン』などは、物流(商品配送)や地方局のテレビCM、地域での知名度などで競合に対して優位になるために『ドミナント戦略』という”集中出店”をしてきたのはビジネス界では良く知られています。逆に言えば、物流の効率が悪く知名度の低い都道府県には、出店しないという戦略です。

一般の方は、ハウスメーカーも「工場生産による”量産効果”」で、製品コストが下げられていると勘違いしている人がほとんどです。しかし事業における最大のコストは「人件費(含む社会保険料等)」であり売上が減っても負担を減らせない「オフィスや店舗の固定費」です。

県内に複数の住宅展示場に出展していたら、その費用負担は莫大です。
ドミナント戦略をとらずにどの都道府県にも進出しているとしたら、さらに地元テレビ局でのCM折り込みチラシなど、広告宣伝費も大きな負担です。自分たちの県下で年間どの程度の住宅着工をしているのか、調べてみたほうがいいでしょう。仮に100棟であれば、毎月の巨大な経費は10組を満たないお客さんが負担しているのです。

工場生産で断熱性能の高さをテレビCMで放送している住宅でも、ヒートブリッヂという現象が出ていることが分かる。道路に面した壁面で「鉄骨の柱の位置」が特定できるのはその現れ。

広島県内ハウスメーカーの着工ランキング(1~5位)

私が住んでいる広島県内で、2016年の大手ハウスメーカー上位5位の実績が、住宅産業新聞社の調査により、日経BP社から発表されていました。5位以下のメーカーの実績までは不明ですが、この実績数字を12で割れば、各社の1か月間の契約実績が予想できます。つまり一か月間に掛かっている県内すべての支店・営業所の経費は、すべてこの数字の「お客様の数」で賄っているのです。

県内で実績の多い会社は、少ない会社よりも固定費が十分賄えている分、値引き要請に対して「減額余地がある」と考えられます。また土地情報や「建築条件付き分譲地」なども下位メーカーよりも豊富でしょう。県内の支店・営業所に勤務している従業員数や、住宅展示場に出展しているモデルハウス数なども比べると実態がよく分かりますが、テレビCMを良く流している有名メーカーといっても、県内の実績とは連動しません。

5位の大東建託は、恐らくアパート数がかなり含まれている。
ランキング外に多くの有名ハウスメーカーがあり、月10棟未満の受注がほとんどだと思われる。

県内で実績が低いメーカーは、経営効率が悪く、拠点や展示場維持のために、余分な経費が見積の中に含まれている可能性があるということも判断材料にすることをお勧めします。またメーカーの『長期保証』は、一般よりも短いサイクルで、割高な有料メンテナンスをする前提で組まれていることが多いため注意が必要です。実際には半額程度でできるものも、メーカー指定の工事をしなければ「保証は解約される」という事例もあるようです。

Wakamoto
ここまで「ハウスメーカーの選び方」を解説してきました。次は、さらに数が多く選ぶのが難しい「工務店の選び方」について書いていきますね!

さいごに

この長い解説ページを最後までお読みいただいた方は、私が「大手ハウスメーカーをあまり勧めていない」ということが何となく分かったと思います。優秀な営業マンもいますが、やはり私がプロとして自宅を建築する場合に、お願いしたいハウスメーカーは皆無です。だから自分だったら「こんな方法で家づくりをする」と考案したのが2002年にスタートした『住宅CMサービス広島』です。