注文住宅の建設費把握と見積内訳【若本修治の住宅取得講座-4】

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注文住宅の予算相場など、住宅雑誌でもネット上でも数多くの情報が得られます。しかし、実際に「自分たちの希望を取り入れて、今予定している土地で家を建てようとしたら一体いくらくらいのお金の用意が必要なの?」という疑問に応えてくれる情報はほとんどありません。

私は広島地区限定で、地域の優良工務店同じプラン相見積を依頼する入札サービス『住宅CMサービス広島を運営しています。実家が土木系建設業で、入札が当たり前の環境で育ち、大学卒業後に建築分野に進んでFC本部住宅業界専門の経営コンサルを経験しました。10社以上の大手ハウスメーカーの見積をチェックし、100社を超える中小工務店の見積内容を精査して、これまでの状態では”プロでも中身を比較するのは容易ではない”と気づいたのです。

注文住宅の建設費

Wakamoto
注文住宅はオーダーメイドのため、施主が求めるグレードや細かな要望、工法や依頼先の企業規模、地域や土地の立地条件など、あらゆる要素で変化します。まずは基本的な考え方から学びましょう。

坪単価に気を付けよう

住宅雑誌やネット上でも、それぞれのハウスメーカー工務店建築費の目安として「坪単価」が表示されています。坪35万円~とか、坪55~70万円といった幅のある価格表示です。仮に床面積が35坪ほどの平均的な家でも、坪単価の幅が15万円あれば35坪×15万円=525万円もの誤差が生じます。

また坪20万円台からというローコスト系住宅会社の坪単価は、概ね「メーターモジュール」という通常よりも一回り大きい基準寸法(1m)で住宅を造るので、「尺モジュール」という一般の木造住宅の基準寸法(91cm)と比較すると、同じ間取りでも床面積が約2割大きくなるのです。少しカラクリを説明すると以下の通りです。

日本人であれば6帖の和室の広さはだいたいイメージできるでしょう。在来工法と呼ばれる従来の木造住宅は、長手方向が3.64m(=2間)で短手方向が2.73m(1.5間)です。あくまで柱の中心間の寸法ですが、面積計算すると9.9m(=3坪)となります。メーターモジュールの場合の6帖は4m×3mとなるので、12mとなって2割面積が膨らみます。長さは約1割でも面積は掛け算なので、坪単価では床面積の広いメーターモジュールは見かけ上の金額を小さく表示できるのです。

もちろんローコストに取り組むグループや会社は、部材の共通化や建材・設備の大量仕入れ工事の標準化などの「生産性向上」効果もありました。しかし、ローコスト住宅最大手のタマホームが、福岡県筑後市という熊本県や佐賀県に近い小さな町の建設会社からスタートして急成長したことを考えると、坪単価の見せ方本体工事に含まれる工事内容を、不当表示にならない範囲でじょうずに広告表現したことで、予算の少ない住宅取得希望者の問合せ数を激増させたということが分かります。

坪単価表示の基本は、凹凸のない四角い建物形状で総二階が基準です。建物形状が複雑になるほど坪単価は上昇し、平屋でも計算上の坪単価はアップします。

平屋の建築費の考え方は、別途『平屋の間取りと建築費』というページでご確認下さい。

平屋の間取りと建築費【若本修治の住宅取得講座ー10】

2018.02.21

建築本体工事の内訳

坪単価をもう少し細分化していきましょう。工事項目ごとに分けて、何から何までが「坪単価」に含まれ、何はオプション別途工事になるのか、それを把握しない限り見積内容のチェックも交渉も出来ません。

一般的に、坪単価表示されるのは『建築本体工事』と呼ばれるもの。
建築本体工事は、個人住宅では大項目から中項目で概ね以下の工事内訳となります。

  • 仮設工事
  • 土工・基礎工事
  • 躯体工事
  • 外部仕上工事(以下「中項目」)
    • 屋根工事
    • 外装工事
    • 左官工事
    • 金属・板金工事
    • 塗装工事
  • 内部仕上工事(以下「中項目」)
    • 内装下地工事
    • 各「居室別」集計
    • 内部塗装工事
    • 内部左官工事
  • 開口部・建具工事(以下「中項目」)
    • 鋼製建具工事(外部サッシ)
    • 木製建具工事(室内ドア類)
  • 建築設備工事(以下「中項目」)
    • 住宅設備機器工事
    • 給排水衛生設備工事
    • 電気設備工事
    • ガス工事
    • 冷暖房・空調工事
Wakamoto
この項目分けは、私が行っている入札サービスで採用している「共通書式」の仕訳。部位別見積と呼ばれるフォーマットです。詳しくは次の項で解説します。

少し専門的過ぎて、一般の人にはイメージ出来ないかも知れませんが、敷地の中に家が建っているとしたら、未入居の状態で”基礎から敷地を切り離して”宙に浮かした状態が、建築本体工事です。

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比較が容易な部位別見積とは

一般的な住宅建築工事の見積書は、明細書がついている場合でも「工種別」になっています。木工事塗装工事タイル工事クロス工事といった「職業別・業者別」の見積集計です。

タイル工事ひとつとっても、玄関のタイルから外壁のタイル、キッチンやトイレにもタイル工事をする場合があります。「エコカラット」というタイルメーカー(旧INAX/現LIXIL)が発売している装飾用のタイルなどもあり、最初の見積段階では、どこにいくらの単価の材料をどの範囲まで張るのか、面積も決まっておらず「タイル工事一式」という見積も少なくありません。

どの部位、どの部屋に、どのような下地でどんな仕上げをするのか、仕様表もなければ、面積も不明確発注者(=施主)が検算できない状態だったら、見積書の意味はありません。業種別で積み上げられた見積は、元請けの工務店でさえ数量が間違っているのかどうか分からない下請けからの金額に、自社の利益を付加して見積書としてまとめているだけ。その見積書を根拠に、どこをどう変更すればコストが圧縮できるか、建築知識のない発注者には皆目見当がつかないでしょう。

まだ建築を依頼されるかどうか分からない、初めて会う「一見(いちげん)の客」が一般の施主です。地価の高い中心市街地のスーパーだって、2千円以上の買い物をしなければ1時間分の駐車チケットさえもらえない世間で、千円さえ払うことなく、建築士にプランの作成をしてもらって、プロに見積をお願いして「依頼するかどうか分かりませんけど・・・」といっているのが、今の日本の家づくりであり、住宅営業の前線です。

住宅総合展示場。5年で陳腐化し売却もしないモデルに莫大な経費が投入されている。

だから、住宅展示場で数多くの来場アンケートを取り、年収の高い大手ハウスメーカーの営業マンが自宅まで「訪問販売」する経費のロスは、あなただけのプラン明細見積を作成するというさらなる作業ロスまで許容できません。せいぜい担当営業マンがプラン集の中から適当なプランを出力し『建築本体工事は○○シリーズで一式いくら♪』と、車を売るような価格しか出せない(出さない)のは当たり前です。かなり工事契約の確率が高まり、営業会議で「今月の受注予定」にランクアップされるレベルで、どうしても明細がなければ契約できないと言われて、初めて明細をつくるのが実態です。

そのような会社や営業マンは、住宅展示場の出展コスト広告宣伝費、そして営業しても契約できなかった数多くのお客さんの商談ロス分まで、あなたの見積書に経費として潜り込ませるしかありません。だから明細が出せないとも言えます。

発注者として、足し算掛け算をするだけで、面積数量を確かめられ、部屋別・部位別に検算できるような『部位別見積書』を作成して欲しいとお願いし、出来そうもない会社は最初から対象外にしたほうが賢明です。出来れば積算のため3万円でも5万円でも支払う覚悟で交渉して下さい。

付帯工事と別途工事

一般的に『坪単価』とされる建築本体工事については、上記で説明しました。未入居の状態で”基礎から敷地を切り離して”宙に浮かした家の価格でしたね。

つまり地盤改良の費用も、門扉カーポート駐車場の舗装などの外構費用も、そして道路から宅地内に引き込まれた給排水のメーターから、建物に接続させる設備配管汚水桝雨水枡などの外部の設備工事も『付帯工事』として、別の見積として計上されます。

足場が撤去され、建物が完成して内部工事に職人の出入りがなくなってから外構工事や外部設備工事が行われます。

さらに、実際に住むためにはアンテナ工事や居室の照明器具カーテンやブラインド、LDK以外の個室のエアコンなど『別途工事』が必要で、造作家具特注のキッチンなどをオーダーすると、オプション工事として工事費が膨らみます。標準仕様以外の「和室の障子」や「真壁づくり」「長押・床柱」「漆喰仕上げ」「外壁の煉瓦積み」なども多くはオプションです。

そして、役所水道局等への申請費用構造計算料のほか、施工図現場管理に掛かる会社経費などは『諸経費』として、最後に見積に計上されて、ハウスメーカーや工務店など「建築会社との工事請負契約金額」が決まるのです。最後に、お国に払う消費税も忘れてはならない大きなお金です。

工事代金に含まれないため、契約金額に計上されない「登記費用」や「契約印紙代」そして地鎮祭や上棟式などの「祭事費用」から「火災保険料」「住宅ローンの融資手数料」や「団体信用保険料」「水道負担金」など、挙げればキリがないほど、家づくりには『諸費用』も必要です。

見積依頼時の注意点

ほとんどの方は、1千万円以上するお金を使うために、自分たちの希望を伝えて見積をしてもらう経験をしたことがありません。しかも相手は、これまで見ず知らずの他人であり、自分たちの用意したお金「住宅ローン」という借金が渡るかも知れない相手です。例えTVコマーシャルを流している上場企業だろうが、先輩や友人が建てたハウスメーカーだろうが、適切な価格良心的な値段かどうか、確かめる術を持たないまま検討がスタートします。

企業の購買部門公務員で、外部企業に発注する機会がある方であれば、組織内で適正価格の基準があるでしょう。また入札相見積など、複数の企業に見積依頼をした経験があれば、比較をしたり過去データなどから、相場感も養えます。しかも継続的な発注が基本なので、お互いの信頼感と余分な経費が掛からない安心感があるのです。しかし、個人発注で一回きりの注文住宅の見積依頼には、そんな状況は一切ありません。

また公共事業の入札など、継続的に複数の業者に見積依頼する部署をイメージして下さい。「談合」の懸念があり、高値で発注しないために何をして、何をしないのか・・・。

まず、発注者側の職員政治家などが、事前に予算を伝える『天の声』を発すると、落札価格が当初予算の99.8%といった限りなく予算上限に近づきます。図面や仕様書にあいまいな点が残っていれば、すぐに「追加予算」を計上しなければ、工事が完成しないというのは、東京の豊洲新市場オリンピック会場の建設費を見ても明らかです。プロの発注者である役所の担当者でもそんな状況です。

私が運営するサービスで、複数の地元工務店から出してもらった見積書と提案書

また見積を依頼する時には、比較するために複数の会社から見積をもらいましょうと、どの情報紙やサイトでも書かれています。しかし前提条件として『見積条件を揃える』ということがなければ、実際には比較はできません。それは「同じプラン」で「求める性能」が明記されていること。仕様や工法の違いは、各社の特徴として、例えば断熱材が「繊維系」でも、「ウレタン吹付」や「セルロースファイバー」でも、求める性能をクリアしていればOKとすれば、価格以外の各社の特徴技術も垣間見れます。

それぞれプランも別床面積や建物の形状も違い、各社の標準的な仕様や性能にも差があるのに、見積を出してもらったら、それは「営業マンとの相性」とか「キャンペーンによるオプションや値引き額の大きさ」といった、建物自体の品質住み心地に全く影響を与えない「印象」でしか決められないといったことになり兼ねないのです。

少なくとも知識がないまま、複数の会社にそれぞれ無料でプランをつくらせ、相手が紹介したファイナンシャル・プランナーに資金計画を無料でつくってもらって、あなたの予算額を相手に公開することは、最初の段階では避けたほうがいいでしょう。出来れば、しっかりと勉強して条件を整え、数万円のお金を負担してでも明細見積を出してくれる会社を探しましょう。

そのような会社の探し方は、また別の項で書きたいと思います。

Wakamoto
続いては「ハウスメーカーと工務店の違い」について書いていきます。

『注文住宅の依頼先の基礎知識とその違い』

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ABOUTこの記事をかいた人

≪住まいづくり専門コンシェルジェ≫ 福岡大学工学部建築学科に在学中、当時の人気建築家『宮脇檀建築研究所』のオープンデスクを体験。卒業後、店舗の企画・設計・施工の中堅企業に就職し、主に首都圏の大型商業施設、駅ビル等のテナント工事にてコンストラクション・マネジメントを体験。1991年に東京から広島に移住し、住宅リフォームのFC本部、住宅営業コンサルティング会社に勤務。全国で1千社以上の工務店・ハウスメーカー・設計事務所と交流し、住宅業界の表も裏も知り尽くす。2001年に独立し、500件以上の住宅取得相談に応じ、広島にて150棟以上の見積入札・新築検査等に携わる。2006年に著書「家づくりで泣く人笑う人」を出版。 マネジメントの国家資格『中小企業診断士』を持つ、異色の住生活エージェント。