注文住宅を建てようとしたら、見積書を見ることなく契約金額と資金計画表だけで契約を結ぶことはまずありません。しかし現実には、これまで注文住宅の見積書がどのような形式で、どの程度の明細が書かれているのか、比較する資料も判断する材料もないのが現状です。
自分たちが返済可能な建築費を知ること、おおよその相場を掴むことももちろん大切です。
しかし、坪単価で計算された『建築本体工事』に内訳明細がなく、価格にも快適さにも大きな影響のない「オプション工事」や「付帯工事」のみ工事ごとに詳しく書かれているだけの見積書や資金計画書で、数千万円の支払い約束、数十年もの住宅ローン返済をする意志決定を迫られたら、本当にそのまま鵜呑みにしてハンコを付いてもいいのでしょうか?
今回の記事は、決して住宅会社の営業マンは語らない建築工事の見積書の内訳やチェックするポイントなどをお伝えしていきます。
注文住宅の見積書のチェックポイント
私は現在、広島都市圏にて個人が発注者となる一戸建て住宅の個人入札システム『住宅CMサービス広島』を運営しています。
実家が土木建設業で、仕事を得るために入札が当たり前の環境で育ったことと、大学の建築学科を卒業後に入社した会社で現場監督や見積作成、実行予算組などの実務を経験し、その後住宅リフォームのフランチャイズ本部で、スーパーバイザーとして加盟工務店への指導を行った経験から、住宅業界でも発注者(施主)と施工者(工務店)の間に、役所の専門部署のような見積をチェックする機能、入札制度があればお互いの時間的ロスが減り、スムーズな意思決定が出来ると考えたのです。
2002年からサービスをスタートさせ、その後全国各府県の延べ15カ所でサービスを提供しました。全国で高い潜在ニーズがあり、各地にパートナーとなる専門家と契約しましたが、運営者のスキルや経験、負担が大きく、残念ながら定着に至っていません。そこで私の15年超のサービス運営で得たノウハウを解説することで、サービスのない地域で家を建てる方のお役に立てればと思います。
一戸建住宅の入札事例
以下は平成24年12月に広島市安佐南区で実施した入札の事例です。
建物の坪数は31.4坪の木造二階建てで一部ロフトと固定階段で上がれるルーフバルコニー(屋上)のある注文住宅です。地域密着で年間20棟未満の地元工務店5社が見積入札に参加しました。
この入札事例の真ん中より少し下の行にある『建築本体工事』が、チラシやカタログなどで表示されている住宅メーカーの「工事金額」で、坪単価の根拠となるものです。1,700万円台から2,000万円まで、本体工事でも250万円程度の差があり、付帯工事や諸経費が計上されます。
あなたが住宅展示場に行って、複数の会社の営業マンと話をし、プランや見積を提示してもらったとしても、この「建築本体工事」自体が”一式いくら”という大きな数字しかなかったら、何を根拠にこの金額と内訳を判断すればいいのでしょうか?
複数の会社の金額を比較しても、高いか安いかしか判断できず、さらに「今月中に契約してもらえば、こんな特典がつきます!」といったテレビ通販のような営業トークを積まれても、数千万円負担するに足る建物かどうか、判断つきません。
内訳書を要求しよう!
上記の事例では、さらに「屋根・外部仕上工事」や「内部仕上工事」など、各工事の金額に関して、部位ごとの工事内訳をつけています。部屋ごとの工事費用も算出しているので、和室を洋室に変えたら金額がどのように変わるのかもシミュレーションが可能な見積です。
実際には、この内訳書の根拠となる見積明細書が添付され、それぞれの部材や工事に「数量」×「単価」が計算されています。その数量が間違っていないかどうか、各部屋の壁の面積や床面積、巾木の長さなど、施主自身でも小学生レベルの計算で検算することが出来るのです。
本来、発注者自身が検算できるような分かりやすい見積書を渡して、詳しく説明と同意を求めるのがプロの責務です。それだけのお金と責任を預かるから、信頼されるのです。とはいえ、これは入札実施の専門サービスを長年提供している私たちのような専門家でなければ、工務店側もこのような明細書を提示してくれて、分かりやすい比較表を作成することは困難かも知れません。
見積書は「数量」×「単価」が記載されていること、そして内訳書が添付されているかどうかで判断して下さい。決して「建築本体工事一式」しかない金額提示でキャンペーンや値引きに心動かされないことが肝要です。自分ではチェックできそうになく、広島近郊の方でしたら、私にご相談下さい。
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数千万円の注文住宅の建築見積はどうでしょう・・・。