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いつ建築業者に打診するか
私がネット上で調べると「最初に自分たちが建てたい家を実現してもらえそうな建築会社を探し、そこに土地探しも一緒にしてもらったほうがいい」という経験者のコメントが数多くありました。その対象は、大手のハウスメーカーの場合もあれば、木造系で高気密高断熱等に強い工務店や、デザインセンスのいい設計事務所など、いずれにしても「住宅建築のパートナーを先に決めましょう」という意見です。
住宅建築をどこに頼むか、どの段階で相談するかは個人の自由ですが、300組以上の住宅建築の相談対応をしてきた私の経験から、出来るだけ最後まで施主側に「選択肢」があり、自分が意思決定できる状態を確保することが賢い家づくり、後悔のない住宅取得に繋がると思います。つまり最初から1社に絞らないほうが知識が増え、失敗が減るでしょう。
先に「建築依頼先を決める」ことの是非
土地探しをしている段階から、住宅建築に詳しいプロが寄り添って土地選びの助言をもらえたら個人にとっては安心です。土地購入の失敗のリスクは少なくなり、明るさや眺望などを確かめながら、予算オーバーしないようにいい土地が見つかるかも知れません。
先に建築依頼先を決めてしまうことのメリット・デメリットを整理してみましょう。
建築依頼先を早く決める「メリット」
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建築的視点で土地の良し悪しの判断をしてもらえる
不動産の仲介業者だけだったら、どのような建物が建つのかが曖昧なまま進み、実際に希望通りの家が建てられないリスクがある。建築が分かるプロがいれば、そのリスクを回避できそう。
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土地と建物の価格の適切なバランス
不動産の営業マンは出来るだけ早く契約でき、仲介手数料自体も大きいに越したことがないから、予算オーバーでも南向きで環境のいい高い物件を勧めがち。土地代に費やした200~300万円を建築費で減額すると何かをあきらめるようになるから、コストバランスを考えた土地選びが可能。
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条件が悪い土地でもアイディアがもらえる
住宅設計の経験が豊富であれば、北向きの敷地や狭小地、変形敷地でも、工夫次第で快適な住まいが出来る可能性がある。「匠」が登場するテレビ番組の見過ぎかもしれないが、そうすれば土地の購入費用は圧縮できる。
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土地探しが楽しくなる
注文住宅用地は、更地や古家のある土地ばかりなのでマイホームのイメージが湧きづらい。魅力的な物件はすでに他人が住んでおり、いい物件が見つからないと徐々にテンションが落ちてきがち。十分な知識もないままに、不動産の営業マンに勧められる土地で数千万円もの購入を自分一人の意思決定でするのはさらに気が重くなる。雑誌などで目にする新居の夢を見ながら土地探しをするためには、先に建築依頼先を決めておいたほうが楽しく土地探しが出来る。
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住宅ローンの申し込みなどがスムーズ
土地の購入時に、土地代金支払いのための資金調達が難問。
早めにプランを先行し、建築予算も把握できれば、融資実行もスムーズ。
建築依頼先を早く決める「デメリット」
ものごとにはメリットがあればデメリットも隠されているのが通例です。
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住宅会社であっても「営業マン」じゃないの?
建築の知識や経験を有している建築士(設計者)や施工管理技士(現場監督等)は、実際に契約したお客さんの対応が優先される。海外視察でプロの通訳兼ガイドを頼めばその場でお金が必要だし、タクシーでの移動でも距離と拘束時間で料金がチャージされる。お金の支払いが約束されない無償サービスで、移動や調査に時間を費やしてくれるのは、基本的には「受注目的で給与をいただいている」営業マンしかいない。
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ほぼ建築条件付になってしまう
ハウスメーカーの営業マンであれば、ある程度住宅建築の知識もあり宅建士等の有資格者も多い。提携先の不動産会社もあるから土地情報も持ってきてくれる可能性が高い。当初はその会社がいいと考えていても、プランが気に入らない、見積金額が高過ぎるとなってもその会社から逃げられなくなる。逃げられないようにすることこそ、営業マンの最も重要な仕事。
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ほぼ確実に建築費が高くなる
公共事業で特命(特定の1社だけのご指名)であれば、間違いなく競争原理が働かない。
さらに土地探しに関しても、宅建業の許可を持っていて、正規の「仲介手数料」を得てサポートする業者であればその後の建築は分けて考えられるが、その約束無しに土地探しから付き合っていれば、上記の通り目に見えない間接経費はどこかの段階で誰かが負担しなければならない。正規の仲介手数料を払っても、競争原理が働かない状態であれば建築費が割高になり、無償サービスで時間拘束が多いほど、もっと高い建築費の負担を覚悟しなければならない。あなたが魅力と感じた施工事例は、その高額な金額を負担した家族の事例だから見栄えのいい家になっている。
特に設計事務所は、汎用品の建築部材を使わず、完成した時の写真映りがいいような特注の部材や造り付け家具を設計しがちなので、工事費自体も高くなりがちです。しかも設計料も掛かるため、土地価格を抑えなければ仕事が得られず、条件の悪い土地を選ぶから、さらに特殊な計画で建築費が割高になるという悪循環も見受けられます。
このような悪循環、デメリットを断ち切るためには、出来るだけ工事の契約をするまでは、施主自身が「複数の選択肢」を持ち、自分自身の意思決定で「業者選びが出来る余地」を持っておくことです。参考までに私が運営しているサービスのホームページの「助言」をリンクしておきます。
若本修治の住宅コラム『理性で家を買おう』-住宅CMサービス広島
まとめ
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土地探しは「椅子取りゲーム」と心得る
どの椅子を取るか狙い定めなければなかなか取れない
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建築条件付の土地は、条件を外せるか打診しよう
立地条件や敷地形状がいい土地は条件が付けられる
目に見えない手数料や報酬の負担と得られるメリットを比較する -
古家付の中古住宅が狙い目
特に空室がある老朽化した木造賃貸アパートはお宝物件かも?
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土地の住宅ローンは注意が必要
本審査とつなぎ融資のタイミングは早めに!
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建築依頼先選びとタイミング
タダで土地探しを依頼するのは結局高くつく!
ある程度購入したい土地の目星がついた段階で、宅建免許を持つ不動産会社に声を掛け、物件の詳細調査(「デューデリジェンス」といいます)をお願いして、土地売買の仲介を依頼します。ではどの段階で建築業者に声掛けすればいいのでしょうか?