大震災でも壊れない木造一戸建ての耐震性と安全性【若本修治の住宅取得講座ー14】

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安全に住むための優先順位

Wakamoto
ここまで読んでもらえた皆さんは、限られた自分たちの家づくりに掛ける予算を、どのように割振りすればいいのか知りたいところでしょう。正解はありませんが、地震はどこでも発生し得るから、優先順位と判断材料だけは自分たちで把握しておくことをお勧めします。

国がつくった安全神話の原子力発電所でさえ、福島第一原発で大事故が起こりました。
これだけの地震国で、100%安全はないとしても、せめて将来に亘って家族の生命と財産に大きなダメージが生じない程度の家づくりが求められます。震災時に必ず自宅にいるとは限りません。だからシェルターのような家をつくるよりもコストパフォーマンスで考えると別のお金の使い方をしたほうが、いいという判断も成り立ちます。

1.建物の立地条件

東日本大震災の津波被害や、広島市や福岡県朝倉郡等で発生した大規模土砂災害などは、建物の耐震等級に関係なく、立地条件によって大きな被害と悲劇を生みました。まずは『ハザードマップ』や『地域防災ポータル』等で自分が住もうとする地域の危険度を把握することです。

生命に影響を及ぼす災害は「地震」「津波」「竜巻」「土石流」「がけ崩れ」「水害」そして「火災」です。今や台風による強風や高潮で直接、建物内の人命に影響を及ぼすことはなく、その他「隕石の落下」や「航空機事故」「戦争」などは、立地を注意して避けられるものではありません。でもそこまで想定したい場合は建物内で解決しましょう。

例えばハリウッド映画で目にする通り、アメリカでは多くの家で地下があり、竜巻などでも逃げ込む空間を確保しています。水密性をしっかり担保出来れば、土石流や津波、大火災でも生き残ることが可能です。一部だけシェルターとして地下空間をつくるのも方法です。

画像の現場は、シェルターではなくドラムを演奏する防音室を半地下に造ったケース。スキップフロアにして、防音室の上に奥さんの家事や内職が出来るコーナーをつくったので、防音室の天蓋はコンクリートで固めました。防音ドアがリビングからと階段を下りた防音室入口に取り付けられたので、このドアに水密性を持たせれば、津波や水害など、数時間の脅威はやり過ごせます。

ハザードマップの空白地帯はすでに住宅や商店が密集していて、なかなか新しい住人は相当なコストを積まなければ買えないでしょうが、建物の工夫でカバーすることは可能だという事例です。

2.安全な間取り

日本の注文住宅の問題は、建築知識の乏しい営業マンが、最初の商談で接触すること。契約できるかどうか分からない大量の見込み客を相手にして、取り敢えず無料プランで惹きつけようとするから、安全性よりもお客さんが喜ぶ「広~いLDKを確保した間取り」や「大きな吹抜け空間がある間取り」などが描かれます。

実際に確認申請などを提出する建築士であれば、危険な間取りだと気付くものの、今は営業マンやアシスタントの女性でもプラン作成できるCADソフトが充実しているため、簡単に間取りと完成予想CGが作成でき、見込み客への提案資料が揃うのです。床面積が分かれば、簡単な見積書と資金計画表もそれらしく自動作成できるから、そのまま契約を迫ることもあるのです。

少なくとも、前出の『直下率』や『耐力壁のバランス』はチェックして、間取りを決定しましょう。そもそも危険な間取りを平気で提案する業者は、例え大手ハウスメーカーであっても避けたほうが無難です。別の記事で「住宅会社の選び方」も書いているので、そちらを参考にして下さい。

住宅会社の選び方(工務店編)【若本修治の住宅取得講座-9】

2018.02.16

耐震的には、1階に多くの壁があるほど安心なので、立地条件や景色などによっては2階をリビングにするという間取りもアリでしょう。勾配天井で開放的なLDKや洗濯や物干しなど、家事動線も楽になります。

狭小地で明るいリビングを確保するため2階LDKにした事例。1階に居室があると壁量が増え、耐震性能の高い家になる。

Wakamoto
出来るだけ下層階の壁量を増やし、屋根の荷重を軽くすることが、地震に強い家に繋がります。もちろん家族にとって住み心地のいい家を優先することは言うまでもありません。

3.構造計算や地震保険など

立地および地盤強度、そして危険な間取りを避けることが出来れば、地震によって大きな損傷を負う確率はかなり低くなるでしょう。熊本地震で二度の震度7を経験した在来木造の家でも、耐震等級-3の建物ではクロスのよじれくらいで済んでいます。

巨大地震でも安心で安全性の高い家を手に入れるためには、工法を選んだり、大手の安心感で選ぶ必要は全くありません。かえって建築費が大幅にアップした上に、実際の震災で小さな損傷であっても補修費用が莫大掛かるといったことになり兼ねません。そもそも最初の投資コストが高ければ、その費用は建物のハードではなく、防災や減災、生活再建の備えに使ったほうが合理的で、生活の質を豊かにします。

住宅性能表示制度による『耐震等級』が同じであれば、鉄筋コンクリート造でも軽量鉄骨造でも、在来木造であっても地震に対する安心感は変わりません。むしろその強度をしっかり把握し担保するために構造事務所に「構造計算をしてもらうこと」こそお金を掛けたほうが賢明です。それは”1階が大空間の危険な間取り”で無理やり構造計算上安全な設計にするのではなく、先に安全な間取り自体をつくり、適切な壁バランスにすることが優先されます。

上記の画像は、木造二階建ての注文住宅のお引き渡し時に用意した『構造計算書』のページの一部。長期優良住宅で、これだけの厚みのある計算書を添付して審査機関でチェックされます。お引渡し日は梅雨後半の6月21日。蒸し暑くなる季節の午後1時過ぎに、エアコンがついていない状況で室温が25℃湿度が65%です。耐震性能だけでなく、気密性や断熱性が高いと、入居後も快適に過ごすことが可能です。

Wakamoto
あまりに耐震性や安全性にとらわれ過ぎて、過剰な性能を求めるより、もっと快適性や入居後の安心な生活にも目を向けたいですね!ご自身ではなかなか判断できないようでしたら、私が家づくりのサポートを行います。ただし広島市近郊の広島都市圏限定のサービスです♪

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≪住まいづくり専門コンシェルジェ≫ 福岡大学工学部建築学科に在学中、当時の人気建築家『宮脇檀建築研究所』のオープンデスクを体験。卒業後、店舗の企画・設計・施工の中堅企業に就職し、主に首都圏の大型商業施設、駅ビル等のテナント工事にてコンストラクション・マネジメントを体験。1991年に東京から広島に移住し、住宅リフォームのFC本部、住宅営業コンサルティング会社に勤務。全国で1千社以上の工務店・ハウスメーカー・設計事務所と交流し、住宅業界の表も裏も知り尽くす。2001年に独立し、500件以上の住宅取得相談に応じ、広島にて150棟以上の見積入札・新築検査等に携わる。2006年に著書「家づくりで泣く人笑う人」を出版。 マネジメントの国家資格『中小企業診断士』を持つ、異色の住生活エージェント。