基礎のコンクリートを打ち終わったら、屋外給排水の配管工事に入ります。
前面道路に公共の下水道管がある場合は、道路から敷地内への引き込み・接続と敷地内部での給排水管の敷設・埋設を行います。公共下水が未施工の田舎では『合併浄化槽』などを自分の敷地内に埋設し、汚水処理をして放流します。
前回の基礎コンクリート打設についてはバックナンバーでご確認下さい。
目次
官民境界
公共汚水桝
上記の画像で、赤い四角で囲まれたものは、前面の公道から歩道を経て敷地の中に設置された『公共汚水ます』。下水道本管が埋設された公道には「マンホール」があるので一般の方でもイメージが湧くと思います。その道路下に埋められた「下水道本管」に、画像の公共汚水桝から、各家庭の汚水や雑排水が流れ込んでいきます。
公共汚水桝までは、市などの地元自治体が用意してくれますが、購入した土地にこの汚水桝がない場合には、前面道路から敷地内に引き込む工事(舗装をカットし、道路を掘り起こして汚水桝の設置と配管工事し、舗装の補修をする)は、土地所有者の負担です。自治体指定の『指定水道工事業者』を使わなければならず、下水道本管からの距離などによって工事金額が変わってきます。
当初の見積には入っていないことが多く、もちろん「建築本体工事」や「坪単価」には含まれない”別途工事”や”外部付帯工事”と呼ばれる、建物以外の工事です。道路の下水道本管から少し敷地内に入る「公共汚水桝」までが自治体(「官」)の所有・管理で、それ以降が土地所有者(「民」)の所有・管理となります。水道メーターやガス管なども同様です。
屋外給排水工事とは
一般に建築見積に記載されている「建築設備工事」や「給排水衛生設備工事」は、キッチンや洗面・浴室、トイレなどの器具と給水・給湯・排水管工事まで含まれていますが、あくまで”屋内配管工事”です。基礎工事の時「スリーブ」を設けて配管を通す穴を用意しましたが、基本的に基礎に囲まれた床下や天井裏空間の配管工事までの費用です。基礎から外の配管や桝工事は、別途費用となります。
上記画像は、配管工事を行っているところ。基礎の外側(左)に排水管の掃除口(点検の蓋)が並んでいますが、地上に見える部分と屋内で横引きしている硬質塩化ビニール管(VP管)が屋内給排水工事で、地中に埋まって見えない部分の配管や雨水枡・汚水桝などが『屋外給排水工事』となるのです。
屋外の給排水工事は、敷地の広さや駐車場の配置、車の荷重が載るかどうかなどによっても異なってくるため、建築本体工事には含まれず、別途工事にされることが一般的です。
排水の勾配と埋戻し
下水の排水は、基本的に”勾配によって自然に低いほうに流れる”というものです。あまり勾配が緩いと、汚物が詰まってしまうので、配管の径によって勾配が決められています。
最終的には前面道路に埋まっている『下水道本管』に流れていく勾配が必要なので、道路よりも敷地が下がっていたり、広い土地で水回りが敷地の奥にある場合は、高さを確認しておきましょう。
道路下の敷地
たまに、ひな壇状に開発されて売れ残った道路下の土地が安く売られているケースがあります。前面の公道に下水道本管はありますが、敷地のほうがさらに低く、水勾配が取れないケースは、合併浄化槽にするか、ポンプアップすることを検討しなければなりません。
下水道は通っているので、合併浄化槽の補助金は出ない立地です。凍結防止のため、あまり浅いところに配管も出来ず勾配確保が困難になりがちです。
広島市東区で建築した上記画像も、農地だった道路下の土地を安く手に入れました。
このような土地は、排水経路や勾配を考えずに設計すると、契約後に大きな設計変更や追加費用の負担が生じます。このケースでは、LDKや洗面・浴室も2階にして、公共下水に接続しました。
屋内排水の勾配
キッチンや洗面・浴室の位置をまとめるのは、家事動線の効率だけでなく、排水の勾配や配管工事の長さにも影響が及びます。
上記画像は、キッチンが右奥、左側に洗面・浴室がある間取り。家事動線は近いものの、キッチンの排水位置のレイアウトやトイレ位置などによって、長い配管になっています。
閑話休題
合併浄化槽は、建物完成後の外構工事直前でも工事可能です。建築工事中の工事車両や足場設置などを考えると、足場撤去後のほうが作業性がよく、安心です。
車が乗りあげる場所に合併浄化槽を設置する場合、蓋も車両が載る強度が必要で、コンクリートの打設も鉄筋を組んで補強します。ローコスト住宅の場合、この別途工事が割高になりがちなので要チェックです。
給水・給湯工事
100年住宅を目指す『長期優良住宅』の認定制度が出来、建物自体の耐久性だけでなく、建物の維持管理の容易さが求められるようになりました。設備配管の点検や交換が容易な新しい工法や部材が開発されています。
さや管ヘッダー工法
昔の水道管は鋼管が使われ、水に錆が混ざったり、長く使っていると腐食して水漏れなどを生じていました。厳冬時の水道管の凍結や破裂などもあり、また基礎コンクリートに埋め込むと交換が出来ないといったデメリットもありました。
そこで写真のような『さや管ヘッダー工法』という、二重構造の配管が登場し、今はほとんどの住宅で採用されています。外側のさやは樹脂製で、柔らかく曲げやすくて、継手もないため、中の給水管を保護しやすい構造です。給水管自体も樹脂製で、継手がなく、劣化した場合も差し替えるだけなので、数十年に亘って生活することが可能です。
青い樹脂管が水で、ピンク色がお湯です。各部屋に分岐されています。
浴室の気密・断熱
意外と忘れられがちなのが、給水や給湯・排水が集まっている浴室や洗面室の床下。
現在9割以上の家で「ユニットバス」が採用されて、配管だけでなく架台も組まれるので、他の部屋のように床下で断熱するというのが困難な部屋です。
上記画像は、さや管ヘッダー工法で給排水工事を行った浴室の基礎部分。床下が断熱できないため、人通口を発泡スチロールで縁切りし、冷気や湿気が床下を通じて他の部屋に侵入しないようにしています。
このような気密・断熱部材を使っていない昔の住宅は、冬の洗面所に立ちお風呂の電気のスイッチやコンセントに手をかざすと、冷たい風を感じていました。室内が暖かい分、断熱材が入っていない間仕切り壁の中で上昇気流が発生し、基礎換気口から浴室の床下に流入する冷気が、洗面室の換気扇の弱い風力でも吸い上げられて、洗面所を冷やしていたのです。
しかしプランから契約までの段階で、詳しく説明する営業マンはほぼ皆無で、多くの施主が工事中でも目にすることはありません。住まいづくりのコンシェルジュは、このような部分もしっかりと情報開示しています。